2014年1月23日、富士スピードウェイでSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)が日本未発表の新型WRX STIをベースに開発したニュルブルクリンク24時間レース仕様車のシェイクダウンテストを行なった。またSTIは今年のニュルブルクリンク24時間レース(ドイツ 6月19日~22日)にエントリーし、2011年・2012年に続き3度目のSP3Tクラス(2。0L以下のターボ車:SP3Tクラス)での優勝を狙うと正式発表した。
出場車両は、ポテンシャルアップした新型 WRX STIをベースに、スバルとSTIが連携してか2013年8月から開発され、空力性能の向上や更なる低重心化を図り戦闘力を高めている。また、今回は完全なニューマシンのため4月12日と5月17日にニュルブルクリンクで行なわれるVLNレース(ニュルブルクリンク長距離選手権)2戦に出場してマシンのセットアップを進める計画だ。
今回シェイクダウンテストを行なったレース車は、この先の予定として、2月11~14日にアメリカのラグナセカ・サーキットで新型WRXのプロモーション活動の一環としてデモ走行を実施。3月4~16日にはジュネーブショーでヨーロッパ・プレミアを行ない、その後はドイツでWRX試乗会でのデモ走行、5月31日~6月10日はライプチヒ自動車ショーへの出展と、スケジュールはびっしり詰まっていることも公表された。
チーム体制では、ドライバーはニュルブルクリンクの経験が豊富な吉田寿博選手と4回目の挑戦となる佐々木孝太選手、オランダ人のカルロ・ヴァンダム選手、2013年チームに加入したマルセル・ラッセー選手の4名。
STIのパワーユニット技術部主査の小澤正弘氏が監督としてチームを率い、車両開発を担当したSTIモータースポーツ統括部の辰己英治氏は引き続きSTIチーム総監督を務める。
また、例年通りこのレースチームに加入するディーラーメカニックは、新たに選抜された上石正輝(新潟スバル)、中村 亮介(富士スバル)、木山 慎也(大阪スバル)、太田浩史(京都スバル)、島崎宣聡(兵庫スバル)、梅村 達志(東四国スバル)の6名となる。
ニューマシンはすでに辰己総監督が事前テストを行なっていたこともあり順調に仕上げられ、従来型より一段と進化していることも明らかになった。車両は、空力性能が約10%改善され、当然ながら最高速の伸びと燃費改善に直結する。また前後ホイールハウス内部のエアを排出するためのエアアウトレットが前後フェンダー後端に新設された。これにより高速走行中の揚力発生を防ぎ、高速走行時の安定性を増している。
エンジンは実績のあるEJ20型が搭載されており、エンジン本体は特に大きな変更はないという。言い換えれば今後、日本で登場する新型WRX STIの搭載エンジンはEJ20型(アメリカ仕様は2.5LのEJ25型)で決定と見て良いだろう。
一方で、トランスミッションはヒューランド製6速シーケンシャルがノーマルハウジングの中に収められている。辰己氏は「これまで6年間、24時間レースで純正トランスミッションを使用し、ノートラブルで抜群の信頼・耐久性を実証できました。そこで今回からはよりドライバーの負担を少なくできるシーケンシャル・トランスミッションを使うことにしました」と語っている。
もちろんこの新型トランスミッションはすでに十分な耐久試験も行なわれている。このシーケンシャルの採用で、コーナーごとに0.2~0.3秒、ニュルブルクリンクのコース1周では数秒のタイムアップに繋がると予想できる。
SP3Tクラスの4WD車の規定重量は1220kgと2013年より20kg重くなっているが、車両としてはより低重心化を狙って、ボンネット、前後フェンダー、ドア、トランク、ウイングスポイラーなどはすべてをカーボン製にしている。したがって規定重量に合わせるためにバラストを積載する。また低重心化のためにシャシーの取り付け位置を100mm低下させ、このためサブフレームの取り付け位置が変更され、結果的にサスペンションジオメトリーも改善され、十分なストロークの確保と低重心化が実現している。
このように本格的なレース対応策が採用される一方で、新型WRX STIのより高められたボディ剛性を生かし、優れた操舵応答性と、リヤタイヤのグリップ力のアップが実現。ベース車両の大幅な進化によりレース車のポテンシャルも格段に向上しており、ニュルブルクリンクでのラップタイムも大幅な短縮が期待されている。今回の富士スピードウェイでのテストでは2013年より1秒ラップタイムを短縮しており、ニュルブルクリンクでは約10秒タイムを縮めたいとしている。