マニアック評価vol79
2009年末に現行モデルの7代目アルトがデビューし、高い人気を継続しているが、そのアルトをベースにより燃費性能を高めた「アルトエコ」が誕生し、早速試乗してみた。グレードはSとLがあり、Sを試乗。その違いは電動格納式ミラーやキーレスエントリーなどの装備違いだ。場所は東京ディズニーランド近郊で、平坦路の埋め立て地域で住宅街が隣接するエリアでのドライブだった。ガチンコ・ライバルに相当するダイハツのミラが、ミライースを誕生させリッター30kmの燃費を出している。スズキとしては、当然対抗するモデルがなければならないわけで、その名前もストレートにアルトエコというネーミングで、ミライースへの対抗馬を市場投入したわけだ。今回モデル追加されたアルトエコはガソリン車トップの燃費でJC08モード30.2km/Lとなるが、旧モード燃費表記の10・15モードではアルトエコもミライースもともに32km/Lである。

そもそも、軽自動車というカテゴリーにはボディサイズやエンジン排気量が決められているために、性能を上げていくには自ずと限界があり、エンジニア泣かせな部分もあるが、それをまたブレークスルーする快感もあることは間違いない。今回、どのようなテクノロジーで燃費性能を向上させているのか見てみると、大きく分けて4つのポイントになる。
それは、スズキの新世代エンジンであるR06A型エンジン&改良型CVTの搭載。そして、アイドリングストップ機能、軽量化、専用設計された走行抵抗の小さい専用タイヤの装着という4点になる。

これまでのアルトのエンジン&CVTにはK6A型が搭載されていたが、新型のR06A型に変更されている。出力の点では、ノーマルの40kw(54ps)/6500rpm、63Nm/3500rpmに対して、32kw(52ps)/6000rpm、63Nm/4000rpmで、馬力がわずかにダウンしている。だが、運転フィールでは乗り比べるとその違いは微妙に感じられるものの、実際にはプアーと感じることはない。むしろ、新型エンジンはフリクションを低減したり、あたらしいデザイン設計であることなどから、ノイズや振動が少なく、室内で感じるエンジン音はアルトエコのほうが静かで新しさを感じる。
もっとも最終減速比がアルトのCVTモデルは5.225であるがアルトエコは4.572まで高めているため、エンジンの馬力違いというより、減速比の違いによるもののほうが大きいということだろう。馬力で2psダウンし、減速比を高めたため加速が鈍くなるので車両重量-20kgで挽回するという手段をとっているが、体感として微妙に感じるという程度になるのだろう。
改良型CVTはもともと副変速機付きのCVTであるため、変速比幅がひろい。今回は主に低フリクションのオイルを採用することで、抵抗を低減している。アルトには5MT、4AT、CVTとラインアップされているが、このアルトエコはCVTだけの設定になっており、このCVTが低燃費性能をアシストしているといえる。市街地で60km/L程度までのゴーストップを繰り返す環境でも、出足の鈍さは感じられず普通に走れる。
アイドリングストップ機能と軽量化
アイドリングストップは、作動するには様々な条件が満たされないと作動しない。例えば、バッテリーの充電状況や、エンジン自体の温度、CVTの温度などがあるが、試乗時も問題なく頻繁に作動していた。信号の停止はもちろん、一時停止の交差点でも作動する。再始動はブレーキペダルから足を離したり、ハンドルを少し動かしても再始動する。交差点内でエンジン停止しても、スムーズに発進でき不安はない。
また時速9km/h以下になるとアイドルストップが作動する。感覚的には停止直前での停止イメージでいい。走行中にエンジンが停止するとクリープ現象がなくなり、同じ踏力でブレーキを踏んでいると、予測より手前で停止してしまうことが起きる。しかし、アルトエコでは、ブレーキ踏力を変えることなく予測どおりの場所で停止できるので、まったく問題とはならない。もちろんステアリング操作をしている状況ではアイドルストップはしない。したがって停止直前のアイドルストップは燃費の面で歓迎される。
軽量化技術も省燃費には欠かせない技術だ。ノーマルのアルトと比較してどの程度軽量化できているかは気になるが、まったく同じグレードが存在しないため似たグレードとしてアルトXとの比較で-20kgの軽量化だという。車両重量は740kg。ちなみにアルトエコのSグレード、Lグレードともに同じ車両重量である。
軽量化するポイントはコンベンショナルなクルマ造りを再度検証し、徹底的に無駄を省き、設計変更可能な範囲を探すという細かく緻密な作業が要求される。おもにアルトエコではエンジンが換装される関係で、フロントのアンダーボディを新設計している。さらにリヤシートのシートバックを従来のパネルフレームからワイヤーフレームに変更。また、シートクッションのパッド密度を変更し質量を減らすということも同時に行うなど、外見ではわからないようなところで、多くの見直しが行われている。
軽量化にあたり、製品企画の尾上雄介氏は「軽量したために、乗り心地や、振動、ノイズなどネガな部分が出てきてしまうことが絶対にないように、工夫しました」というように、ノーマルのアルトと同等以上の品質でなければいけないわけだ。
試乗の場面で、車両が-20kgであることを感じることはできないが、商品企画の尾上氏が言うように、乗り心地、振動、ノイズなどはノーマルのアルトと変わらない。いや、走行ノイズという点では新型エンジンの影響もあり、逆にアルトエコのほうが良かった印象だ。
そして専用に開発されたダンロップSP10というエコモデルタイヤだが、空気圧が280kPaという高い設定の専用タイヤを装着する。もっとも、標準車も240kPaの設定なので、もともと高めではある。このタイヤには、低燃費と環境をイメージさせる低燃費マークがタイヤのサイドウォールに刻印されている。(ガソリン給油器と地球のイラスト)装着されるタイヤサイズは145/80-13でアルトと同じ。

