燃料タンクも変更
燃料タンクは100Lタンクを搭載しているが、ニュルのレースでの給油は通常のガソリンスタンドで使う一般的な給油ノズルを使う。だからタンクからの逆流があるとノズル先端のセンサーが働き、給油が自動でストップする仕組みのそれだ。そのため、給油中、満タンになるまで何度もカチカチとガングリップを握る動作を繰り返すことになる。そこには十数秒のタイムロスが生じているのは言うまでもない。そこで、給油された燃料が逆流しないような、タンク内の空気の抜けがいい形状に設計変更して今回搭載してきたのだ。そして、テストでは一度も給油が止まることなく、99Lまで給油できたという。
この変更で、1回の給油時間も十数秒の短縮になるという。それが24時間のレースでピット回数が18回あるので、数分の短縮へとつながり、課題としている1スティント9ラップの目標も可能になるという施策だ。
エアロボディ
空力変更ではフロントフェンダーの形状変更とリヤウイングの変更があった。こちらはまだ、風洞テストができておらず、ダウンフォースの変化などデータはない。フロントフェンダーはエアアウトレットを大きくサイズ変更し、タイヤハウス内の空気の抜けとエンジン房内のエアの抜けを改善し、冷却効果もありメリットは大きいという。また、フロントフェンダーはサスペンションのジオメトリー変更にともない、トレッドが若干狭くなった。片側-3mm縮小しているので、その分フェンダーは内側に入り、正面からみた時にくさび型のルックスへとなっている。肉眼ではその違いまでは確認できないが、そうした違いからも前面投影面積も変わり、いい方向に変更されていると辰己総監督は話す。
リヤウイングはステータイプから吊り下げ式のスワンネック形状へ変更し、それに伴い、ウイングのサイズ変更も行なわれている。しかし、この日はウイングの角度調整などのレベルまではテストできておらず、次のテスト段階に入ってからの調整になるようだった。
エンジン、トランスミッションには大きな変更はなく、クラッチに変更を加えたレベルだという。これはギヤ比の設定でハイギヤード化していくと1速のギヤが高くなり、発進がしにくくなっているからで、高回転で繋ぐとクラッチは一瞬で滑ってしまうので強化をしたという。そしてエンジン自体もピットレーンに侵入した時点でエンジン回転を絞る信号を出すように変更し、不注意から起こるトラブルを未然に防ぎ、ドライバーの負担軽減にもなる対策をしているわけだ。
このように、NBRはベース車両が19年のチャンピオンマシンだけに順調に2020仕様へと変貌を遂げている。ベースモデルがしっかりできているため、リヤサブフレームのように、仮に変更してよくない結果になれば元に戻すこともできるアドバンテージがある。そうした余裕があるからなのか、さまざまなトライができており、さらに戦闘能力が高まっていっているように感じられるテストだった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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