スーパーGT2022開幕 SUARU BRZ GT300 岡山でレコード更新も9位

スーパーGTの2022年シーズンが開幕した。今シーズンもSUBARU BRZ GT300のインサイドレポートは、踏み込んだレポートをお届けするので期待していただきたい。

SUBARU BRZ GT300がサーキットを走るのは、前回の富士スピードウェイでの公式テスト以来だ。その時は、あいにくウエットでのテストとなったため、今季改良してきたECU、サスペンション、空力など全体のとりまとめが不十分な状況だ。

しかし、開幕戦の土曜に行なわれた予選では山内英輝がアタックしたQ2予選で、岡山国際サーキットのコースレコードを塗り替え、ポールポジションを獲得する速さを見せた。その結果には本人も驚くほどで、チーム内は一気に不安が吹き飛び、明るい空気へと変わっていた。

ところが決勝レースでは、9位が精一杯という結果になったのだ。

特別BoP

開幕戦で正式なBoP(性能調整)が発表された。BRZ GT300は1150kgの車重にBoPの50kgを搭載し1200kgとなった。さらに今回、岡山だけ特別BoPの+35kgが追加されている。その理由はGT500のラップタイムが速く、コース幅、エスケープの狭さなどから安全性を考慮すると、全体的にラップタイムを落としたほうが良いという判断があり、リストリクターで調整している。そのためGT300にもGT500とのタイム差が生じるようにするための措置として全車両に特別BoPを追加したということだ。

これは今季だけでなく、例年行われてきたBoPであるため、チームも想定していた内容であり特段嘆かわしいものでもない。だが、BRZ GT300にはもうひとつBoPが課せられている。それはターボ過給圧のダウンで出力が4%絞られていることだ。過給圧がさがることで、コーナーの立ち上がりは遅くなり、馬力が落ちた分トップスピードも落ちるという二重苦がある。

公式練習

チームは、土曜の午前に行なわれる公式練習でセットアップをする。改良ポイントの部分的なチェックは終えているものの、全体のとりまとめとしては不十分だったため、この公式練習がポイントになるのは間違いない。

その公式練習は待ち望んだドライ路面になった。気温は14度、路面温度25度でセットアップは始まった。いつものように山内英輝がコクピットに座り、仕様のベースを決めていく。レースに向けてのタイヤ選択や、タイヤに合わせたマシンの仕様など全体のフィールチェックとラップタイム計測で煮詰める。

テストは順調で仕様の大きな変更はなかったという。細かなダンパーの減衰やバネレートの変更、リヤウイング角度調整、ECUのデータチェックも順調だった。ただ、タイムはGT300全体で7位どまりだ。

ECUに関してはこれまでテストを繰り返してきていたものの、まだ詰めきれていないところがあるという。そうしたことから、従来型の制御に戻しているという。ECU変更の狙いはやはり燃費がメインだろう。もちろん、BoPでターボ過給圧を下げられていることもあり、制御変更をして解決していこうというトライだったのだが、本番では実績のあるECUの信頼性は高いという判断だ。

タイヤに関してはダンロップからの提案もあり、岡山のコースにマッチするタイヤを探す。が、今回はあまり迷うことなくすんなり決定できたと山内英輝は話す。

公式練習全体7位。今季のBoPにより4%の出力ダウンがあり、ある意味想定したポジションだったのかもしれない。この順位あたりから決勝でどこまで前に行けるのか?というのが今シーズンのBRZ GT300の戦い方になるだろうと想像した。

スーパーラップのコースレコード

Q1予選は井口卓人が走る。井口も「まずはQ1を突破するのが役目です」とやや自虐的に笑顔で話す。実は昨年、井口はQ1敗退を経験しているからだ。しかし今回の予選ではA組5番手でQ1を突破した。午前中の公式練習の結果からみれば妥当な順位かもしれない。

その後GT300のB組予選があり、さらにGT500のQ1予選があった。じつはこの2つのQ1予選によって「路面がデキる」状況に変わる。それは路面にラバーが乗りグリップが良くなる状況に変わることを意味する。多くのチームがQ2のほうがタイムが良くなる傾向にあるのはそのためだ。

BRZ GT300は前シーズン5回のポールポジションを獲得した山内英輝がQ2を走る。絶好調の山内はクリアラップを取るため、ピットアウトを遅らせ前車との距離を取る。山内の集中したときの顔つきは、まさに動物が獲物を見つけた時のあの顔だ。

