スーパーGT2022 第2戦富士スピードウェイ SUBARU BRZ GT300 3位表彰台を獲得

スーパーGT2022の第2戦が富士スピードウェイで開催された。行動制限のないゴールデンウィークを3年ぶりに迎え7万3000人という大観衆を集めた。SUBARU BRZ GT300はポールポジションからのスタートで3位フィニッシュと上々の結果を残したものの、赤旗中断2回、獲得ポイントは半分というレース前には想像もしなかった結末になった。

レース中盤、大きなクラッシュが富士スピードウェイを襲った。GT500の3号車のクラッシュはドライバーの安否を気遣うほどのショッキングなアクシデントだった。人はその要因を憶測しSNSで拡散する。憶測で拡散することほど不愉快なことはない。幸いドライバーの高星明誠には怪我もなく元気な様子が、本人、ニスモからも発表され早期の復帰を期待したい。

そしてBRZ GT300にもBoPを含め、のしかかる課題が顔を出し、長距離レースでの戦い方に工夫が強いられている状況が見えてきた。ただし、BRZ GT300にとって、3位表彰台は素晴らしい結果であり、チャンピオンシップにおいて大きなポイントを獲得できたことは間違いない。

BRZ GT300はポールポジションからのスタート

どのように戦うか

さて、第2戦に課せられた条件をお伝えすると、レース距離は450kmで2回のピットインが義務付けられている。その中にはドライバー交代と給油がマスト条件で、タイヤ交換についての条件はなかった。また給油には「給油量」の条件はなく、ちょっとでも給油すればOKで、燃費が良いマシンには有利に働く条件でもある。

これらの条件に対し、BRZ GT300は井口卓人と山内英輝の2ドライバーで挑み3スティントを分担する。タイヤは摩耗状況を見ながらの交換本数決め、というスタンスだが無交換で走れるスティントはないだろう、というのがレース前の見立てだ。そして給油も「チョン刺し」は難しいという計算で臨むことになっていた。

従って、戦略的にはできるだけ上位からスタートして逃げ、ピットストップの時間を稼ぐという基本的なスタンスは従来と変わらないことになる。

そしてレースの結末はアクシデントを引き金にレース条件は変更され、「ピットイン1回」という条件だけになり、そのほかの条件は取り消されている。不満の残るチームもあると思うが、GTAはこうした裁量を降したのだ。

ダンロップのニュータイヤがいい仕事

公式練習では、マシンの状態チェックから始まり、予選、決勝で使うタイヤを決め、そのセットアップをしていく。いつものように山内がセットアップを担当しタイヤを選ぶ。しかし今回は、ダンロップから新規に開発した新しいタイヤがチームにもたらされていたのだ。

タイヤに求めている性能は、グリップはそのままにロングライフだ。これは運営するGTAが参戦するタイヤメーカーに要求している性能とも一致するものだ。BRZ GT300はこれまで4本交換はほぼマストな状況で、ヨコハマやブリヂストンユーザーが使う無交換作戦はできていない。2回のピットインで少しでもタイヤ交換に要する時間が短縮できれば展開は有利になるのは明確である。

この新規開発のタイヤはこれまで一度もテストできていない。ぶっつけ本番でこの公式練習で走行したわけだ。ところが山内によれば、簡単に選択できたわけでなく、従来タイプの中から有力タイヤを選定し、それと比較してよければ選ぶという気持ちでセットアップをしていたという。

公式練習では全体2位のタイムをマークした。この時どんなタイプのタイヤなのかは不明だが、ドライバーの2人は、「ロングがどれくらいもつのか、やってみないとわからない」と口を揃えていたのだ。スーパーGTの規則で、シーズンが開幕したらチームは勝手にテストをしてはいけないルールがある。そのため、タイヤメーカーも実車でのテストができず、全員が手探りで始まるわけだ。

