2022年2月25日にSUBARU BRZ GT300マシンの22年モデルがシェイクダウンテストを行ない、シリーズチャンピオンの証、ゴールドのストライプが入った新デザインになって報道陣の前でお披露目された。
13年の経験を経てシリーズチャンピオンを獲得したSUBARU BRZ GT300は、ディンフェンディングチャンピオンとして今季を戦うことになるが、マシンは21年仕様をさらに進化させていた。これまで2年連続でシリーズチャンピオンを獲得したチームはなく、その高い壁に挑戦するためのニューマシンというわけだ。
チーム体制の変更とマシンの進化
小澤総監督からはまず、チーム体制の説明があり、ドライバーは引き続き井口卓人と山内英輝。監督にR&D SPORTの澤田氏が就任し、トラックエンジニアが井上氏になったことが報告された。そしてマシンの進化のポイントとしてエンジンECUの変更、空力の向上、シャシー性能の向上というポイントで改良しているという。
背景にはレース距離の一部変更が予想され、350km、500kmのレースがあること、BoPの変更も予想されることなどから、マシンの仕様変更にトライすることになったのだ。
BRZ GT300の特徴はコーナリングマシンだ。「曲線番長」と呼ばれるようにさらに磨きをかけていくと小澤総監督は話すが、一方で燃費に関しては課題があった。さらに予選は速いものの決勝レース後半では防御がつづく展開になってしまうという傾向もあった。
そこで22年仕様ではそうした課題に向き合い、解決に向けて仕様変更をしているのだ。そうした中、まずBoPにより重量ハンディやパワーダウンなどの措置でパワー/ウエイトレシオが厳しい状況になることを想定した対策を講じた。
P/Wレシオが悪化すればトップスピードは遅くなる。それをコーナリングスピードだけでラップタイプをカバーするには厳しく、直線の速さは空力で対策をする。つまり空気抵抗を減らす対策だが、空気抵抗が減るとダウンフォースも減りコーナリングの悪化にもつながることは過去の経験で十分わかっている。そのあたりを踏まえての空力ボディが今回お披露目された姿ということだ。
具体的にはフロントフェンダーのデザイン変更で、エアの抜け、整流効果がよくなるように、大きくえぐられたデザインになっている。タイヤハウス内の乱流でリフト効果があったものを、抜けを良くすることで本来のダウンフォースがかかり、整流された流れはリヤウイングでさらにダウンフォースへつながるというデザインだ。
EJ20型をさらに改良
エンジンECUの変更は、燃費やP/Wレシオ変更に対応するための施策だ。従来マクラーレン製ECUをMoTeC製のロガー、ディスプレイで表示している方式で、SUBARUがWRC参戦時代に得た知見をベースにスーパーGT用にモディファイして使用していた。
制御プログラムの考え方としては、最新のECUにすることで演算速度の向上と精度が大幅に改善されるという。例えとしてウインドウズXPからウインドウズXになるように、と小澤総監督は説明する。
そのハイスペックECUの制御内容だが、従来はドライバーのアクセル開度に応じた燃料噴射を行なっていたが、新しい制御ではアクセルの踏み込む量、踏み込む速度もセンシングし、必要なトルクを即座に判定し燃料吐出量を決定する考え方だ。そうすることでアクセル操作をするたびに、僅かながらの省燃費が可能になり、周回を重ねることによって燃費改善へとつながり、ピットウインドウの幅が広がることに繋がるわけだ。
ちなみに出力に関してはBoPの制限があり、過給圧は決められている。そのため、出力の絶対値を自由に設定はできないものの、アンチラグのレスポンスやさきほどの要求トルク呼応型とすることでドライバビリティは改善できることになる。
決勝で強いマシンへ
シャシー性能の向上では、車両全体でタイヤとのマッチングを見ながらのセットアップになるが、新たに就任したトラックエンジニアの井上氏と共に、マッチングを探ることになる。
SUBARU/STIではシャシーの動き、タイヤへの荷重変化などの計測データをもとに、さらなるコーナリングマシンへと進化させる手がかりは得ているというので期待したい。
また、小澤総監督は「今季、予選で一発の速さはなかなか出せないかもしれないけど、決勝レースで強いことを見せていきたい」と抱負を語っている。
この日のシェイクダウンテストではエンジンECUのマッチングと時間があれば空力パーツのテストをしたいと、走行前に小澤総監督は話していたが、1時間の走行テストではECUのマッチングテストに終始していた様子だった。
この先はダンロップタイヤの進化にも期待しつつ、3月には岡山と富士スピードウェイで公式テストがある。その時点でどこまでセットアップが煮詰まっているのか、開幕は4月16日、17日の岡山国際サーキットの開幕戦に期待したい。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>