2021スーパーGT第3戦鈴鹿300km SUBARU BRZ GT300 10位フィニッシュ

2021年スーパーGT第3戦『FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE』が三重県鈴鹿サーキットで行なわれた。本来5月開催予定だったこのレースはコロナウイルス感染拡大の影響を受け、このタイミングに延期されていた。そして延べ1万8500人の観客を入れての開催となった。

さて、SUBARU BRZ GT300は今季、好不調の波があるようで、富士は絶好調でポールポジションからの2位、もてぎは不調で完走ポイントを取るにとどまった。そして迎えた鈴鹿だが、BRZ GT300とは相性が良く好成績が期待された。

相性のいい鈴鹿では幸先のいいスタートがきられた

相性のいい鈴鹿で好スタート

なぜ相性がいいのか。小澤正弘総監督に話を聞くと「エンジン本体がコンパクトで軽量、低重心、シンメトリカルといった要素を持っていて、コーナリング時の最初のアプローチで回頭性が高いということがあります。特にS字はもちろんのことデグナーの最初、130Rの入り、といった高速からのターンインで扱いやすいといったことに特徴があります」

市販エンジンEJ型2.0Lターボの改良型のため、出力ではやや見劣りするものの、そうした要素がプラスに働き、コーナリングマシンという異名を持ち好成績につなげているわけだ。

その言葉どおり土曜日の公式練習では終始トップタイムを記録している。相性の証明、コーナリングマシンの本領発揮だ。ドライバーの山内英輝は「走り出しからバランスが良かったですね。だから持ち込んだ2タイプのタイヤ選択に集中できたし、ドライ向けのセットはいつもより早い段階で決まったと思います」と語っていた。

SUBARU BRZ GT300の公式練習ルーチンでは、山内がセットアップをし、井口卓人が決勝を想定した燃料を搭載し重たい状態でのセット確認という手順ですすめることがここ数戦続いている。が、今回はセットアップの途中で井口もドライブしている。これについて山内は「早めにセットアップが決まったので、ドライのセットを井口選手にもテストしてもらいました。このあと雨予報もあるので、雨用も想定したセットアップも必要だと考えていました」

想定シナリオどおりの展開

迎えた予選。Q1はA組で井口がアタックする。井口は自己ベストをセクターごとに刻み1分58秒205でA組トップタイムをマーク。楽々Q1突破を果たした。そしてQ2では山内がポールポジションに向けてアタックする。

「Q1を終えた時点で井口選手から『ヤマちゃんならもっと曲がる方向にセットすればタイムは出ると思う』というアドバイスがありました。長年井口選手とはコンビを組んでますからお互いのドライビングスタイルや、好みはわかります。だから井口選手のアドバイスどおりにセット変更をしてもらいアタックしました。狙いは2ラップ計測の予定ですけど、最初のアタックでタイムを出すしかないと思ってました。曲がる感じはいいんですけど、タイヤに負荷がかかっている印象で、実際2本目は各セクションで0.1秒ずつ落ちていたのでタイヤの負荷を考えたことが正解でした」

Q1A組トップ、Q2もトップタイムでポールポジションを獲得して喜ぶドライバー井口と山内

こうして山内は1分57秒322で見事、期待通りにポールポジションを獲得した。小澤総監督は「思い描いたシナリオどおりに進んでいて嬉しいですね。鈴鹿は相性がいいですしデータの蓄積もあります。ポールポジションの優位性を活かして明日は勝ちたいですね。作戦は最初のスティントでリードを稼ぐ作戦ですけど、雨の予報もありますから、ピットインのタイミングが勝負かもしれません」

そしてシリーズチャンピオンを争うチーム上位チームはサクセスウエイトが効いたのか、上位進出できておらず下位に低迷している。そうしたことを踏まえ小澤総監督は決勝レースの展開でこんな予想もしていた。

「シリーズの上位チームは後方からのスタートなので、なにかしら仕掛けてくると思います。多少のギャンブルを覚悟でね。例えば1/3消化したらすぐに交代するとか、雨のタイミングもポイントにするかもしれません。ですので、我々のBRZ GT300は全体を見ながら、どのタイミングでピットインさせるかを判断していくことになります」

どんな戦略を考えているのか小澤正弘総監督は全体を眺めながら決めていく

期待されるポジション

決勝のスタートタイヤはQ2で使用したタイヤに決定した。もっともBRZ GT300はQ1、Q2とも同じソフトタイプを選択しており、このタイヤ指定で問題はなかった。

スタート前の井口と山内。決勝は厳しい展開になることを予感していたのだろうか

スタートドライバーはいつものように山内英輝だ。ポールから飛び出しリードを広げる作戦。午後2時40分300kmレースがローリングスタートで始まった。

山内は期待どおりにホールショットを決め、トップで1コーナーを抜けていく。9号車のフェラーリGT3と244号車のスープラがしがみついてくるものの、4位以下には徐々にリードをつけていく。シナリオどおりにレースが始まった。

5周目。GT500のNSXがシケインでクラッシュしFCYとなった。今季から導入されているFCYにより山内は2番手のスープラに1.5秒程度のリードをキープしたまま周回している。が、シケインでのクラッシュがスポンジバリアの火災へとつながってしまいFCYからSCへと変更された。SC導入により、山内のリードは消されてしまう。

