SUBARUの新型ワゴン「レイバック」を一般公道で試乗してきた。レイバックはレヴォーグの派生モデルで、発売前に公道のワインディングを通行止めにした特設コースで試乗していたが、発売後、ようやく一般公道で試乗することができた。
関連記事:SUBARU レヴォーグ・レイバック スバル初の都会派SUVマーケットに投入 ヒット間違いなし【試乗記】
レイバックの開発の狙いは、都市型SUVという位置付けだ。既存のSUBARU車からはアウトドア臭や土、森、雪、山、そしてキャンプ、サマー&ウインタースポーツといったワードが似合うモデルが多い。そこで都市型でアーバンライクな匂いを持つモデルを投入し、新しいユーザーを取り込みたい狙いがある。
スペックをおさらいすると全長4770mm、全幅1820mm、全高1570mm。搭載するエンジンはCB18型の無鉛レギュラーガソリンを使用するターボエンジンで1800cc。177ps/300Nmの出力がありCVTのトランスミッションを持つ。装着タイヤはオールシーズンタイヤを標準装備しているSUVだ。WLTCモード燃費は13.6km/L、最小回転半径5.4mというスペックになっている。
大人感のある素敵な走行性能
発売後、こうして公道上を走り、都心部を走り、郊外を走ってみると、高層ビルが立ち並ぶ景色や高級ホテルの車寄せの風景よりは、やっぱり海や山の景色が似合うと感じてしまう。もっと大胆なデザインにトライしてもいいのかとも感じた。もっともSUBARU車への個人的なイメージは「デザインのらしさ」より「走りのらしさ」にこだわるメーカーという印象もある。
その走行性能や印象は都心部を含めた公道で走行しても、クローズドのワインディング時の印象と同じで、上質で乗り心地の良いものだった。都会を快適に走り、特にシートがソフトで座り心地が良く、サスペンションの働きも兼ねている印象だ。そのサスペンションもしなやかに動き、オールシーズンタイヤの乗り心地もよい。
重ねてタイヤの静かさもあり、まさに上質な乗り味で、大人感のある走りだ。軽めの操舵フィールも都市型をイメージさせるし、高級オーディオも含めてアーバンライクな走りの印象であり、走りにスバルらしさがある。
一方で、こうした上質なステーションワゴンタイプのSUVで都市型とするなら、エンジンの静粛性はもう少し高めたいところだ。周囲を見渡すとハイブリッドやPHEV、EVなどモーター走行をする車両が増えている中でピュアなエンジン車であってもEVに引けを取らない静粛性を求めたくなるものだ。実際プレミアムモデルでは巡航中に内燃機関の存在を感じさせないほど高い静粛性に変化しているわけで、量販モデルであっても要求したくなる。
気になる点ではCVTとアクセルの制御がいまひとつだった。クローズドのワインディングでは比較的攻めの走りをテストしていたが、公道で周囲のクルマに馴染むように走行すると、アクセルの早開きが気になり、CVTのレスポンスに不満を持った。アクセルの早開きは要求値よりも大きいトルクを発揮するプログラムで、イメージ以上の加速をする。CVTのレスポンスでは60km/h付近から加速させると一呼吸おいての加速体制に入るという具合。
しかしパドルシフトはCVTでありながらステップATのように減速するので気持ちよく、またマニュアルモードで走行すると、前述の応答遅れや早開きは気にならないので、制御プログラムをどう捉えるのか、エンジニアの味付け次第ということだろう。
それと、これは仕方のない部分ではあるが、着座位置がややアップライトに感じることだ。車両の大きさからすると乗用車ライクなドラポジをイメージするが、ペダルが手前にあり、そして正対できているか少し疑問もあった。
乗員の快適とは何か
そして最大の課題に感じたことは、コンフォート系の装備とエンタメ系の装備類が音や音声を発することが多いことだ。そこにはADAS系の運転支援装備も含まれるのだが、「音を消す」という操作をしないと100m走るごとに何かがしゃべる、アラート音を発しているのだ。
これはPL法(製造者責任)も影響していると思われるが、事故が起きた時に担当領域ではきちんとアラートを発していたとか、警告していたという証拠がほしい為ではないだろうか。気持ちもわかるが、前述のように、上質な乗り心地でゆったりと走れ、快適な走りもありハーマンカードンの高級オーディオを楽しんでいる時には邪魔になるのは間違いない。せっかくの走行の快適さを台無しにしているとも言えるからだ。
もちろん「操作音・作動音等を消す」ということをすればいいのだが、消せない音があるし、消音できない場合はシステムをオフにする必要もあり、特に安全装備系では本末転倒なことになる。この辺りは車両運動性能とは全く別ベクトルの「快適とは何か」という要素をたっぷりと仕込む必要があると感じた。
もちろん、サプライヤーから提供されるものではあるが、OE側でも承知して装備しているわけなので、考え直しということが必要に思う。これはレイバックに限らず国産OEには多々みられる現象で、欧州車ではそうした不満を感じたことはないので、一考していただきたいことだ。
SUBARUらしさを持ちながら、どこまで都市型とするのか、ダイナミック性能以外のクルマの性能をどう考えるのか、課題はいくつかあるように感じるものの、レイバックのしなやかな乗り味は既存のSUBARU車にはなく、唯一の存在なのは間違いない。