山内はクリアラップの取れた3周目アタックに入る。セクター1、2、3でベストタイムを叩き出し1分24秒286というコースレコードをマークした。さらに山内は2ラップ目のアタックに入る。セクター1、2ではさらにタイムを縮めている。24秒を切るかもしれないという期待もあったが、セクター3でアタックを止めてしまった。

予選後山内は「セクター3で前に走るマシンがいたのと、リヤタイヤが滑ったので止めました」ということだった。応援する我々からは鬼気迫る2本目も見てみたい気持ちはあった。が、見事ポールポジションは獲得した。

もはやマシン性能を超えるアドレナリンの成せることなのか、物理を超えることはない自然の摂理か、理解不能にさせる山内のタイムアタックだった。

決勝

決勝は井口から山内というローテーションを選択。小澤総監督は「去年、このパターンは良い結果になることが多かったのでね。岡山はSCリスクが高いので井口は早めにピットにいれる予定で、ちょっとロングになるけど山内に頑張ってもらうことになります」

82周で競われる300kmレースだが、GT300は昨年78周でフィニッシュしている。GT300の39周目が分岐点になるが、どこで交代させるかはレース展開次第で幅が出る。

期待どおり井口はホールショットを決め、トップで周回を重ねる。フロントローの96号車は順位を落とし10号車との争いになるが、タイム差はなく、均等の距離感でラップを重ねていた。が、予選5位の56号車GT-Rが速い。井口のタイムは悪くなく上位陣の中でもコンマ数秒速いタイムなのだが、56号車はさらに速い。この一台だけが速いと言っていい。

GT500のラップダウンも無事にこなしトップを走るものの18周目あたりでは56号車のほうが0.5〜0.8秒も速い。気づけば2番手に浮上している。19周目に2.3秒あった差が、みるみるなくなり、23周目、わずか4周でその差はなくなりトップが入れ替わった。別次元のスピードと言って良い。

それでも井口のタイムは悪くなく、他のマシンが追いついてくることはなかった。34周を終えピットに入り山内に交代。今回はタイヤ4本交換が義務になっていたため、給油時間の差に注目を集めたが、なんとエンジンの再スタートができない不測の事態が起きた。

駆け寄るメカニックがドアを開け、何か作業してピットアウトするもののピットには1分ほど止まっていたことになる。さらに不運なのはコース復帰したときに中団グループの後ろでコース復帰したことだ。この時、ポジション15位。

追い抜きが難しい岡山のコースで、前車を抜くには相当な速度差がなければ不可能だ。56号車のようにストレートが速くラップタイムが速くなければ無理。BoPで抑えられたBRZ GT300のトップスピードは遅い。コーナーで山内が頑張るしかないのだ。予選の速さを期待するも燃料は満タンだし、セットアップも違う。苦しい状況だった。

予測不能

結局9位まで順位は戻したもののラップダウンでレースを終えることになった。再スタートに手間取ったことに関し、小澤総監督は「原因はまだわからないのですが、これまで出たことのない症状で、走行距離で交換しているパーツでもあるので、原因は戻ってから探ります」

一方で山内は「エンジンが再始動できなかった原因、対策はメカニックの人たちにお任せします。ですが、あのような集団に入ると何も武器を持っていないことがわかりました。追い抜きの難しいサーキットというのもありますが前に出られないです。出るための武器を何か持たないと、という感想ですね」

今季のマシンは予選一発の速さより、決勝レースで強いマシンにすることが開発の目標だった。が皮肉にも真逆な結果になってしまった。セットアップも予選と決勝で変更し、タイヤへの負荷を減らしながら、ラップタイムを落とさない仕様にする。

これは井口の予選、決勝を見ると56号車の異次元の速さには敵わないものの、ライバルとは十分互角に戦えるようにも見えた。もちろんドライバー、チームからすれば物足りず、さらなるボトムアップは必須と感じているだろうが、優位性がないようにするためのBoPを考慮すれば、苦しいながらもグッジョブではないだろうか。タラ・レバではあるがスムースに再始動できていれば3番手、4番手で戻れたことがタイムから想像できるのだから。

今回は期待する結果とはかけ離れたものの、マシンの開発ベクトルはうまくいっているように思える。今後の活躍に期待しよう。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>


The Mortor Weekly

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