全日本ラリー第9戦 ラリー北海道2021 GRヤリス勝田優勝 SUBARU WRX STI 新井大輝が2位、鎌田卓麻が3位獲得

北海道十勝地方で9月11〜12日、全日本ラリー選手権第9戦「ラリー北海道」が昨年に続いて無観客で開催され、SUBARU WRX STIの新井大輝/小坂典嵩(ADVAN KYB AMS STI)が2位、3位にも鎌田卓麻/松本優一(WinmaX DL シムス WRX STI)が入って、SUBARU WRX STI勢はダブル表彰台を獲得した。優勝は、トヨタGRヤリスの勝田範彦/木村祐介(GR YARIS GR4 Rally)。もう1台のSUBARU WRX STIを駆る新井敏弘/田中直哉(富士スバルAMS WRX STI)は、無念のリタイアに終わっている。

トヨタGRヤリスの勝田範彦/木村祐介がグラベル2連勝

全日本ラリー選手権は、7月の第7戦「ARKラリー・カムイ2021」ののち8月20〜22日に秋田県横手市で第8戦の「横手ラリー2021」を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により開催中止となり、シーズン最後のグラベル戦として第9戦「ラリー北海道」を迎えることとなった。

今回の「ラリー北海道」は初開催から20年、2021年は20回目の記念大会となる。北海道に出されている緊急事態宣言の影響で、今年も昨年の大会と同様に無観客開催が決定。

例年なら全日本ラリー選手権随一の規模を誇るラリールートも大幅に短縮され、レグ1がSS1〜SS6の63.40km、レグ2がSS9〜SS11の22.64km(SS7〜8はキャンセル)と、可能な限りコンパクトにしての開催となった。ただし、そこはかつてラリージャパンとして世界の強豪に試練を与えた十勝独特の高速グラベルステージである。今年もひと筋縄ではいかないタフな展開が競技者たちを待ち構えていた。

新井大輝の復帰

SUBARU WRX STI勢は、海外ラリー参戦のため欠場していた新井大輝が今回から復帰。チームメイトで父親の新井敏弘、鎌田を加えて開幕戦「新城ラリー2021」以来、久しぶりの3台体制となる。結果的に前戦となった「ARKラリー・カムイ2021」では新井敏弘、鎌田がともに優勝争いを展開、グラベル・ラリーでのSUBARU WRX STI健在を見せつけた。やはりグラベルの「横手ラリー2021」が開催中止となったことで、ベスト6戦で争われる全日本選手権でのWRX STI勢の逆転タイトルの目は厳しくなったが、勝手知ったる十勝の高速グラベルなら、GRヤリスとシュコダ・ファビアR5という2大強敵にも十分な戦いを挑めるはずだ。

開幕戦の新城ラリー以来復帰のディフェンディングチャンピオン新井大輝

厚い雲に覆われた9月11日の朝、ラリーはその期待通りの幕開けとなった。リエゾンを111km走って、陸別サーキットのサービスを中心とした構成のこの日のレグ1、まずオープニングのSS1、YAM WAKKKA SHORT 1(14.54km)を制したのは新井大輝。0.2秒の僅差で2番手タイムに新井敏弘がつけ、まずはWRX STI勢が主導権を握る。3番手タイムの勝田こそ2.6秒差で食らいついているが、4番手の選手権ポイントリーダー、福永修(アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア)以下はやや離されている状況だ。

続くSS2、4.63kmのRIKUBETSU LONG 1はテクニカルかつストップ&ゴーの多いステージ。ここでは純レーシングカーの機動力を活かして、予想どおりにファビアR5の柳澤宏至(ADVAN CUSCO FABIA R5)と福永が1-2タイム。新井親子は7、8番手タイムと遅れをとったものの、SS1のアドバンテージを活かして1-2体制のまま陸別のサービスに入ってきた。

首位の新井大輝は、「海外で乗っているクルマとは違うので、最初は少し戸惑うこともありましたが、アジャストできました。まだ余力はあるので、ライバルがタイムを上げてきても、上がったなりに、ペースを合わせて行きます」と頼もしい。

豪快に攻める新井大輝はSS2までトップ

0.9秒差の2番手につける新井敏弘も、「(スピード域が)速くて難しいステージほど、こっちに歩がある。大輝と勝田がライバルになる」と優勝争いへの自信を覗かせる。息子とともに新井敏弘が警戒する勝田はSS1、SS2ともに好タイムを並べて首位とは1.8秒差の3番手。

ラリー・カムイではラリー後半にかけてペースを上げて新井敏弘と鎌田を振り切っただけに、やはり不気味な存在だ。その勝田から4.5秒遅れの4番手は福永。鎌田はそこからさらに4.5秒差の5番手と出遅れ、「テストも好調で、ステージを走ったフィーリングも良かったのですが、タイムがイマイチ」と怪訝顔。午後のステージに向けてはセットアップを大幅変更して臨む。

トラブル発生

この最初のセクションでは、勝田のチームメイトの眞貝知志/箕作裕子(GR YARIS GR4 Rally)がギヤボックストラブルでリタイアとなっている。早くもその牙を剥き始めた過酷な十勝の高速グラベルは、午後のセクションではさらに次々と“犠牲者”を生むことに。そして、最初にトラブルに見舞われたのはなんと首位の新井大輝だった。

「SS3からエンジンがおかしかった。SS4になると3気筒になっているような感じで、回転が下がるとエンストしてしまう。なんとかフィニッシュしたのですが、今度は給油ポイントで止まってしまいました」

一旦はリタイアも覚悟したという新井大輝は、このピンチを押しがけでクリアしたものの、この状態では好タイムは望めるはずもなく、SS4終了時点で首位から陥落してしまった。

