2025年2月26日にスバルのデジタルカー開発の拠点となる渋谷のサテライトオフィスが紹介された。
SUBARUは、2019年にアイサイトを進化させADASの開発拠点として、渋谷H1O(エイチワンオー)でスタートしている。そして2拠点目となるのが今回のWe Workで、2025年2月に入居したという。この2拠点ともサテライトオフィスであり、さまざまな企業が集まる場所だ。今回のWe Workには200社以上が所属し、うち6割がIT関連企業ということだ。
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SUBARUはそうした場所で、新たな人財や企業間コラボなどの可能性を持ちながら、デジタルカー開発を進めている状況だ。
中心となっているのはアイサイトの開発で知られる柴田英司さんで、現在はSUBARU技術本部の副本部長であり、執行役員チーフデジタルオフィサーという役職を務めている。デジタルカーの開発では、さまざまな業種・領域の関わりが必要であり、それらの横串を通す役目だと話していた。
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デジタルカー開発
さて、スバルのデジタルカー開発とはどんなものか。一般的にはSDV開発(ソフトウェアで定義された車両)ということになる。そうした中でスバルらしさを作るには何が必要かを考え、他業種からのアイディアも含め、検討しているのがデジタルカー開発だ。
今回、柴田執行役員からは、このWe Workで活動をするにあたり、スバルのデジタルカー開発はどのような考え方で進んでいるのかの説明があった。
狙いは「モノづくり、価値づくりで世界最先端を狙う」という新経営体制の方針があり、デジタル・テクノロジーで実現する価値の最大化を目指しているわけだ。
次世代モビリティの姿
次世代のクルマはどうなるのか?駆動にはCO2を排出しない電気モーターが使われ、さまざまな価値を提供するクルマになる。その領域はスマートフォンを超え、移動しながらも提供し続けられる価値を持ったモビリティだ。つまり、車内にいても最新ニュースがわかり、音楽や映像が楽しめ、ゲームも可能でバーチャル会議もできるといった移動する会議室、あるいはリビングになっていく。
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それらはどうやって作り出すのか。一般的にはビークルOSと言われるソフトウェアで高性能なECUを制御し、さまざまなソフトウェアを走らせる。そのアプリは体験型のユーザーエクスペリエンスであったり、エンターテイメントであったり。またAD/ADASの領域も同じECUで制御され、ビークルOSで稼働する。さらにクルマのダイナミック性能もソフトウェアで動くことになり、それが安心・安全につながるという価値提供になる。これらが、次世代モビリティと言われているものだ。
同様にスバルでも次世代モビリティ開発をしており、その拠点となるのが、2か所のサテライトオフィスというわけだ。ここでは新しい発想やアイディアを生み出し、実装可能なものか、ニーズはあるのか、などが研究されいくことになる。
開発のベクトル
現在のスバルの開発状況では、制御統合型ECUをオリジナルで開発しているという。いわゆるセントラル・コンピュータで、UXやAD/ADAS、ダイナミック性能を動かすECUだ。もちろん、ビークルOSもオリジナルということになり、大方の予想ではトヨタが開発しているアリーンOSを予測していたと思うが、その期待を良い方向で裏切ったと思う。
その制御統合型ECUでは、新UXの実現が必要であり、そのためにはソフトウェアの開発は必須となる。そのためのWe Workということでもあるわけだ。さまざまなIT企業のエンジニアが集まるWe Workには、マッチング機能もあるということで、企業同士が繋がりがしやすい環境というわけだ。
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そしてすでに協業が公表されている企業に、半導体メーカーのAMD、ONSEMI、パナソニックエナジー、そしてアイシンなどがあり、アイシンからは3in1などのe-Axelが提供され、パナソニックエナジーからは車載バッテリーが供給される。
そしてAMDとONSEMIにおいてはAI半導体の開発をしていくことになる。現在AMDのVersal AI Edge Gen2をベースに開発が進められているという。これは完全なSUBARU専用のものではなく、AMDが提供するAIを、スバルには不要なものがあり、それらは削除し、また必要とする機能は独自回路を追加した半導体AIだ。
必要とする機能のキーは、やはりステレオカメラをベースとするアイサイト技術だ。走行環境を見極めるアイサイトの性能を上げるためにAMD のAIが必要であり、捉えたデータをONSEMIのイメージプロセッサーで解析し、統合制御ECUに指令をだす。それをオリジナルのビークルOSで稼働させるという仕組みになる。さらにEV自体も同じECUで制御しており、AD/ADASの性能向上に繋げている状況だ。
E/Eアーキテクチャーの新プラットフォーム
新UXとしているユーザーエクスペリエンスは、いわゆるIVIでIn Vehicle infotainmentであり、知能化されたAIはさまざま価値を体験させるものになっていく。つまりオーナーの行動を学習し、提案をしたり注意喚起をしたりといったものや、クルマに近づくだけでドアが開いたり、トランクが開いたりといった予測行動も体験できることになる。
こうしたループを作るためのE/Eアーキテクチャー≒電気・電子プラットフォームも新たに開発が進められており、このE/EアーキテクチャーをベースにビークルOSを搭載し、スーパーコンピュータによってさまざまなソフトウェアがハード部品を動かすというのが現在進めているデジタルカー開発だ。
そして求める「スバルらしさ」はAWDや水平対向エンジンだが、次世代においても「らしさ」を追求し、スバルの本質を輝かせるモビリティとし、最終的には持続可能な社会の実現という自動車会社としての目標を掲げているのだ。
そのプロセスの途中にはエンジンを使ったHEVやPHEVなどからのCO2削減、脱炭素ということもロードマップに含まれ、E/Eアーキテクチャーによって、徹底的にSUBARUの魅力を引き上げていくという狙いを持っている。
そのため、ソフトウェアによってハードの性能を引き上げることが重要というフェーズにいるとも言える。さらに、このWe Workで働くメンバーには、IoTでつながることで提供できる価値を、ビジネスモデルに変えていくことが求められており、その部署も稼働が始まっているという状況だ。
このように、柴田執行役員を中心に、SUBARUの価値づくりにつながるデジタルカー開発は進められており、20年代後半にはその実像が提供され始めるだろう。