プロトタイプではあるが、ほぼ最終モデルとなるスバルXVのハイブリッドモデルに試乗できたので、レポートしよう。
XVのトップモデルという位置付けとなるこのハイブリッドモデルは、燃費のほかに走行性能を犠牲にすることなく、また、上級モデルだけに上質感も併せ持つモデルとして開発されている。
XVハイブリッドの特長のひとつとして、ハイブリッドでありながら、燃費スペシャルなモデルとせず、高い走行性能を持ち、さらにスバルらしく水平対向エンジン搭載はもちろん4WDハイブリッドにしているという点が挙げられる。また、XVハイブリッドはクロスオーバーSUVという位置付けのため、ベースモデルと同等のラゲッジスペース、リヤ席を折り畳んでフラットなスペースが確保されているといったパッケージングも重視した特徴がある。
↑ハイブリッドモデルでも、リヤのラゲッジスペースはベースモデルと同様の容量・使い勝手
ハイブリッドシステムはパラレル式ハイブリッドで、小型のモーターを採用しているという点に着目してみた。搭載するモーターは当然駆動用でもあるが、それにしては出力10Kwと小さい。ちなみにプリウスは60Kwの出力だ。つまりXVハイブリッドはEV的要素まで持つ特殊なハイブリッドということではなく、あくまでも内燃機関を補助するハイブリッドという造り方をしている点が興味深い。もっとも発表会の席ではスバルの吉永社長から「ターボに変わるモーター」的な発言もあり、この小さなモーターでどうやって?と期待は高まる。
その真意を理解できる説明をHEV研究実験部細川圭介氏から聞くことができた。それは小型のモーターでありながらCVTの入力軸と直結させることで、増速させることが可能となり、10Kwという出力ながら変速比幅分と同等のトルクを得ることができる。ということだった。
さらに、CVTの特徴である無段階変速を活かし、トルクを増速してもドライバーに変速ショックを与えることなく力強さだけを印象付けることが可能となるのだ。したがってドライブフィールとしては、無段階にトルクが増してくるパワーを感じることができ、あたかもターボが付いているかのような感触を得ることができるというわけだ。
また、エンジンもFB20型改という専用エンジンで圧縮比を上げたりして、効率の追求がされているが、ミラーサイクル運転はしていない。XVハイブリッドの詳しい解説はこちらの既報の記事を参照して欲しい。
とはいえ、ハイブリッドであればユーザーからは燃費のほかに、EV走行モードの要求などもある。XVハイブリッドでは、40km/h以下でバッテリーの充電状況によるが、EV走行も可能で、特に市街地などのゴー/ストップの多い場所ではEVモードが有効に働くということ。日常使いでは十分にハイブリッドの恩恵を感じるだろう。
ただ、今回の試乗はショートサーキットでの試乗であったため、EV走行を試す程度にとどまった。一方で前述の走行時のモーターアシストははっきりと感じることができた。特にドライブモードを「I」から「S」に切り替えるとエンジンの出力をアシストするターボのようなフィールが実際に味わえる。XVは貧弱なエコカーではなく、パワーあるエコカーとして期待していいクルマだ。
乗り心地や操舵フィールでもトップモデルに相応しく、上質感のある乗り心地でハイブリッドのメリットも活かし静粛性も高かった。標準のXVに手を加え防音、防振材なども見直しされている。130kgの重量増となるXVハイブリッドだが、その重量増がプラスに働いていることしか見えてこない。その点でも見事な出来栄えだった。
唯一、気になるのは最近のスバル車は、モデルによってドライブフィールが異なっていることだ。スバルらしさとは…。水平対向エンジン、シンメトリカルAWDなどメカニカルな部分では共通したものがあり、確かにスバルらしいのだが、乗り味ということになると…。インプレッサは欧州車的にボディ剛性と直進の座りが良く、フォレスターは北米的にゆったりとしたフィールを感じる。この違いは果たしてスバルというブランドにおいて有利に働くのだろうか。
今回のXVハイブリッドはインプレッサの流れから欧州車的な性格だった。ボディ剛性が高いことを感じ、またハンドリングの正確さ、直進性の強い座りによる安心感、しっとりとした乗り味からくる高級感がある。とても好印象のモデルだった。