スズキは2022年8月31日、インド政府関係機関のNational Dairy Development Board(全国酪農開発機構:NDDB)と、インドのカーボンニュートラルの実現を後押しするバイオガス実証事業を実施することで合意、覚書を締結したと発表した。スズキとNDDBは合弁会社の設立も視野に、将来のバイオガス事業化に向けた取り組みと、その普及可能性の実証を行なうことになる。
周知のようにインドでは多くの牛が飼育されているが、牛の糞尿にはCO2の28倍の温室効果を持つメタンが含まれ、大気中に放出されている。このメタンの大気放出を抑制し、牛の糞尿に含まれるメタンから自動車用燃料を精製することを検討するのがこの実証事業だ。
CO2サイクルの観点から見ると、大気中のCO2は光合成によって牧草に取り込まれ、牛の餌となる。牛から排泄される糞尿に含まれたメタンは大気放出されるが、その糞尿を回収してバイオガスを人為的に発生させて自動車用燃料を精製して利用することで、メタンの大気中放出を抑制することができる。また、この燃料は光合成により大気中のCO2を原料としているため、純粋なカーボンニュートラル燃料となる。加えてバイオガス発生後の残渣は有機肥料として利用でき、インド政府の有機肥料促進政策に貢献することもできる
この取り組みをインド全土に展開することで、メタンの大気放出抑制やカーボンニュートラル燃料の普及だけでなく、農村地域の活性化や新たな雇用の創出、廃棄物の資源化、エネルギー自給率の向上、循環型社会の形成など多くの効果が期待できる。
このカーボンニュートラル構想は、多数の牛が飼育されているインドならではといえるが、燃料精製のコスト面が解決できればきわめて期待が大きいと評価できる。