2014年1月14日、デトロイトショーで新型「WRX STI」(米国仕様車)を世界初公開した。いうまでもなく新型WRX STI は、WRXシリーズのフラッグシップモデルとして、WRX シリーズ共通の商品コンセプト「Pure Power in Your Control」をさらに高い次元で具現化したハイパフォーマンスモデル。アメリカでは春頃に発売予定という。
「WRX STI」は様々なモータースポーツにおいてパワーと信頼性に定評のある2.5L(EJ25 型)水平対向ターボエンジン(アメリカ仕様。日本仕様は2.0L)、剛性を大幅に向上させた専用サスペンション、マルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)システム等を搭載する。つまり、特別な新技術の採用はなく、従来からの延長戦上でボディ剛性やハンドリング性能を高めているのだ。
新型WRX STI の開発にあたっては、日本、アメリカ各地、ドイツ(ニュルブルクリンク)など各国の様々な走行条件下でテストを重ね、その走行性能を徹底的に鍛え上げたという。中でも、ニュルブルクリンク・サーキットでは、歴代のWRX STI と同様に超高速度域における走行試験を重ね、これらの過程でボディ、シャシーなど車両各部の性能を極限まで高め、車両性能を総合的に進化させ、ハイパワーをドライバーの意のままに操ることのできる、かつてないレベルのAWDスポーツパフォーマンスを実現した。
WRX STIのコンセプトは「Pure Power in Your Control」で、歴代のWRXシリーズが追求してきたスポーツセダンとしての「絶対的な速さ」と「クルマを操ることの楽しさ」をさらに高次元で両立することを目指した。水平対向ターボエンジンが持つポテンシャルを最大限に発揮し、かつドライバーのイメージ通りに操ることのできるコントロール性能を極限まで追求するために、ボディの軽量化と剛性向上、シャシー性能の徹底的な強化を織込み、商品コンセプトを具現化した。開発の性能ターゲットはポルシェ911カレラSだ。
搭載エンジンはハイパフォーマンス車の象徴として、モータースポーツにおいてその性能と信頼性を磨き上げてきたEJ25型2.5L水平対向ターボだ。もともと従来モデルでも北米仕様のWRX STIにはこのエンジンが搭載されていたが、緻密なエンジンチューニングにより、305hp/6000rpmの出力と、290lb.-ft(394Nm)/4000rpm の高トルクを発生する。動力性能は0-100km/hが5.2秒だという。
トランスミッションは強化タイプの6速MTを採用。ショートストロークシフトとしている。従来型6MTに対し節度感、吸い込み感を向上し、よりスポーティで気持ちよいシフトフィーリングに。WRX STI専用装備として、マルチモードDCCD システムを従来型から継続採用。路面状況やドライバーの好みに応じて、センターデフの制御特性を自由に選択できるようにしている。
プラットフォームは新世代化され、さらにWRX STI専用に骨格部の結合剛性を大幅に向上させ、同時にサブフレーム部の取り付け剛性を向上させ、かつてないほど徹底的に局部剛性をアップしている。そしてフロントストラットは倒立式を採用するなど、サスペンションの横剛性を大幅に向上させている。さらにボディ剛性が向上したためスプリングレートは従来型に対して20%アップ。またステアリングギヤ比は13:1とされ、ステアリングラックギヤの取り付け剛性は従来型の4倍にまで向上させたという。この結果、操舵に対して遅れが圧倒的に少ないダイレクトで俊敏なハンドリング実現し、ダブルレーンチェンジや限界コーナリング性能、ステアリング応答性など多くの実験項目はポルシェ911カレラSに匹敵する結果が出ているという。
パッケージングは歴代のWRX STI が提供してきた、4 ドアセダンとしての実用性をさらに高めながらも、パフォーマンスも向上させることで、WRX STI ならではの個性を高めている。全長4595mm、全幅1795mm、全高1465mm、ホイールベースを25mm延長し2650mmとし、その延長分は後席足元スペース拡大に使用。また、全幅を変えることなく、肩、肘周りの空間にゆとりを持たせている。Aピラー下端を200mm前進させ、ドアミラーをフロントドアパネルに取り付けることで、パーテーションガラスを新たに設定するとともに、インストルメントパネルとドア窓肩部の高さを抑え、これにより良好な視界とクーペ風のスタイリングを両立。またフロント、リヤともにドア開口寸法を拡大することで乗降性を大幅に向上。
トランクスペースを拡大するとともに、大きな開口部の6:4分割可倒式トランクスルー機能を採用して、トランクスペースの使いやすさを向上。
フロントデザインは、スバルの統一デザインモチーフであるヘキサゴングリルからソリッドでダイナミックな造形のノーズコーンを採用することで構築。精悍な形状の新ホークアイヘッドランプと合わせ、WRX STIらしいアグレッシブなワイド&ロースタイリングとしている。サイドデザインは、Aピラー下端を従来型比で200mm前に出し、Cピラーをスムーズにトランク面へ繋げることで、クーペ風のシルエットを実現。フロントフェンダーダクト、シャープな造形の専用サイドシルスポイラーにより、WRX STIのスポーツ性能を表現している。
リヤデザインは、ディフューザー一体型バンパーやツインデュアルタイプのテールパイプにより、WRX STIの重心の低さや走行性能を表現。専用開発したリヤコンビランプを薄型の造形とすることで、車両のワイド感を強調している。また、大型リヤスポイラーの採用により、空力性能の向上も果たすとともに、WRX シリーズのトップグレードモデルとしての存在感を訴求している。また新たにシャークフィンアンテナを採用している。
それ以外では剛性アップと軽量化を両立したアルミホイール(18×8.5J)をオプション設定。ヘッドランプ(ロービーム、クリアランスランプ)、テール&ストップランプ、ハイマウントストップランプの光源にLED を採用している。
インテリアの各所や操作部を中心に、スポーツカーを象徴するカーボン調加飾パネルや金属調アクセントを配置し、大幅な質感向上を実現。シートやシフトノブ、インパネ中央部へWRX STI専用の赤アクセントを加えている。ルーフからフロアまで黒色で統一し、室内全体を引き締めている。ステアリングは、スポーティな印象を高めるDシェイプステアリングを初採用。小径で握りやすさを追求したグリップ形状としている。シートはハイパフォーマンスカーにふさわしい、ホールド性に優れたデザインを採用。ヘッドレスト前面に「STI」ロゴを型押ししている。
メーターには、2眼水平指針レイアウト+3.5 インチフルカラー液晶やアルミ調シルバーリングを採用し、機能性と質感を向上させ、細部までの造り込みによりハイパフォーマンスカーとしての精緻感と性能を表現。マルチファンクションディスプレイには、ブースト圧表示画面を設定している。ナビゲーション装着車について、Aha Radio(インターネットラジオ)利用に対応している。オーディオは harman/kardon 製システムを採用し、WRX に合わせた専用音響チューニングを行なっている。
【新型 WRX STI の主な仕様】(米国仕様)
ボディサイズ(全長×全幅×全高):4595×1795×1475 mm(ルーフ面は1465mm)
ホイールベース:2650 mm
エンジン:2.5L水平対向ターボエンジン
排気量:2457cc
トランスミッション:6MT
最高出力:305hp/6000rpm
最大トルク:290lb.-ft.(394Nm)/4000rpm
タイヤサイズ:245/40 R18
乗車定員:5 名