スバル 新型「WRX S4」新エンジン 新骨格でデビュー

スバルは2021年11月25日、フルモデルチェンジし5代目となる新型「WRX S4」を発表した。

新型「WRX S4」は、本来はメインマーケットであるアメリカで8月19日に開幕する予定のニューヨーク国際モーターショーでワールドプレミアを行なう計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないためショーの開催中止となり、スバルofアメリカは9月10日にオンラインでアメリカ仕様のワールドプレミアを行なっている。そして日本仕様は約2ヶ月遅れでの発表となった。

GT-H EX(左)とSTI Sport R EX

新型WRX S4は、スバルの新世代のファンtoドライブを高い次元のAWD性能によって実現することを目指している。そのため、究極の一体感が感じられるパワーや加速特性、高次元の操縦安定性、スバル車としての価値であるシンメトリカルAWD性能と衝突安全性とアイサイトによる運転支援システムを追求。さらにピュアなスポーツカーとは違って日常での実用性、利便性も十分確保し、広いキャビン、ラゲッジの積載性まで重視したオールラウンドなハイパフォーマンスカーだ。

もちろん、WRX S4は従来型と同様にレヴォーグをベースにした4ドア・セダン版ともいえるが、レヴォーグが実現した新次元の走りをより高めることを目指している。レヴォーグの走りをベースとしながら、よりハイパワーとなる2.4LのFA24型直噴ターボ・エンジンを採用し、さらにDCTトランスミッションに匹敵する新CVT「スバル パフォーマンス トランスミッション」を新開発して採用した。

STI Sport R EX

また、AWDシステムはレヴォーグが油圧多板クラッチを駆使するアクティブ・トルクスプリット式であるのに対し、新型WRX S4は従来型と同様に遊星ギヤにより前後駆動力のより自在な可変配分を行なうVTD-AWDを採用するなどアップグレードが行なわれていることは注目点だ。

グレード展開は、ベースモデルがGT-H、アイサイトX装備のGT-H EX、スポーツ性を強調したSTI Sport R、そしてアイサイトXを装備したSTI Sport R EXという4種類。非EXのモデルも新世代アイサイトは標準装備している。また搭載エンジン、トランスミッションは全モデル共通となっている。

GT-H EX
GT-H EXのインテリア

パッケージングとデザイン

新型WRX S4のボディサイズは全長4670mm(従来型比+75mm)、全幅1825mm(+30mm)、全高1465mm(-10mm)、ホイールベース2575mm(+25mm)、トレッド・フロント1560mm(+30mm)、リヤ・トレッド1570mm(+30mm)で、従来型に比べ一回り大きくなっている。

もちろんアメリカ市場への適合性を高めているわけだが、ボディサイズとしてはCセグメント・セダンより大きいC+セグメント、あるいはほぼDセグメントのサイズとなっている。実際、BMW3シリーズより全長が45mm短い点以外では同サイズであり、新型WRX S4の目指しているポジションを理解することができる。

ボディサイズの拡大に合わせ、室内の広さ、ショルダースペース、足元スペースなども拡大されており、ゆとりの感じられるキャビンとなっている。

新型WRX S4のデザインは、2017年東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「VIZIV パフォーマンス・コンセプト」をベースにした「BOLDER」デザインとし、現行モデルよりよりウエッジ・シェイプとし、さらに左右のフェンダーの張り出しを強めている。その前後フェンダーを強調するために、ブラックの樹脂製のクラッディング(オーバーフェンダー)を装着。

なおオーバーフェンダー、ボディ前後のブラックの樹脂部分の表面は細かな凹凸模様を設けることで、表面部を流れる気流の境界層制御を行ない、空気抵抗を低減。さらに床下のフラットなカバーも従来より面積を拡大させ、空気抵抗の低減を行なっている。

STI Sport R EXのインテリア

またSTI Sport Rにオプション設定されているレカロ製スポーツシートも新設計で、見栄えもホールド性も一段と高められている。

新設計されたレカロ製スポーツシート

装備では、新たにコネクテッドサービスの実現、ドライバーの異常を検知するドライバーモニタリングシステム(EXに標準装備)、新世代アイサイト、EXグレードは高速道路の渋滞時にハンズオフできるアイサイトXを搭載するなど、全面的に新世代化した装備を充実させている。

パワートレーン

新型WRX S4は、アメリカ仕様と同じ2.4LのFA24型直噴ターボ(プレミアムガソリン仕様)を新搭載している。2387ccの排気量で、ボア・ストロークは94.0mm×86.0mmで、これはBRZ用のFA型エンジンと共通だ。

FA24型直噴ターボは、2018年にアメリカ市場専売モデルのアセントに初めて搭載されたエンジンで、その後は2020年型レガシィ、アウトバックにも搭載されている。このFA24直噴ターボはFAシリーズ随一のハイパワーユニットという位置づけだ。