代わってSS4で首位に立ったのは、ここでベストタイムを刻んだ新井敏弘だった。だが、続くRIKUBETSU LONGの再走となるSS5で、息子以上のトラブルに襲われる。

「ステージをスタートして3つ目のコーナーくらいで異変を感じた。最初はパワーがなくなり、ターボが壊れたのかな?という感じだった。それから煙が出てきてしばらくして前が見えなくなった」

ステージ後半の陸別サーキット区間で止まった新井敏弘のWRX STIはその後エンジンルームから出火。車載の消火器だけでは火を止めることはできず、異常事態に停止した複数の後続のラリーカーからも消火器を借りてなんとか鎮火させた。

SS5はここで中断。後続のクルマは消火作業を終えた現場を徐行しながらゆっくりと通過し、このステージを新井敏弘の前にフィニッシュした4台のうち最も遅いタイムだった新井大輝のタイムが与えられることになった。

「SS4はベストタイムだったし、ペースは上がっていて、クルマの調子は良かったのに……。どこもぶつけていないし。ちょっと原因が分からない」と、リタイアとなった新井敏弘は悔しさを滲ませた。

トラブルを抱えつつも優勝したGRヤリスの勝田範彦/木村祐介

この午後は、GRヤリス勢もトラブルとは無縁ではいられなかった。SS4では奴田原文雄/東駿吾(ADVAN KTMS GRヤリス)が、エンジン制御系のトラブルに見舞われて大きくタイムロス。同じSS4ではSS3でこのラリー初のベストタイムを刻んだばかりの勝田も、左リヤダンパーにトラブルを抱えてしまう。

しかし、ここから勝田のGRヤリスは脅威の粘り腰を見せた。正常に作動するダンパーが3本しかない状態ながら、レグ1最後となるSS6 NUPRIPAKE 2(12.53km)でベストタイムをマークし、首位で北愛国のサービスパークに戻ってきたのだ。

「バンピーなそれまでのステージに比べて、NUPRIPAKEは路面がスムーズだったので助かりました。右コーナーは抑えて、左コーナーはいつもどおりいきました。途中、高速コーナーでリヤが出てしまって、そこはヒヤッとしました。ベストタイムを取れたのには驚きました」とホッとした表情を見せる勝田だが、より驚いたのはライバルたちだった。

「ショックが一本なくてもベスト、あり得ない」(新井敏弘)、「あの状態であのタイムは異次元」(鎌田)と異口同音、GRヤリスのパフォーマンスに脱帽するしかなかった。

地元で奮闘するもGRヤリスのタイムには届かない鎌田卓麻/松本優一組

レグ1を終え首位・勝田と、エンジン不調を抱えながら序盤の貯金で2番手の座をキープしてなんとかサービスに戻ってきた新井大輝との差は9.2秒。日曜日のレグ2はわずか3SS、計22.64kmしかなく、エンジンの不調を抱えていては逆転勝利は厳しい状況だ。鎌田は勝田から20.6秒も遅れた3番手。「自分のできることはしている感じですが、これ以上のタイムは出ない」と、午前中と変わらず不完全燃焼の様子だが、4番手以下のファビアR5勢には差をつけており、レグ2はペースキープでのフィニッシュを目指す。

ラリー最終日となる日曜日のレグ2は小雨模様。しかし、土曜日夕方のサービスで壊れたダンパーを交換し、完調となったGRヤリスと勝田は磐石だった。本人が「あそこは苦手なので不安」と語っていたSS9 OTOFUKE RIVERSE 1でベストを刻むと、残り2SSは大量リードに守られながら慎重に走り切ってフィニッシュ。「ARKラリー・カムイ2021」に続く2連勝を飾った。

新井大輝は、2位を守り切った。エンジントラブルは完治せず、むしろ少しずつ悪くなっていったが、なんとか致命的なタイムロスを喫することなくフィニッシュまでWRX STIを運んだ。

「昨日はアイドリングはしていたのですが、今日はアイドリングもしなくなってしまった。SS9のスタート前の1車線しかない場所でエンジンが止まってリタイアかなと思ったのですが、スタートの2分前にエンジンがかかりました。まったく自分でコントロールできないところで苦しんだラリーでしたが、2位で帰ってこられたのは良かったかな」と、安堵の表情を見せる新井大輝。

データを見つめ直し次戦での活躍に期待がかかるアライモータースポーツ

次戦は第10戦の「M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2021」となる予定で、「メンテナンス面も含めて、自分が海外に行っていた時にクルマにできていなかったことをしっかりと見直して、ゼロからやっていきたいと思います」とシーズン・クライマッスでの本領発揮を誓った。

3位は、最終的にトラブルを抱えた新井大輝を2.1秒差まで追い詰めた鎌田。こちらは「逆転できなかったのは残念でしたけど、やれることはやりました。良い戦いでした。今まで以上にライバルが速くて、こちらのクルマもガツンと戦闘力を上げないとダメだと分かった。来年に向けた新たな課題も見つかって良かったです」と全力を出し切った清々しい表情だった。

GRヤリスの強さがジワリ。WRX STIはどこまで巻き返せるか

全日本ラリー選手権は残すところあと2戦。いずれも今回はやや不発に終わったファビアR5勢の圧倒的な速さが予想されるターマックでの戦いとなるため、SUBARU WRX STI勢にとっては厳しい戦いとなりそうだが、何が起きるか走ってみないと分からないのがラリーだ。まずは今回出たトラブルの徹底的な原因究明と対策を万全にして、一矢報いる展開に期待したい。


The Mortor Weekly

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