スーパーGT第5戦 SUGO SUBARU BRZ GT300 待望の今季初優勝

2021年スーパーGT第5戦SUGO GT300kmレースで、ついにSUBARU BRZ GT300が優勝した。新型となったBRZ GT300はここまでの4レース中、2回のポールポジションを獲得しながら、優勝には手が届かないでいた。そして迎えた第5戦ではポールポジションも獲得し、初優勝することができたのだ。

実は鈴鹿と並んで相性のいいSUGOのコース。だから是が非でも優勝したい場所だ。2018年は公式練習から決勝まで一度も首位を明け渡すことのない完全優勝をしている。そして翌年19年は山内英輝がコースレコードを塗り替えるスピードを見せポール獲得という過去がある。

それだけに、新型となったBRZ GT300でも優勝が欲しい場所だし、またシーズン折返しとなるこのレース次第でチャンピオンシップに残れるかどうかという重要なレースだ。反面、鈴鹿での悔しい展開は記憶にも新しく、速さだけでは勝てないことをずっしりと感じているSUGOだった。

完全優勝の再現

チームはいつもどおりハードタイプとソフトタイプのタイヤを持ち込んでいる。タイヤは路面温度や路面状況の変化を強く受けデリケートな存在になっている。タイヤへの攻撃性は各サーキットで異なり、当然タイヤにかかる荷重も異なってくる。そしてレース当日の気温を予想しながら持ち込むタイヤを決めているわけだ。だからパドックでは「タイヤを外した」とか「ハマった」といった会話をよく耳にする。

チームはハードタイプからマッチングを見ていく。ドライバーはいつものように山内英輝がドライブし、セットアップを進めていく。ダウンフォースやアンダーステア、オーバーステア、そしてリヤの接地感などの確認をしながら計測。2周〜3周計測をしてはピットに入り微調整を続ける。

シーズン当初から言われているようにマシンのベースがしっかりしているため、大幅な変更は不要で微調整でセットアップができるというのが新型BRZ GT300の進化したポイントだ。

タイムは6番手〜10番手のタイムで、まずまずという手応え。次にソフトタイプへ変更しソフト用のセットを確認する。すると山内は全体トップタイムとなる1分18秒217を計測した。ハードタイプのベストより1秒弱速いという。

タイムも出てフィーリングも良ければ今回のSUGO用タイヤはソフトで決まりだ。続いて井口卓人に交代しフィーリングチェック。そして燃料も搭載し決勝を想定した重たい状態でのロングランテストを始めていた。

井口は20ラップほど連続走行をし、タイムは1分21秒台中盤で周回していた。最後は他のマシンのクラッシュにより赤旗中断で公式練習は終ったが、井口が装着していたソフトタイプのタイヤでも、山内の走行周回と合わせれば30ラップ程度は同タイムで走行できることがわかったと小澤正弘総監督は言う。

ポールポジションが指定席

土曜日の午後に行なわれる予選は、B組で井口卓人がアタックをする。GT300クラスには28台のエントリーがあり、Q1予選を14台ずつのA組、B組に分け上位8位までがQ2に進出するノックアウト方式だ。

予選時間は10分。計測は2ラップが限界だ。井口は3周をウオームアップに使い4周目、5周目にアタックをする。すると井口は午前中のトップタイムだった山内のタイムを上回る1分18秒069を叩き出しB組2位でQ1を通過した。

「ソフトタイヤでアタックしましたけど、丁寧にウオームアップしました。最初のアタックでいい手応えがあったのですが、トラフィックがあって若干ロスがあったかもしれません。だけど気持ちよく走れました」とアタック後に井口は話す。アタックしていないマシンによる気流の乱れなど目に見えない影響もあるのだろう、実際0秒017秒ほど2本目のアタックのほうがタイムが良かった。