出力は275ps/5600rpm、最大トルク375Nm/2000rpm-4800rpmで、環境性能に対応し、低フリクション化のために低回転/大トルク型になっており、低回転から幅広い回転域で最大トルクを生み出すのが特長だ。吸排気カムは連続可変システムを備え、直噴システムを組み合わせている。燃費はWLTCモードで10.8km/hで、高速モードでは12.7km/L。

過給圧制御は、電子制御ウエストゲート、電子制御エアバイパスバルブを採用し、精密に加速時、減速時のブースト制御が行なわれ、よりスロットルレスポンスが向上し、意のままの加速感が得られるようになっている。

このエンジンに組み合わされるのが新開発CVT「スバル パフォーマンス トランスミッション」だ。スバルはCVTの逆襲と呼んでいるが、目指したのは瞬速で変速するDCTに匹敵する変速性能を実現することであった。

より変速比幅を拡大したCVTをベースに、制御ソフトを新開発し、ブレーキによる減速に合わせて自動的にエンジンがブリッピング(iモードは除く)しながら疑似ギヤ段の4速→3速→2速とシフトダウンし、コーナリング時など横Gによりそのギヤ段をキープ。そして加速時にはギヤ段数に合わせたエンジントルクのカットを行ない、気持ちよく加速を継続するという制御になっている。なお疑似ギヤは8段とされ、もちろんマニュアル操作も可能だ。

この新CVT制御によりイメージ的にはDCTの減速や加速と同様のフィーリングにしており、シフトダウン、シフトアップともにDCT車と同等レベル。CVTのイメージ、常識を打ち破るトランスミッションとなっているのだ。

AWDシステムはVTD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)センターデフを装備。副列式の遊星歯車機構と電子制御油圧多板クラッチを用いて基本の駆動トルク配分は前45:後55とし、走行状態に合わせて前後配分を可変制御するようになっている。

さらにコーナリング性能を重視し、LSDの効果を抑制するスポーツモード付きVTDをSTI Sport Rは装備している。

また、新たにサーキットやスポーツ走行向けのTRACKモードを新設定している。このモードではVDC、トラクションコントロールの制御介入を弱め、ドライバーのコントロール域を拡大することができる。またスイッチの長押しで完全にオフすることも可能だ。

ボディ、シャシー

新型WRX S4は、レヴォーグと同様の最新世代のアーキテクチャーを採用している。つまり進化型スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)をベースに、アッパーボディはヨーロッパ車と同様のインナーフレーム構造を採用。

同じ技術を採用しているレヴォーグと比較しても、WRX S4はセダン形状のため、特にリヤ周りがよりボディ全体の剛性が高くなっている。またレヴォーグ以来、構造用接着剤も大幅に拡大採用し、ボディ全体の質感や静粛性が高められている。

ボディの材料も従来型との比較で、ホットスタンプ材、超高張力鋼板が新採用され軽量化と高強度化も図られている。その結果、従来型との比較で、静的ねじり剛性は28%向上、動的なねじり剛性は11%アップし、走りや静粛性、室内の質感を向上させている。

サスペンション、シャシーも最新世代に進化した。フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式を採用。フロントのストラットは、ホイール中心点でのオフセット量を縮小し、気持ち良い操舵フィーリングに。また同時に、サスペンションのストロークはフロントは5%、リヤは20%もアップされ、特にリヤの接地性能が向上している。

さらにGT-Hはフロントダンパーにリバウンド スプリング内蔵式を採用。これによりロール時の伸び側の動きを抑制し、より安定感のあるサスペンションとしている。

スタビライザーは、フロントはストラットにリンク点を、リヤはボディ止めのスタビライザーを配置することでスタビライザーの効率を高め、ロール剛性を向上。この他に前後ロール軸をやや前下がり軸とするなども合わせ、高いロール剛性、つまりコーナリングでロールが少ないサスペンションを実現している。

STI Sport RにはZF製の電子制御連続可変ダンパーを採用し、走行状況に合わせて各ダンパーの減衰力を可変制御しピッチングやロールを抑制。この連続可変ダンパーを装備するSTI Sport Rのドライブモードはコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの5モード設定し、快適な乗り心地からスポーツカー的な乗り心地まで幅広い領域を選択することもできる。

電動パワーステアリングは、レヴォーグ同様に2ピニオン式を採用。フリクション感の少ないリニアで滑らかな操舵フィーリングとしている。

タイヤは18インチで、専用開発されたハイパフォーマンスタイヤのダンロップ製245/40R18サイズのSPスポーツMAXX GT600Aを装着している。

新型WRX S4は、ヨーロッパのプレミアムクラスのスポーツセダンに勝るとも劣らない走りや質感を訴求するという方向性を明確にしたクルマといえる。もちろん価格的にも輸入車スポーツセダンに接近しており、かつてのラリーステージで活躍するCセグメントのスポーツモデルとは違うステージに上っていることは明らかだ。

この新型WRX S4をベースとしたスーパーハイパフォーマンスカーとして、今後WRX STIモデルが登場するはずだ。スポーツセダンとしてきわめてハイレベルに仕上げたWRX S4をベースとしたSTIモデルに対する期待も一段と高くなる。

価格

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