スズキ 鈴木修会長ついに退任 新中期経営計画を発表

スズキは2021年2月24日、同日に開催された取締役会の議決により6月に開催予定の定時株主総会日付で取締役、執行役員などの人事が内定したことを発表しました。それにより、現在の鈴木修会長と原山保人副会長が退任することが明らかになりました。また同時に、スズキは2021年4月からの5ヵ年の「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)~「小・少・軽・短・美」~」を策定し、今後の戦略を示しました。

カリスマの退場

鈴木修氏(91歳)は、1958年にスズキの2代目の鈴木俊三社長の娘婿となり、スズキに入社。1963年に取締役、1978年に社長に就任しています。

そして2008年には社長兼会長、2015年には会長となり、実に43年間にわたってスズキを統治し続け、その間にオートバイメーカーから軽自動車をメインにした自動車メーカーに育て上げ、現在ではグローバル規模の自動車メーカーにまで成長させ、まさに自動車業界におけるカリスマの一人と言うにふさわしい存在です。

スズキは1978年時点では売上高1700億円、1981年には連結売上高5000億円を記録し、現時点では3兆5000億円という規模に到達しています。

地方銀行勤務を経てスズキに入社した鈴木修氏は、軽4WD車「ジムニー」のプロジェクトを推進。その後、排ガス規制への対応が遅れてスズキは厳しい状況に陥り、ダイハツのエンジンを購入するような状態にもなりましたが、1979年に鈴木氏の陣頭指揮のもとで商用車規格の軽自動車ボンネットバン「アルト」を価格47万円で発売し、爆発的なヒット。スズキは窮地を脱しています。

1981年にはGMと提携し、WIN-WINの関係を築き上げ、1982年にはインド国営企業のマルチ・ウドヨグ社とスズキの4輪車の生産、販売に関する契約を結ぶなどの海外展開を行ない、1990年にはハンガリーでの4輪車生産(マジャール・スズキ)を開始し、東ヨーロッパへの日本企業進出第1号となっています。

この中で特にインドでは大成功を収め、成長するインドに歩調を合わせ、現在ではインドにおける乗用車のシェアは50%にも達しています。

同業他社との提携という点では、GMの経営破綻を経て、新たにフォルクスワーゲンとの業務提携を結んだものの紛争となり、最終的にトヨタとの資本・業務提携にこぎ着けることになりました。

2019年に鈴木修会長のプロポーズによりトヨタと提携が締結された

2015年に、長男の鈴木俊宏氏が社長兼COOに就任し、鈴木修氏は会長として後見役的な存在となっていましたが、今回の中期経営計画を見届けた上で退任し、今後は相談役という肩書となります。鈴木修氏は「生涯現役だ」と語っていますが、鈴木俊宏社長に諸裏を委ねる決断を下したことは確かです。

2月24日の取締役会後の会見に出席した鈴木敏宏社長と鈴木修会長

今後のスズキは、鈴木俊宏社長と、これまでのクルマ作りの革新を推進してきた代表取締役技監・技術統括の本田治氏、専務であり経営企画室長の長尾正彦氏らが経営を担当していくことになります。

中期経営計画で電動化を推進

新たに策定された中期経営計画は、「小・少・軽・短・美」をスローガンとし、世界の生活の足を守り抜くことと、新興国は今後も成長の柱という確信のもとで、カーボンニュートラルの時代に臨むことを明らかにしています。

その一方で、CASE時代への取り組みの遅れを自覚し、電動化、ソフトウェア開発の強化と同時に高品質を追求することにし、カーボンユートラルに向けて走行時CO2排出、製造時CO2排出、高品質の維持の3つを課題に、優先的に取組むとしています。

販売面では、日本では軽自動車シェア30%以上、登録車販売1.5倍(2021年3月期公表予想比)、インドでは電動化を率先して推進し、乗用車シェア50%以上を目指します。

中期経営計画のゴールである2026年には売上高4兆8000億円、営業利益率5.5%とし、今後は研究開発費を年間2000億円にする計画です。

またトヨタとのアライアンスは、電動車の協業、アフリカでの協業、商品ユニット補完などにより提携を深化させて行く方針です。

電動化に関しては、今後5年間で軽自動車用・小型車用・商用車用のハイブリッド システムの開発、プラグインハイブリッド車の開発を行ない、同時に軽自動車EV・小型車EVの開発もトヨタと小型EVプラットフォームの共同開発を通して進めるとしています。

そしてインド市場ではハイブリッド車、EVの投入、CNG車の開発、SUVラインアップの強化を行なう計画。

このように見ると、今後のスズキはハイブリッド、EVをメインにした電動化技術の開発に集中し、来たるべきカーボンニュートラルの時代を迎えることができる体制を構築しようとしていることがわかります。

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