スーパーGT2021岡山国際サーキット SUBARU BRZ GT300 不完全燃焼15位

スーパーGT2021シーズンが開幕した。SUBARU BRZ GT300はお伝えしているように新型マシンを投入してきた。土曜の公式練習では全体トップのタイムも計測し期待は大きく膨らんだ。だが、まさかのQ1敗退、19位のポジションからスタートし、順位を上げるものの15位でのフィニッシュとなった。

SUBARU/STI R&D SPORTのチーム集合。新型BRZを投入

開幕戦の背景

GTAから指示があったBoP(性能調整)は、岡山国際サーキットではマシンの性能アップに伴い、トップスピードもラップタイムも速く、安全性の観点から全体にラップタイムを落とすことが必要という判断があった。そのため、GT500クラスは燃料リストリクターの装着が義務付けられ、GT300クラスにはウエイトを搭載する指示があった。

車両規定の最低重量1150kgで製造したBRZ GT300にはBoP+50kg、特別ハンデ+35kg搭載がこの岡山に限り指示された。そしてレギュレーションでは燃料タンクが100Lから120Lへと搭載量が増やされている。また、この岡山では持ち込めるタイヤセット数が通常の7セットから6セットへと減らす処置も取られていた。

実はこうした背景がジワリジワリと影響していた。もちろん、GT300クラス共通の規則ではあるが、及ぼす影響に差があることをチームは実感していた。

土曜日

午前に行なわれた公式練習では、マシンのセットアップとタイヤ選択をする。ドライバーは山内英輝が担当し、2ラップ計測してはピットインを繰り返す。都度、マシン、タイヤのチェックし煮詰めていく。

走り出してすぐに山内は「乗りやすい」と感じたという。小澤総監督によれば富士でのテストで煮詰めきれなかったジオメトリーがあり、その対策をして岡山へ持ってきたということで、対策がバッチリ決まったわけだ。その結果はすぐに現れ、1分25秒669で公式練習全体トップタイムを記録した。またタイヤ選択でも6セットに限定されたため、ほぼ2択状態でもあり早めに決断ができていた。

そして迎えた午後の予選。Q1の井口はハードを選択して突破を目指し、Q2では山内がソフトを履いてポールを狙う作戦だった。しかし、予定が狂った。井口のタイムはQ1突破まで0.192秒届かずQ1敗退となってしまった。

予選結果は19番手スタートで確定した。そして決勝タイヤはQ2で使用したタイヤをGTAは指示。Q1敗退組はQ1で使用したタイヤを使うことになる。おそらく上位はソフトタイプを装着するマシンが多くなり、BRZ GT300はハードでのスタートとなる。もちろん、燃料も多く搭載するため山内のジャンプアップは厳しいものになった。

日曜日

決勝前ウォームアップ走行では、決勝で使うタイヤは温存し、使用量の少なかったソフトで走行し、ここでも全体トップタイムを記録した。ということは、BRZ GT300は85kgを搭載していても、ある程度の速さはあると見ていい。だから、19番手という順位であっても、ポイント圏内でのフィニッシュはできるのではないか? という期待を多くのファンが持ったのではないだろうか。

レースクイーン「BREEZ」もサーキットに戻ってきた!

そして期待どおりに山内はオープニングラップで1台をパス、続く2周目にも1台を抜き期待に応えた。しかし、好調の山内でできる限り引張る作戦を取っているため、燃料も多く重量が効いている。そこは同じ条件のように見えるが、レース後山内は、「85kgの重量は加速で効いてますね。大排気量のGT3を追い詰めても低速コーナーからの加速で離されてしまいます」と。だから前を走るGT3勢を追い抜くのは至難の業だったわけだ。

上位チームはソフトでどんどん逃げる展開。追いかける山内には厳しい展開だ。20周終えた時点でトップとは17秒差まで広がっている。そして山内からは「中団グループの中にいるとダウンフォースが抜けてフロントが軽くなることがわかりました」と話す。新型BRZ GT300はダウンフォースを多く発生する空力デザインでまとめてある。CFD解析でも実走行でもそれは証明できている。だが、前走車のタービュランスの影響の大きさは、山内にとってBRZでは初めて体験する空力特性だったようだ。

山内は16位まで順位を上げ、さらにピットインをするマシンも出始め、見かけ上は11位までポジションを上げていた。そして30周目にスピンしたマシンがありイエローが出た。すぐさま山内はピットに入るが、セーフティカーSCはすぐに入らなかった。SCがコースインした瞬間にピットロードはクローズされるのだが、SCがコースインするまでに時間があり、同様の作戦を取るチームでピットは溢れかえった。

甘くなかった

さらに井口に交代するも、ピットの混乱から隣のマシンに出口を塞がれてしまう不運もあった。そのため、井口がコース復帰したときは21位まで順位を落としていた。この時、井口が走らなければならない周回数は50周弱も残されている。燃料もフルに搭載し再びマシンは重くなる。

このあと右側にピット・インしたマシンに塞がれ出口を失う

36周目にリスタートが切られ、順位が整理されていく。ピットインしていなかったチームも続々とピットに入り、井口は19位、18位、17位へとポジションが変わる。井口に交代したあともトップは28秒台で快走をつづけているが、BRZ GT300は29秒台から30秒台しか出ない。

やはり重量が効いている。次第に燃料分は軽くなるもののタイヤ性能は落ちていく。なんとも歯がゆい状態の中、悪い状況になってもコンスタントにタイムを刻み、井口は15位でフィニッシュした。

井口が装着したタイヤは山内と同じハード。結果論になるがダンロップの担当者はソフトという選択肢があったと思うと話す。しかし、気温も上がり路面温度も上昇をしている中でソフトを選択するのは大きなギャンブルだった。

スタート前、集中する山内英輝(奥)と井口卓人(手前)

レース後井口は「今回のレースは、Q1通過をしないというレースの流れを壊してしまったことが大きく影響しました。そうした中で46周走れたのは収穫のひとつでポジティブに捉えていいと思っています。このタイヤは今年用に開発した新しいタイヤなので、いいデータになったと思います」と。

一方山内も「後方から追い上げて勝てるほどレースは甘くないし、それで勝てるんだったら予選は必要ないですからね。やっぱりスタートで前にいないと厳しいです」とコメントしている。

公式練習やウォームアップで見せる速さに期待し、山内のスタートダッシュやアグレッシブな走り、井口のコンディションが落ちた中でのマシンコントロールなど、勝てる要素が随所で見ることができ、「なんとかなる」という気持ちで自分は見ていた。ライブタイミングアプリを購入しているファンもきっと同じ期待をしていたに違いない。ところがジワジワと忍び寄る性能ダウンのための施策に、最後まで太刀打ちできないまま終了したというのが現実なのだ。

富士では速い仕様で挑むと話す小澤正弘総監督

レース後小澤総監督は「次の富士は岡山とは全く違う性格なので、『富士で速い』仕様にして挑みます」と力強く語ってくれた。岡山のように抜きどころが難しく、さらにストップ&ゴ−と言えるレイアウトでは、重量増がジワジワと効き不完全燃焼で終わった。

次戦の富士ではBoPによるウエイトはない。軽量マシンの特徴を活かしコーナリングマシンの異名を遺憾なく発揮できるレースに期待したい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>


The Mortor Weekly

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