こうしたルールも見る側に興奮と感動を与える要因になっているのだろが、チーム側にとってはギャンブル性が高く、リスクと常に対峙しながらの決勝を迎えているわけだ。

ダンロップのニュータイヤがいい仕事をする

ポールポジションを狙う

予選はいつものように井口卓人がQ1突破を目指し、Q2で山内がポールを狙うというのがこのところ定着している。井口は期待どおりにA組5位でQ1を突破した。27台参加したGT300クラスは、予選をA組、B組に分け、それぞれ上位8位までがQ2に進出するノックアウト方式だ。

続くQ2では山内がポールを狙いにいく。コースインして4周目、1分34秒983でトップタイムをマークした。じつは昨年、富士スピードウェイでは2回開催され、第2戦では1分35秒343でポールを獲得しており、この時点で第2戦のタイムを上回っている。また最終戦では1分34秒395のコースレコードもマークしポールを獲得。さすがにこのタイムには及ばないものの、山内はアタック2周目に1分34秒888をマークしてポールを確定させた。

予選が終了し、各チームのタイムを見ると山内が唯一の1分34秒台で、2位に0秒365の差をつける圧倒的な速さをみせたのだ。僅か0秒365と思うかもしれないが、Q1の井口はあと0.1秒遅かったら10位となりQ1敗退だ。Q1A組は8位の56号車とトップの96号車の差は0秒499であり、その中に8台のマシンがひしめき合う混戦なのだ。だから山内が2位に0秒365もの差をつけていることの凄さが見えてくるのだ。さらに驚くことにダンロップユーザーが4位までを独占し、新規開発したタイヤが好成績を出したと理解できる予選だった。

開幕戦、第2戦と2戦連続のポールポジション獲得

この予選結果により、BRZ GT300は昨年の最終戦から3戦連続のポールポジションを獲得したことになり、特に今季はターボの過給圧を下げるBoPにより出力は絞られている。それでもポールが取れるのはなぜか?小澤総監督に聞いてみた。

パワーダウンしても速い秘密

「今回はダンロップさんのタイヤがすごく良かったということです。そして山内も好調で乗れているということだと思います。出力が絞られていることに対しては、パワーダウンした分、コーナー出口でほんの少し速くアクセルが開けられるという言い方もできるわけで、トップスピードは正直苦しいですけど、ラップタイムは落ちないようなセットアップにしています」

さて、このコメントをどう解釈するか。例えば動力のない下り坂を走行しているときにベストなライン取りをすればラップタイムは変わらない。だけど理想のラインが走れず、邪魔をされてしまうと取り戻すことはできない、ということがイメージできないだろうか。単独で走れる予選は速い、が決勝は厳しいという絵が思い浮かぶ。

そうしたことを山内は完璧に理解し、アクセルワーク、ブレーキ、ステアリングをイメージどおりに操作でき、さらにタイヤの性能が上積みされてラップタイムを落とすどころかタイムアップすることに成功している、というように理解できよう。ただし、決勝では他車とは絡まず逃げまくることで優勝が見えるというわけだ。

ポールを獲得しファンの声援に応える山内英輝

ドライバースティント

迎えた決勝では山内が2スティントで井口が1スティント担当。これは昨年の500kmレースと同じだ。だが、内容が違う。今回は山内ー山内ー井口という作戦だった。小澤総監督によれば「最初のスティントはスタート直後の混戦があって、どうしてもショートスティントになります。2スティント目はニュータイヤでいく予定で臨みました」という。

つまり、スタート直後はタイヤ、燃費ともに苦しくなるので、短めのスティントになってしまう。そして2スティント目は山内にニュータイヤを履かせて順位を戻す、ないし、後続を引き離す作戦で、最後のスティントは井口に粘ってもらいポジションキープをさせるという意味だと解釈した。

前年の500kmレースでは2スティント目を井口が走るもののユーズドタイヤを使いポジションキープの展開をしていた。そして最後に山内にニュータイヤを履かせてトップに返り咲く作戦だったがトップに届かず2位フィニッシュしている。そうしたことから同じ展開になれば2位になるわけで、捲土重来を期待するためにも順番を入れ替えてみたのではないだろうか。

