2010年フルモデルチェンジを行ったスイフトに、待望の「スイフトスポーツ」が加わった。6MTが2011年12月13日から、また、CVT車は2012年の1月27日からそれぞれ発売される。
新型スイフトスポーツの開発コンセプトは「多くの人に操る楽しさと感動を感じてもらいたい」というメッセージを込め、専用エンジン、新トランスミッションを採用し、動力性能の向上と燃費性能を上げている。シャシーでは、安定性と応答性を高次元でバランス。高品位に進化した走りのデザイン、そしてドライビングをサポートする充実装備と安全性能をそれぞれ謳っている。
エンジン&ミッション
順にその進化の具合を見てみよう。まず、エンジンは先代のM16型をキャリーオーバーした1.6LのNAエンジンである。しかしながら、吸排気や冷却システムを全面的に見直しを行い全回転域でのトルク向上と燃費向上を目指している。
吸気バルブには可変吸気システム(VVT=バリアブル バルブ タイミング)の最適化、そして、リフト量を増大している。さらに、ポート形状の見直しも行われ、最適化が図られ、面粗度向上により充填効率をアップして高出力化につなげている。結果、148Nmから160Nmへトルクが増大し、発生回転域も400rpm下がり4800rpmから4400rpmへとなっている。また、冷却水通路形状変更による冷却性能改善がなされ、トルク向上している。一方排気ではサブマフラーの大容量化によりパワーを向上させている。得られる出力は100kw(136ps)/6900rpm、160Nm/4400rpmとなっている。
具体的に可変吸気システムでは、樹脂製のインテークマニホールドにすることで、通気抵抗を低減している。そして、エンジン回転数によってマニホールド内に設けられた切り替えバルブによって吸気通路の長さを変える可変吸気システムとしている。したがって、全域において充填効率を高めることが可能になっているわけだ。
組み合わされるミッションには6速MTと7速CVTの2種類がある。6MTは1-2速にトリプルコーンタイプのシンクロナイザーリングを採用し、3速-6速には先代に対して大容量のシンクロを採用し軽快で滑らかな変速を可能としている。また、2速-5速は旧型同様にクロスレシオのギヤ比とし、スポーツドライブを満喫できるようになっている。そしてクルージング用のハイギヤな6速目を追加することで、燃費性能の向上も図られている。
CVTもスポーツ専用としており、副変速機つきCVTのリダクションギヤを標準車に対してローレシオ化し、鋭い加速に結び付けている。また、トルクコンバーターの特性変更や副変速クラッチ類の強化もされている。操作面では7速のパドルシフトを装備し、右がアップで左がダウンシフトのパドルになっている。
シャシー
サスペンションではフロントがストラットで、リヤがトーションビームというFF車ではオーソドックスなレイアウトであるが、しなやかで安定性、応答性を高め上質なハンドリングを目指している。そのフロントサスペンションでは、ステアリング操舵に対する反応を向上させるために、リバウンドスプリングを内蔵し、旋回時の内輪の浮き上がりを抑え、ロール剛性を向上。また、ケースサイズを45mmから50mmへとアップし剛性をアップしている。さらに、ステアリングギヤボックスメンバーを追加し応答性を上げている。これは、タイヤにかかる横力がタイロッドを介してギヤボックスに入力されるため、ギヤボックスの倒れ現象が起こるが、ギヤボックスメンバーを追加することでこれを抑制し、リニアな応答性につなげている。
また、サスペンションフレームメンバーを追加し応答性を上げている。旋回時にタイヤにかかる横力がサスペンションアームからフレームに伝わり、サスペンションフレームの変形が起こるが、メンバーを追加することで、変形を抑え操舵フィール、応答性の向上へつなげている。つまりステアリングギヤ、サスペンションの取り付け剛性を向上させ、より正確なハンドリングを目指しているといえる。
リヤサスペンションでは、より厳しい領域での安定性、操縦性を確保するために専用設計とし追従性を向上させている。そのために、トーションビームとビームのブッシュ類の見直しをしている。まず、トレーリングアームでは上部肉厚が標準車が3.2mmであるのに対し、スポーツは3.6mmで、下部側は同じく3.2mmに対し、4.0mmで大断面化がされている。また、ハブキャリアのくわえ込み量を増やし、結合強化することで旋回時のトー剛性、キャンバー剛性を約30%向上している。