続く山内も同様にソフトタイプのタイヤでポールを狙う。いつものように井口から山内へセット変更のアイディアを伝えてから送り出す。山内もウオームアップを丁寧に行ない3ラップ目からアタックを開始した。山内は狙いどおりに1分17秒479を計測し予選トップに立った。結局、このタイムを上回るドライバーは現れず、5戦中3回目となるポールポジションを確定させた。ポールポジション獲得確率60%という近年のスーパーGTでは非常に珍しいことだ。

ちなみにこのレースにBRZ GT300は、サクセスウエイト54kgとBoP50kgは搭載しているので、合計104kgの重量増で走行していたのだ。

予選結果からタイヤ銘柄を見ると61号車BRZがダンロップ、2位18号車NSXがヨコハマ、3位60号車スープラがダンロップ、4位88号車ランボルギーニがヨコハマ、そして5位55号車NSXがブリヂストンという結果になり、1社が独占するという結果にはならなかった。

山内は「みんなで獲れたポールポジションです。鈴鹿での悔しさが残っているのでリベンジしたいです。ここに来る前にオートポリスでタイヤテストがあって、そこでマシンを改良してもらっています。その方向性がよかったのだと思います」

タイヤの難しさ

前戦の鈴鹿では、得意とするコースだけに悔しさが残る。予選でポールを獲得しながらもスタート直後からタイヤが合わない。山内が得意とするスタートダッシュができずにズルズルと後退した。井口で巻き返しを狙うためにリヤ2本交換でコース復帰させるも、前後バランスが悪くコントロールするのに精一杯という状況になってしまった。

これは、路面にラバーがのって、いわゆる『できてくる』とマシンのコンディションも変わってしまうようだ。井口は「ハマれば速いんですけど、その収まる範囲が狭くてピーキーなんです。たぶんマシンもタイヤもデリケートな部分があって、噛み合わなくなっていく感じですね」と。

山内は「そうした課題を解消するため、ダンロップさんも一生懸命開発してくれていますが、僕たちもマシン側でできることをやろうというのがオートポリスでのテストでした。残念ながら雨でのテストでしたけど、逆に顕著な症状がでたので分かりやすく、その結果、対処する方向性も決まったんだと思います」と話す。

新型BRZ GT300は単独のテストでは速さがあるのが証明できている。それがポール獲得数に現れているが、レースになるとラバーがのってコンディションが変わる。その路面変化に対して追従するようにマシンも変化してしまう、という意味だ。だからコントロールするのに精一杯になりタイムを上げていくことに繋がらないというのが決勝での課題というわけだ。

そしてポールを獲得した後のポールポジション会見で山内は、「明日のレース後も必ずここに戻ってきます!」と力強く語っていたのが印象的だった。その顔つきは、何か手応えを感じているのと予測しきれない変化に対する不安を持っているかのようだった。

悩む決勝戦略

翌日の決勝は夏を思わせるような快晴になった。予選は気温も路面温度も23度付近だったが決勝スタート時は気温29度、路面温度45度という状況。スタートタイヤはQ2予選で使用したタイヤが指定されている。BRZ GT300はQ1、Q2とも同じタイヤだったので選択の影響はないものの、路面温度が極端に違っていることに不安が残っている。

そのためチームはレース前に行われる20分間のウオームアップ走行後に悩むことになった。Q2タイヤで走行するのは規則なので、そのまま走るが路面にマッチするとは考えにくい。持ち込んだハードで後半攻めていくというシナリオがよぎる。そうなるとマシンのセットアップも変更せざるを得ない・・・。

小澤総監督は「スタートは井口で行きます。難しいコンディションですけど頑張ってもらってタイヤのヘタリ具合を確認しながらピットインのタイミングと次のスティントで使うタイヤを判断することにしました」と決勝直前に聞けた。それほど微妙な状況で判断を迷わす状況になっていたようだ。

メカニックもグリッドに整列しながらもリヤセクションを触っている。またフロントのサスペンションにもメカの手が入り、セットの変更をしている。チームスタッフの頭の中にはやはり鈴鹿での展開が残っているのだろう。