ホールショットを決めトップで1コーナーを抜けるSUBARU BRZ GT300

問題はそのリードが消されたことよりも、タイヤのパフォーマンスが戻ってこないことが重要だった。11周目にリスタートとなりレース再開したが、山内のペースは上がらない。「リヤのグリップがなくなって全然走れなくなりました。多分内圧が下って熱ダレなのか、なんなのかリヤがない状態でした」と山内は言う。

歯車が狂い始めた

そしてこのSCの間にピットオープンがあり、シリーズを争う52号車のスープラがピットインする。他に数台のピットインもあり、タイヤ交換だけ済ませてSCの隊列に戻っていた。これはまだレースが1/3を消化していないためドライバー交代はできず、タイヤだけ交換し次のピットインで給油とドライバー交代だけにして、ストップ時間を稼ぐ作戦だ。SC先導中であれば、タイヤ交換しても隊列の最後尾には戻れるということを狙っているのだ。

そしてBRZ GT300はリヤタイヤに苦しめられながら首位をキープするものの13周目に244号車に抜かれ9号車にも抜かれてしまう。チームはすぐにでもタイヤ交換したいが、1/3を消化するまでの我慢になる。が、そのうち山内のタイムが少し戻ってきた。リヤタイヤのグリップが回復したことが想像できるが、手負い状態であることには間違いない。

チームは20周目にピットに入れ井口へ交代しリヤタイヤのみ交換して送り出す。「ピットアウトしたらアンダーが強くて全然曲がらなかったです。リヤタイヤは予選で使ったユーズドで、フロントは無交換だったからちょうどいいバランスだと思ったんですけど、熱の入り方の違いなのか曲がらないマシンになってました」と井口は後に語っている。

思うように走れないBRZ GT300。苦しい展開が続く

井口は掲示上16位でコース復帰しているが、ピットインしていないマシンも多く、実質2番手で戻れていたようだ。これはピットでのロスが課題だったチームにとっては成果のあるピットワークだったに違いない。だが、アンダーステアに苦しむ井口のタイムは厳しく、後続がどんどん迫ってくる。トップから1秒半ほど遅いタイムしか出ないBRZ GT300は苦しい。

次第に追いつくマシンに抜かれ、順位を下げていく。マシンは一向にグリップが戻ってこない。前後バランスの崩れた状態での走行だ。全車がピットインを終えた頃には井口の順位は6位にまでポジションを落としていた。

さらに苦しい状態はつづき、トップは2分4秒台後半で走行する中、井口は2分5秒中盤までしか伸びない。37周目まで6位をキープしていたものの、終盤38周目に7位、47周目8位、48周目9位、周回を重ねるごとに順位を落とす。最後の3ラップはフロントタイヤのグリップまでもが無くなったという。井口はポジシヨン10位でフィニッシュとなった。

ステアリングを叩き、へルメットを脱ぎながら言葉にならない雄叫びを上げる井口。温厚でいつもにこやかな井口とは一変していた。悔しさのはけ口を探すように足早に歩き、顔は真っ赤になり、声を出す。

小澤総監督は「コメントしづらいレースですけど、タイヤがタレてきたときは、サクセスウエイトの影響がよりタイヤに負荷を掛けていたと思います。この先はSUGO、オートポリスと得意のサーキットが残っていますので、粘り強くやっていきます」

懐の深さが欲しい

BRZ GT300は、市販車用2.0Lターボエンジン(EJ20型)をレース用に仕上げ、大排気量のGT3、GT300勢と戦うために様々なアイディアを盛り込んでいる。ギリギリのところでいつも戦っている印象だ。決してGT3に余裕があるということではなく、BRZにはタイトロープな緊張感がある印象だ。

パワートレーン、シャシー、補機類、タイヤ、戦略、アクシデントなど、レースではすべてが噛み合わないと結果に結びつかない。が、すべてを完璧にすることもまた難しい。何かの歯車が狂った時に寛容できるキャパシティに期待する結果だと感じた。

幸いにも上位チームもポイントを取りそこねたところが多く、SUBARU BRZ GT300のランキングは10位。一度の優勝で首位に立てる位置には辛うじて残った。ギャンブルで上位進出を狙うチームも成功したところはなく、サクセスウエイトの軽いチームが上位フィニッシュしている。しかし56号車のGT-Rのように重くても結果の出るチームもあるわけで、それは寛容さを持っているということだろう。

緊張感のある中、レースクイーンの笑顔には癒やされる

結果としてはダンロップ勢の中でトップ成績だ。悪くない。ヨコハマタイヤが上位を占めた。ブリヂストンが有利と言われていながら、各社レベルアップをしてきている結果だ。冷静に考えればこうしたこともレースであり、サクセスウエイトやBoP、燃料リストリスターなどルールも混戦を演出するいい仕事をしているという見方もできよう。

だが、そうしたBRZ GT300にとっての「ハンデ」を押しのけ、常に上位で競って欲しいし、シリーズチャンピオンも獲得して欲しいというのが多くのファン心理だろう。次戦のSUGOでの頂点を期待したい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>


The Mortor Weekly

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