SUBARU CN燃料の検証結果と今後の課題についてのラウンドテーブル

2022年からSUBARUはスーパー耐久選手権に出場しているが、そこはメーカーの開発車両が出場できる特別な「ST-Q」クラスに参戦している。スバルはそこでカーボンニュートラル燃料を使用し、どんな課題があるのかを検証している。

2023年9月に開催されたスーパー耐久第5戦もてぎ5時間耐久レースの会場で、これまでの検証結果を報告するラウンドテーブルが行なわれたのでお伝えしよう。

市販車両のBRZとノーマルエンジンでスーパー耐久に参戦

結論から言うと「CNF(カーボンニュートラル燃料)は改質が必要なものの、汎用性が非常に高い」という結論であり、市販し、ガソリンの代替燃料になりうる可能性が高いという報告を行なった。

参戦当初の課題はCNFは揮発性が不十分であり、シリンダー内の内壁に付着しオイル希釈をすることが分かった。つまり、完全に燃焼するか、あるいは蒸発して排気されるガソリンに対して、液体燃料のままシリンダー内にとどまり、それがエンジンオイルと混ざり、オイルが薄まっていることが分かったという。

その結果、クランクシャフトとコンロッドを繋ぐ部分に使用されるメタル部分にスラスト傷ができ、エンジンに影響が出ることが分かった。詳細検証すると、CNFはハイオクと比較し30℃シリンダー内温度を上げないと揮発しないことがわかったという。

一方で、出力性能ではハイオクと同等であることが分かり、さらに、燃焼速度もハイオクと同等であり、燃費、排ガス規制成分においてはハイオクにやや劣る性能であることも分かった。主にHC炭化水素とPM(煤)に差があり、またCO一酸化炭素とNOx窒素酸化物ではハイオクと同等かそれ以下に抑えられているという結果になった。

検証結果から分かったデータ

これらの検証はスバルの市販エンジンFA24型で実験されている。市販車BRZに搭載されるFA24型をそのままレースで使用しCNFの検証を行なってきた。その間、これらの課題、つまりオイル希釈からの動粘度低下が起こり軸受メタルの摩耗が大きくなる。そのためオイル粘土の向上しつつオイルクーラーの追加で油温を下げ、潤滑状態が改善されたことで、メタル摩耗が減少したことを確認している。

そして2023年に入ってからは外気温低下時にオイル希釈が増大することがわかり、動粘度低下が起きる。対策としてはエンジン水温の制御を上昇させて適正化を行なった。

2023年はさらに改質されたCNFで参戦、検証は続けられている

しかし、これらの対策はレースの限られた環境下での対策であり、燃料自体の適正化が必要であると判断し、トヨタと共同で燃料改質に関する議論を行なってきた。そこでは排ガス規制成分の増加やオイル希釈に対して、揮発しやすい燃料にすることで、排ガス規制成分増加の要因を低減できることで解決すると結論づけている。

こうした検証結果に対し、CNFを提供するP1レーシング(ドイツ)からは第3戦のSUGO大会で新燃料にシフトし、さらにマツダの12号車のロードスターでも検証を開始。現在は検証中であるという報告がされた。

ドイツのP1レーシングからCNFは供給され、マツダもロードスターで参戦している

スバルの取り組みとしてはCNな社会において、新燃料を「つくる、はこぶ、つかう」中で「つかう」というフェーズにフォーカスして実証実験を行なってきたが、「つくる」というフェーズにも関わることで、既販車両に何も手を加えることなく使える燃料になるように開発を継続することが伝えられた。

今後の課題として、9月中旬より過給器エンジン、つまりターボエンジンでの検証を開始し、圧力や燃焼の仕方の違いから何かの違いが出る可能性を指摘している。これらに対し、現在のCNFはオクタン価など、ガソリンのJIS規格に適合するように作られているものの、その範囲から少し外れてでも適合させるのがいい方向ではないかと検討していくとしている。

CNFは市中にある既販車両で利用できるようになる必要があり、検証は続く

また極限の低温化での傾向がまだよく掴めていないこともあり、日本の精油メーカーとの共同開発を希望しているという報告がなされて締め括った。

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