スバル雪上試乗会レポート スバルを支えるAWD技術をズームアップ

マニアック評価vol411

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新千歳で行われたオール・スバル雪上試乗会

2016年2月上旬に北海道・千歳で、スバルのオールラインアップ雪上試乗会が開催された。スバルのAWDは全モデルに水平展開している技術で、ブランドを支えるコア技術であり、改めてアピールする場として雪上試乗会を行なった。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>

シンメトリカルAWD
低重心で、軽量コンパクトな縦置きの水平対向4気筒エンジン、縦置きトランスミッションを基本とし、トランスミッション後端にトランスファーを配置するシンメトリカルAWD。低重心で、左右対称となるフルタイムAWDシステム

現在のスバルは、「シンメトリカルAWD」をコア技術と位置付けている。シンメトリカルAWDとは縦置きエンジン/縦置きトランスミッションをベースにしたフルタイムAWDシステムで、水平対向エンジンは軽量・低重心であり、トランスミッション内部に軽量・小型のトランスファーを内蔵している。クルマ全体を上から見ると前後のドライブシャフトが左右対称という軽量でバランスのよいレイアウトであることがわかる。そのためAWDのための重量は50kg~60kgで、他社のリヤ電動AWD、横置きエンジンAWD、FR車ベースのAWD、オンデマンド式AWDよりも機構的にシンプルで軽量に仕上がっているのだ。

◆スバルのAWDシステム詳解

スバルは車種に合わせて4種類のフルタイム4WDシステムをラインアップしている。ATはリニアトロニックCVT用としてVTD(バリアブルトルクディストリビューション)-AWD、アクティブトルクスプリット式AWDがあり、MT用としてDCCD(ドライバーズコントロール・センターデフ)-AWD、かさ歯車式センターデフ+ビスカスLSDがある。

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では、それぞれのAWDについて詳しく見てみよう。
・VTD-AWD:スポーティな性格を持つフルタイムAWDで、300psのレヴォーグ2.0、WRX S4に採用。複合遊星ギヤ式センターデフと電子制御油圧多板クラッチを組み合わせている。ギヤによる前後トルク配分は45:55。前輪の駆動配分を後輪のそれより減らすことで、コーナリング時の前輪の横グリップ力を確保し、コーナリング性能を重視しているのが特徴。油圧多板クラッチは走行状態に合わせて可変LSD制御を行なっている。

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VTD-AWDのトランスファー部
VTDは300psのDITエンジンとの組み合わされる
VTDは300psのDITエンジンとの組み合わされる

・アクティブトルクスプリット式AWD:かつてはMPT(マルチプレート・トランスファー)と呼ばれていたシステムの進化版で、センターデフの代わりに電子制御油圧多板クラッチを備え、前後トルク配分は車両の前後荷重配分と同等の60:40。採用車種は多数のセンサーにより、走行状態に合わせて油圧多板クラッチの締結力をコントロールし、滑りやすい路面ではクラッチはロック状態になり50:50となる。採用車種は、レガシィ、フォレスター、インプレッサ、XV、クロスオーバー7で、最も多車種に展開しているシステムだ。油圧多板クラッチの枚数は、エンジン出力に合わせNAエンジン用、ターボ用などの種類がある。クラッチの制御油圧はCVTの油圧と兼用だ。

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電子制御の油圧多板クラッチ式のトランスファーを持つアクティブトルクスプリットAWD
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アクティブトルクスプリット式AWD+Xモードを採用するフォレスター

Xモード
フォレスター、アウトバックにはXモードも採用
アクティブトルクスプリットに操縦性制御も追加

・DCCD-AWD:WRX STI専用に開発された遊星歯車式センターデフ+電磁クラッチ式LSD+トルク感応機械式LSDを組み合わせたシステムで、遊星ギヤによる前後トルク配分は41:59。電磁式LSDは応答速度が高くトルク配分を精密に制御し、さらに機械式LSDによりリニアに強いLSD効果を引き出すという特徴を持つ。走行状態をセンサーで検出して自動制御するオートモードも3種類の特性から選択でき、マニュアルではLSDロックからフリーまで6段階から選択でき、サーキット走行や競技走行に適合できるようになっている。

DCCD
DCCDトランスファー
DCCDスイッチ
DCCDスイッチ
DCCDを搭載するWRX STI
DCCDを搭載するWRX STI

・かさ歯車式センターデフ+ビスカスLSD式AWD:インプレッサ、フォレスターのMT車に設定されている最もオーソドックスなシステム。前後トルク配分50:50のベベル(傘型)ギヤと自動的にLSD効果を発生するビスカス・カップリングをLSDとして組合わせている。通常走行ではビスカスLSDは作動しないので、センターデフがオープン状態になっている。そのため素直な走りができるオーソドックスなAWDシステムだ。

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かさ歯車式センターデフとビスカスLSDを組み合わせたトランスファー

◆試乗レポート

これらのシステムの違いを体感すべく雪上試乗会が開催され、設定されたコースは夏場はダートラの会場としても利用される場所で行なわれた。

VTD-AWDの試乗はレヴォーク。特に前輪の横グリップ力が高くコーナリングを安定的にクリアする特徴があるが、低ミューの雪上ではタイヤのグリップ力を最大限に引き出し、横滑り防止装置と協調し安定した走行をする。リヤのトラクションを感じやすいためFRに近いフィールが得られ、コントロールしやすいと感じた。

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アクティブトルクスプリット式AWDではフォレスターとXVが用意され、特設された試乗コースを走行。この日は気温が高く特別に設けられたモーグル障害ではフォレスターのもつ最低地上高とAWD制御により、なんなくクリアするものの、緩んだ雪は崩れやすくXVでは底が当たる場面もあった。

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急坂を登るフォレスター
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駆動トルクのフローが表示される

アップダウンの激しい特設路では、急な下り坂をヒルディセント・コントロールがしっかり雪上でも機能し、ドライバーは不安を感じない。また、タイヤの荷重が変化するような凸凹な状況でも安定的に走破していたのは印象的だった。

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DCC-AWDはラリードライバーがデモ走行を行なったが、四輪ドリフトを自由自在に操り、コントロール性が高いことがわかる。試乗してみてもノーズの入りが舗装路と変わらず、すんなりと回頭するので雪上とはいえ、アクセルを開けるタイミングが早くできる。開けすぎるとスライドするが、それも非常にコントローラブルで、怖さは微塵も感じない。

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インプレッサ・スポーツ
レヴォーグ 2.0
レヴォーグ 2.0

こうして雪上の試乗コースをさまざまなシステムのAWDで走行してみると、どのシステムでも安定的に安心感の高いAWDであることを実感するが、スバルのAWDはこうした低ミュー路のための、というより舗装路での安定感やスポーティさを重視していることもよくわかる。簡単に言えばドライでのAWD性能の高さは雪上でも高性能であるということだ。

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