2014年12月22日、スズキは8代目となる新型軽自動車、アルトを発表した。
初代アルトは47万円という当時としても衝撃的な価格で1979年にデビューし、累計483万台の販売をしている。そして、今回のフルモデルチェンジを受けた8代目アルトも戦略的な価格(バン69万6600円~88万5600円、セダン84万7800円~122万9040円)が設定されている。
◆デザイン
和田智氏が手がけたデザインテーマは「クオリティ&プロポーション」でボディ、インテリア、カラーに至るまで、このテーマで取り組んでいるという。アルトにクオリティを!ということで、美しい軽自動車、品格のある軽自動車を目標に、形状のクオリティだけでなく、ユーザーのライフスタイルの質を少しでも上げることができればという願いもある。そこには美しい「普通」と定義され、装飾や華美なことではなく、本当に必要なものをデザインすることを心がけ、毎日使える「普通」であるとしている。
フロントフェイスでは一度見たら忘れないインパクトのあるデザインで、ここがアルトとしてのアイデンティティであるとしている。めがねをかけたようなデザインで、強い目力をもったデザインは見る者の記憶に残る。インテリアでは横幅が広く感じられるようなデザイン&カラーとし、シンプルな形状と大胆なツートーンカラーを採用している。メーターパネル内デザインでは、ヘッドライトデザインとリンクするように、丸と四角のデザインで共通の構成としている。
ボディカラーは8色で、Xグレードにはバックドアのカラーが異なるツートーン仕様を設定している。ボディカラーによっては非常にスポーティにも見えるデザインでもある。
◆ポジショニング
さて、8代目アルトは初代から引き継ぐアルトの思想である、毎日の生活において気軽に乗れ、さまざまな用途に対応できるベーシックな軽自動車としている。そして今の時代に合わせた低燃費として、お財布にやさしいことも重要な要素だ。そして軽セダンの新たな挑戦として「うれしい、たのしい、新しい」というキーワードを届ける新型アルトとしている。
モデルラインアップは乗用車と商用車があり、乗用にはCVT+エネチャージがメインで2WD、4WDが設定されている。2WDはJC08モード37.0km/L、4WDは33.2km/Lとなっている。また2ペダル、シングルクラッチの5AGS仕様と5MT仕様も設定され、こちらも2WD、4WDがある。商用車のトランスミッションは、5MTと5AGSのみでCVTは設定されない(AGSについての詳細記事はこちら)。
◆ハイライト
今回のフルモデルチェンジでのハイライトは、新プラットフォームの採用と、定評あるエンジンRA06Aの改良型を搭載していることだろう。新プラットフォームは2014年4月に同社が発表しているものが搭載された最初のモデルになる(詳細記事)。
新プラットフォームはアンダーボディをなめらかな形状で力を分散し、骨格部分が分断されていた従来のものから、連続したつながりのある骨格とし、少ない部材でボディ剛性を確保する手法になっている。そのため、軽量化をしつつ、曲げ剛性、ねじり剛性とも従来比約30%向上している。また、ボディにも高張力鋼板を使うなど、軽量化、高剛性なボディとし、操安、燃費への貢献を果たしている。
サスペンションでは2WDで、従来のITLからトーションビーム式に変更し、また前後ともサスペンションストロークを拡大し、乗り心地を向上させている。フロントサスペンションはサブフレームをフラットな構造として、軽量化、高剛性化としている。
これらの軽量化と高剛性化により、しっかりした走りを実現しているという。剛性の高い車体とサスペンションでは結合固定点を増やし、取り付け部剛性アップを図るなど行なっている。これらの新設計サスペンションとボディにより、リニアなステアリング操舵感を実現しているという。なかでもスイフトで採用している可変ギヤレシオステアリングを採用し、操作性を高めている。
エンジンは従来のRA06A型の改良型で、エキゾーストマニホールドがシリンダーヘッドと一体型になった形状に変更、つまりシリンダーヘッドは新設計されている。これにより触媒の簡素化、軽量、コンパクト化ができ、エンジン全体のサイズも従来比高さで-23mm、幅-36mm、全長-79mmとサイズダウンしている。エキマニをシリンダーヘッドと一体化する技術は最近のトレンドであり、過給器エンジンには効率面で効果が高い。また冷間時の始動性などでもメリットがある。今回は自然吸気だけのエンジン搭載だが、このエンジンは今後過給器エンジンにも展開していくエンジンである。
また、CVTとAGS車には圧縮比を11.2から11.5へアップしている。これに伴い、シリンダー内温度があがりノッキングが発生しやすくなるが、排気の一部を吸気に戻すEGRを新たに採用している。こうして燃焼温度を下げているが、燃焼温度が不安定となるため、急速燃焼させる必要があり、吸気ポートとピストントップの形状を変更し、強タンブル流を作り、均一な混合気で燃焼させている。その結果熱効率も0.6%向上しているという。
これら車両全体の軽量化、高剛性化、高効率エンジン、トランスミッションを搭載した新型アルトは、現行アルトと比較し、CVT車で0-100km/h加速で1.6秒も短縮し、また40-80km/h追い抜き加速でも0.9秒短縮している。またAGSは現行4ATと0-100km/h、40-80km/hともに同等となっている。
これら、欧州の高級車の説明で行なわれるような事前説明であったが、新型アルトはクルマ全体のレベルアップを図ることで、乗り心地がよく、燃費もよく、毎日の使い勝手がいいというモデルになったということだろう。また、軽自動車としては初のマイルドハイブリッドであるSエネチャージを今回は採用していない。当然コストに反映するユニットとなるので、今度のマーケットニーズ次第では搭載の可能性があるだろう。では次にパッケージについてみてみよう。
◆パッケージング
さて、新プラットフォームではホイールベースを延長している。従来比+60mmとし2460mmで前後の乗員間距離を85mm広げることができている。もちろんボディサイズは軽自動車規格で全長3395mm×全幅1475mm×全高1475mmとなっている。
Xグレードにはチルトステアリングとシートリフターを新たに採用し、ヒップポイントは現行車より20mm高くなっているという。小柄な女性でも最適な運転姿勢が確保でき、乗降性も向上している。また、フロントドアは2段のストッパーを採用し、狭い駐車場で隣のクルマに当たるのを防ぐ装備となっている。収納では、女性からの要望が多かったという500mlの紙パックがおけるドリンクホルダーとしたり、荷物用フックを助手席シートバックに設置するなど、ニーズに応える装備も充実している。
安全面ではレーダーブレーキサポート機能は商用車を含む全グレードに設置し、横滑り防止装置のESPは全車標準装備としている。
■スズキ・アルト価格表(セダン)
■スズキ・アルト価格表(バン)