結局、いくら悩んでも「やってみないとわからない」というレースの難しさを感じながらスタートすることになったのだ。

井口の快走

久しぶりのスタートドライバーだという井口だが、見事にホールショットを決め後続を引き離す展開に持ち込んでいる。1周目を終えた時点で2位の18号車に1秒407の差をつけて戻ってきた。井口は順調に後続を引き離し14周目には7秒356にまでリードを広げていた。シナリオどおりの展開だ。

21周目に2位の18号車NSXを55号車のNSXが交わす。井口との差は5秒756と開いている。25周目付近からミニマム周回数に達したチームはピットに入り出すが、井口はタイムを大きく落とすことなく周回を続ける。タイムを見れば井口と55号車だけが21秒台で走行し、他のマシンは22秒台〜24秒台へとタイムが落ちていた。

55号車は徐々に井口との差を詰めるが、井口も大きくタイムは落ちない。0秒2〜3程度の差で55号車が追い上げてくる。だがチームはまだ井口で引っ張る。Q2で使ったソフトタイヤがいい仕事をしているようだ。この時点でも井口と55号車でトップタイムを塗り替えている状況であり、BRZ GT300のライバルは1台だけと言っていい。

37周目にようやく山内へと交代した。このときタイヤは同じソフトを選択したという。「井口が粘って長い距離を走ってくれて、しかもギャップを保ったままだったのでソフトでも行けると判断しました」と小澤総監督は話す。

ドライバー交代とタイヤ交換、給油というピット作業で順位を落とすというのがBRZ GT300の課題でもあった。が、このレースではトップでコースに復帰している。BRZ GT300より2周前にピットインした55号車は、山内がコース復帰した時点では最終コーナー付近であり、余裕をもってトップに復帰できていた。

研ぎ澄まされた山内の走り

そして山内に変わって5ラップ目の42周目には1分20秒721を刻んでいた。このタイムは他を圧倒する速さで2位の55号車をさらに引き離す展開に持ち込めている。

が、しかしその翌周最終コーナーでマシンの火災が発生しセーフティカーが導入された。これまで山内は2位に7秒495の差をつけていたが一気に吐き出すことになった。これまで何度も苦汁を飲まされたSCの導入だ。そしてチームスタッフにはSC解除後にタイヤのグリップが戻るのかという不安がよぎる。

これまでのレースでSCやFCYなど車速を制限されて周回するとタイヤの内圧が下がりグリップが回復しないことを数多く経験している。それだけにSC解除後が不安だ。SCは撤収作業に時間がかり7ラップもSCの先導で走行している。次第に不安が大きくなってくる。

がしかし、リスタート後山内はセクター1で自己ベストをマークする。その翌周にはセクター2でも自己ベストをマーク。山内がSC解除後からの3ラップで自己ベストをマークしており不安は一蹴された。あとは後続との戦いになる。

これはライブ配信のオンボードカメラでも捉えられている。鈴鹿ではステアリングの修正舵も多かった。が、今回のSUGOではステア操舵が滑らかに操作でき修正舵を必要としていないことが映し出されていた。

実はSC復帰後に2位の55号車がストレートでBRZ GT300の左リヤに接触するアクシデントが発生していた。BRZ GT300のリヤディフューザーは吹き飛ばされハンドリングが心配されたが、セクターごとに自己ベストを記録していたので、胸をなでおろす場面もあった。レースとは予期しないことの連続でもあるシーンだった。

山内はどんどんと2位を引き離していく。途中短時間にFCYが入ったものの再びグリップを失うことなくリスタートしている。山内は最後まで攻め続け1分21秒台を連発してチェッカーを受けた。完全優勝2回目の瞬間だ。

優勝記者会見でも井口は鈴鹿のリベンジが果たせたことは、スタッフ、タイヤメーカーのおかげであることの感謝を述べ、山内も同様にファンの後押しが力になったと言う。特に55号車が接近してきたときはスタンドで振られるフラッグに勇気づけられたと。さらに山内は「ここからはシリーズチャンピオンを目指していくのでさらなる応援をお願いします」という言葉で締めくくった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>


The Mortor Weekly

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