これだけ高い空気圧だと乗り心地にも影響があるのではないか?という予測は立つが、実際には今回の試乗で感じることはなかった。ノーマルと乗り比べても空気圧の違いによる乗り心地や繰安の違いは感じない。
実はアルトエコは、ノーマルのアルトと比較し15mm車高が下げられている。前面投影面積の縮小で空気抵抗の低減という目的もあるが、足回り部品などの可動部品のフリクションロス、軽量化も徹底的に行われている。
専用タイヤで280kPaという高圧なタイヤでもあることから、専用のコイルスプリング、専用のダンパーが採用されている。そのため、15mm車高のダウンも可能としている。軽量化では前後アクスルベアリングの構造の見直しがあり、フロントではハブとベアリングをボルト締結してナックルに取り付けられるユニット式ハブベアリングとされ、回転フリクションの低減、軽量化をしている。また、ブレーキパッドの制動時の変形量を抑制しブレーキの引きずり抵抗も低減している。
車高が下げられたことで、空気抵抗という点で、タイヤが受ける風の影響や路面と車体との間で起こる空気の流れの乱れも抑えられている。外観ではフロントバンパーサイドコーナーにフラットな部分をデザインし、ボディサイドへの空気の流れをコントロールしている。この部分が外観で違う唯一の部分といっていい。他にストップランプがLEDランプに変更され、消費電力を抑えるということもおこなっている。
このように、アルトの持つ人気や魅力、機能、使い勝手などを損なうことなく、低燃費技術を集結させ省資源、低燃費を実現したモデルと言えよう。
●価格アルトエコ-S FF+CVT 99万5000円 アルトエコ-L FF+CVT 89万5000円 ●JC08モード 30.2km/L(10・15モード32.0km/L) ●自動車取得税、自動車重量税75%減税対象 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1520mm WB2400mm ●最小回転半径 4.2m ●最高出力38kw(52ps)/6000rpm、最大トルク63Nm/4000rpm