2013年2月20日、スズキは軽乗用車「アルト エコ」のビッグマイナーチェンジを行った。同社のワゴンRと同様の低燃費技術を採用することで2WD車はガソリン車No.1の燃費33.0km/L、新たに設定した4WD車も30.4km/Lを達成した。このニューモデルは3月4日から発売される。
今回の「アルト エコ」に採用されたのは、新世代環境技術の「スズキグリーンテクノロジー」。スズキ独自の減速エネルギー回生機構「エネチャージ」や、「新アイドリングストップシステム」により燃料消費を抑えている。
また車両重量を2WD車比で20kg軽量化し、エンジン、CVTのさらなる高効率化や空気抵抗など走行抵抗を低減する技術を投入するなど、大幅に手を加えている。結果、2WD車はガソリン車No.1となる燃費33.0km/Lを達成した。なお今回新設定した4WD車を含め、「アルト エコ」全機種がエコカー減税の免税対象車だ。
今回のマイナーチェンジではエクステリア、インテリアもアルトエコ専用のデザインを採用し、標準モデルとの差別化を図っている。
外装ではフロントグリルやシルバーのアクセントを各部に配したほか、内装はライトグレーとブラウンを基調とした、明るい印象にイメージチェンジ。また「エコドライブアシスト照明」を採用した専用メーターのメーターリングや文字盤、水色のエアコン操作パネル、ライトグレーをベースに水色のアクセントを取り入れたシート表皮などが目を引く。
ちなみにメーターはスピードメーター照明色が青色から緑色に変化し、エコドライブ状態をひと目で確認できる「エコドライブアシスト照明」を新たに採用。マルチインフォメーションディスプレイには、エコドライブ度を100点満点で採点する機能「エコスコア」も装備している。
機能や装備面でも電波式キーレスエントリーやリヤシートヘッドレスト(ECO-Sに標準)の採用など、使い勝手や安心感を向上させている。また、「アルトエコ」の変更と同時に「アルト」のその他機種も、軽量化の実施や改良型CVTを採用などにより燃費を向上。一部機種においてエコカー減税の減税率が向上した。
さてここからは「アルト エコ」の主な改良点を詳しく見ていこう。
まず新採用された減速エネルギー回生機構「エネチャージ」。これは既存のアイドリングストップ車専用の鉛バッテリーに加え、リチウムイオンバッテリーと高効率・高出力のオルタネーターを併用。減速エネルギーで発電するスズキ独自の減速エネルギー回生機構だ。また進化した「新アイドリングストップシステム」も採用されているが、これは停車前の減速時、アクセルを離したときから燃料をカット。さらにブレーキを踏んで13Km/h以下(従来は9km/h)になると自動でエンジンを停止する設定になっている。また、アイドリングストップ中、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の快適性をより長く持続させる「エコクール」も採用。これらの技術は2012年に登場したワゴンRと同等だ。
新型アルト エコの燃費向上の重要な対策として、軽量化も見逃せないポイントである。
これまでのモデルに対して20kgの軽量化を行っているが、これは細部の部品にいたるまで徹底して見直しを行い、材料や構造の変更などの工夫を重ねて実現したもの。結果、安全性や快適性を保ちながら20kgの軽量化(2WD車比で車両重量730kg→710kg)に成功した。軽量化の内訳は、ボディではルーフパネルの薄板化、サイドシル・インナーやダッシュサイド・パネルは980Mpa級の超高張力鋼板を採用しての薄板化。またドアガラスも薄くするなどボディのみで10kg近くを軽量化している。シャシーでは、リヤ・ドラムブレーキの小径化、リヤ・アクスルビームの薄肉化などで4kgの軽量化を図っているという。
搭載されるR06A型エンジンもタイミングチェーンの幅を細めることで摩擦抵抗を低減。CVTはエンジンとの協調制御を改良し、より効率の良いエンジン回転数で使用できる。また同時に薄型軽量ラジエーターの採用など、細部まで部品を軽量化した。
さらに空気抵抗を減らすためにリヤバンパーの形状変更や、リヤタイヤハウスに整流板を採用。タイヤは転がり抵抗を抑えた新開発タイヤを装着し、内部構造の最適化により空気圧も300kPaときわめて高く設定。これにより転がり抵抗も抑えている。またブレーキの引きずり抵抗を軽減するために、ブレーキパッドスプリングにはコーティングが施されている。
このように「アルトエコ」ではクルマ全体を見直し、徹底した燃費改善策を採用することでクラストップの燃費を実現したのである。