タイヤの性能向上を見た

レースは順調に始まり、1コーナーをトップで駆け抜けるものの、2位10号車GT-Rが速く、山内に襲い掛かる。1周目10号車がトップで戻ってきたのだ。その後、山内に1秒のリードをつけ、さらに毎周0.2秒の差をつけていくのだ。10号車のセットアップが決まっている印象で、さすがの山内も追いつけない状況だ。

レース序盤は上位7台が37秒台で走行し、ほぼ均等の距離でのレースになった。気になるのは予選では上位にいなくてもレースでは上位にくるチームだ。例えば4号車のGood smile AMG GT3は6周目にピットインしている。ヨコハマユーザーで奇抜な戦略も稀に決まることもあるため気になる。また同じGT300規程の52号車も6周目に1回目のピットインをしている。65号車LEON AMG GT3は29周目、56号車KONDOのGT-Rも28周目でピットインしており、チームはさまざまな推測をしながら戦略を立てていく。

BRZ GT300は最初のスティントは短いはずだったが、「タイヤのタレも少なく、また他のマシンとの絡みも少なかったので意外にもロングなスティントになっていた」とレース後小澤総監督は話す。山内は38周を終えたところでピットインしタイヤ4本交換と給油を行なった。そしてドライバー交代なしで連続の2スティント目に入った。

じつはこのコメントにも大きな意味があると思う。最初のスティントは予選で使ったタイヤであるにもかかわらず、38周を終えても「タレが少ない」と性能落ちの幅が小さいことを意味している。これはいままでにはないタイヤの性能向上があったのは間違いない。

オープニングラップで10号車GT-R GT3に交わされてしまう

ピットでの課題に明るい兆し

コースに戻ると1回目のピットを終えた中では4番手だった。前には52号車、10号車、34号車がいた。ピットロードのイン、アウトは、全車50km/h規制で走行しているため、純粋にピットストップ時間が影響する。この時BRZ GT300はタイヤ4本交換と給油だけで4番手に下がっているので、おそらく給油時間の差が影響したと思われる。

タイヤ交換に関しては450kmを無交換で走り切れるチームはなく、最低でも2本は交換しているはず。特に前に出られた10号車、24号車は同じダンロップユーザーなので条件は同じだ。52号車はブリヂストンユーザーのスープラで同じGT300規程だが、NAエンジンはBRZ GT300よりも燃費が良い。

BRZ GT300は燃費が悪いとはいえGT3勢とほぼ同等の燃費になっているが、BRZ GT300のピットの給油機にはリストリクターを装着するBoPがあり、1秒間に給油できる量が制限されている。10号車、34号車のGT-R GT3にはそのリストリクターは装着されていないので、燃費が同等だと仮定しても単純に給油時間には差が生じる。山内が4番手でコースに戻るのは如何ともしがたく、どこかでタイムを削る工夫がさらに要求されていることが見えてくる。

その後、他のマシンのクラッシュがあり赤旗中断となり10号車、34号車のリードは消えた。また52号車は2回目のピットインを45周終えた時点で行なっており、山内はこれで3位に浮上し鼎立からのリスタートとなるが、再びアクシデントが起こり、ガードレールの修復などを行なうも、62周(GT300は58周)でレースは終了となった。

3位表彰台を獲得。もはや富士は得意なコース

BRZ GT300は3位表彰台を獲得。井口は走行しておらず消化不良だが、ドライバーズランキングは9.5点で5位。トップは開幕戦で優勝した56号車、藤波清斗/オリベイラ組の22点。チームランキングは34号車と同点で6位。次戦の鈴鹿300kmレースでは29kgのサクセスウエイトを搭載しての挑戦になる。

課題はピットストップ時間とパワーダウンだが、明るい材料としてはダンロップタイヤの性能向上があった。それにより、ピット時間短縮の可能性は広がり、ラップタイムの向上も期待される。連勝できないようなBoP、圧倒的強さを持てないようにするBoPを課せられても、アイディアと工夫で勝負しているBRZ GT300への興味は尽きない。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>


The Mortor Weekly

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