トーションビームブッシュでは、前後非対称のバネ特性にすることで、乗り心地を犠牲にすることなく、旋回時のトーアウト量を抑制している。さらにサイドスットッパー部にメタルプレートを内蔵することで、バネ特性を約2倍に高められ、横力に対するトーアウト量を抑制している。つまり、「旋回時、タイヤにかかる横力を受けるブッシュ硬度を硬くする一方、凸凹を乗り越えるときには車両に対して後方方向の硬度はソフトに変更しています」とはシャシー設計部の茨木孝之氏だ。こうすることで、リヤの接地性も高まり、乗り心地への悪影響を避けているわけだ。
また、新型スイフトスポーツに装着されるタイヤサイズが195/50-16から195/45-17へとサイズアップされている。操安性能においてタイヤは重要な役目を持つことは言うまでもないが、低扁平率化したことでタイヤ1本あたり1.6kgもの軽量化を果たしている。ちなみに、旧型スポーツにはダンロップのSP SPORTS MAXXで、新型にはブリヂストンのポテンザ RE050Aが装着されている。そして専用アルミホイールはフローフォーミングリム成形(引き伸ばし加工)により材料強度特性をアップし、薄肉化を可能としている。その結果トータルで1インチサイズアップしながらも、1台あたり0.4kg軽量となっている。さらにリヤブレーキキャリパーの軽量化もあわせると、バネ下重量で旧型より9.8kg軽量となり、ハンドリングには好影響をもたらしている。
軽量化では、高張力鋼鈑を標準車と同様に積極的に使用しているため、先代スイフトスポーツの5MTと比較し、6MTになり、テレスコピック、オートクルーズなどの装備が増えているにもかかわらず、-10kg軽量の1050kgとなっている。
エクステリア&インテリア
エクステリアで標準車との違いは、フロント周りでは、大開口のグリルや3本フィンの入った大型フォグランプベゼル、ディスチャージヘッドランプ(メーカーオプション)などで、サイドにはスポーティなイメージを演出プラス整流効果を狙ったサイドアンダースポイラーが装備される。また、リヤビューでは、デュアルマフラーとメタリック塗装されたディフューザーが目を惹く。ルーフエンドには空力性能を向上させるスポイラーがつく。そして、何よりも専用デザインされた17インチのタイヤ&ホイールでスタイリッシュにまとめられている。
インテリアはスポーティをイメージさせる演出が随所にみられ、ステアリングやシートには赤いステッチが入っている。ドアトリムやインスツルメントパネルにはヘアラインメタル調の加飾をしたり、ダッシュボードの最終処理に伴う質感の向上などの演出も充実している。
スピードメーターはスポーツ走行時に読み取りやすさを重視したデザインで、240km/hまで表示されている。ステアリングは専用の革巻きステアリングで、ラジオ音量なども手元で操作できるように、また、クルーズコントロールのスイッチが追加された。シートはサポート性を向上させるために、特にサイドサポートパイプの追加やパッドの形状断面を変更し、ホールド性を高めている。また、SPORTSのロゴがシートバックに入っている。
セーフティ
安全性能の主なポイントでは、高水準の歩行者障害低減ボディを採用し、ESP(横滑り防止=エレクトリック スタビリティ プログラム)が全車標準装備となった。CVT車には坂道発進を補助するヒルホールドコントロール機能が追加されている。また、リヤシートの中央席にヘッドレスト及び、3点式シートベルトも標準装備された。
●スイフトスポーツ価格 1.6L DOHC 2WD ●6MT 168万円 CVT 174万8250円●全長3890mm×全幅1695mm×全高1510mm WB2430mm●車両重量 6MT 1050kg CVT 1070kg●JC08モード 6MT 14.8km/L CVT 15.6km/L ●10.15モード 6MT 15.6km/L CVT 16.0km/L●出力100kw(136ps)/6900rpm 160Nm/4400rpm●タイヤサイズ 195/45R17 81W