SUBARU レヴォーグの派生モデル「レイバック」に、正式発表前試乗をすることができたのでお伝えしよう。
レイバックは「ゆったりとした」とか「のんびりとした」といった意味で使われる英語のLaid backからネーミングされたモデルで、レヴォーグの派生モデルだ。
都会派SUVのマーケットに投入
エクステリアデザインはレヴォーグと同様のステーションワゴンスタイルだが、車高が高くフェンダーを黒くしたSUV系のデザインになっている。狙いは都市型SUVであり、スバルのブランドイメージにはなかった領域に位置付けしたモデルだ。
スバルのブランドイメージはアウトドアや自然の中に置くことが似合うイメージで、既存モデルの多くはそのイメージどおりに認知されていると思う。しかしSUVマーケットを見渡すと、必ずしもSUVだからといってアウトドアが好きというのでなく、アーバンライフな都会派イメージを求めるマーケットも大きいことがわかったという。SUVでありながら都会的なイメージを持つモデルの市場に、スバルはこのレイバックで参入するというわけだ。
試乗した場所は都会派といいつつ、ワインディング路でしかもアンジュレーションが強くアップダウンも激しい場所だった。じつは新潟県の佐渡島で大佐渡スカイラインという一般道路を通行止めにした特別なコースで試乗を行なった。もっとも道幅も狭く速度域は一般公道の速度域で、逆に実用領域だったため、より身近で役に立つ印象を得ることができたのだ。
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オールシーズンタイヤを装着
搭載するエンジンはレヴォーグと同じCB18型直噴ターボで177ps/5200-5600rpm、最大トルク300NmのAWD。これにリニアトロニックCVTを搭載している。高度1000m付近の試乗エリアで片道3.5kmを往復するルートを2回走行。合計14kmのワインディング走行で、上り、下りも体験できアンジュレーションのある路面での車両の動き、そしてNVHも体感することができた。
レイバックは開発の狙いどおり、ゆったりとした上質感のある走りと乗り心地が魅力だった。これまでのスバル車のイメージとは明らかに異なり、確かに都会派層を狙う商品であることを実感する。
試乗場所がワインディングということでハンドリングや車両の動きが強く印象に残ったが、ニュートラルに感じられるステアリング特性とストローク感のある乗り味で、スポーティさもありつつ高級な印象につながる静粛性もあった。
最低地上高はなんと200mmもあり、本格SUVと同等でありながら、車高の高さやアップライトなドラポジにもなっておらず、乗用車ライクな運転姿勢でドライブできるのだ。開発陣に話を聞けば、見かけだけ都市型SUVでは足元をみられるので、きちんとスバルらしく作り込んだという。主にクロストレックのサスペンションパーツを使いレイバック用にセットアップをしたという。
そのためタイヤはオールシーズンタイヤを履き、ダンパー特性を専用にチューニングし、特に低中速域でのしなやかな動きにこだわり、都会でマンホールや段差が連続するような路面でもゆったりと乗れるようにセットアップしているという。
コンディションの厳しいワインディングでもボディと足回りの一体感が常にあり、実用領域を超えた速度でもニュートラルなハンドリング特性は変わらず、ボディが遅れることも全くない気持ちよさがあった。
ライバルは不在
さて、こうした走行性能を持つレヴォーグ・レイバックは他社にライバル不在ではないかと思う。ステーションワゴンタイプのデザインでSUV、あるいはクロスオーバーというカタチをしたモデルが見当たらない。欧州車であればアウディのオールロードやメルセデス・ベンツのオールテレインあたりが同じ傾向のデザインだが、相手はプレミアムブランドであり、価格帯が2倍近く異なるモデルだ。強いて言えばフォルクスワーゲンのパサートオールトラックがあるが、それでも1.5倍ほどは価格帯が異なるし、ボディサイズのセグメントも異なっている。
都会派のSUVが欲しいがクロスカントリー系のデザインは好みではない、という人たちには待っていたモデルということができそうだ。これまで都会派SUVではトヨタのハリアーがヒットしているが、強力なライバルになるのではないかと予想している。
満足度の高いレヴォーグ・レイバック
レイバックのターゲット層は30〜60代のファミリー層で、走行安全や揺れや振動が少ない、運転が楽しい、視界性能が良いといった性能を求めるユーザーには最適なモデルになるだろう。その理由は、レヴォーグでは先進安全、ワゴン価値、そしてスポーティで訴求しているが、レイバックはこれに上質さを加えて提供価値としているからだ。
その上質さにはまずデザインコンセプトに「凛」と「包」というワードを使い、凛とした佇まいとおおらかに包み込むというコンセプトでありつつ、土の匂いがしないというニュアンスを持つ。だからどんなシーンにも似合うデザインで、リラックスでコンフォートであることを意識したデザインなのだ。色使いでもスバルとして、初めて空間を彩るアッシュとカッパーステッチの色使いをするなど、センスにこだわるインテリアにも力を入れている。
また上質さの中には静粛性もあると思うが、オールシーズンタイヤを装着しながらも高い静粛性を確保し、さらにハーマンカードンの高級オーディも全車標準装備という大判振る舞いもされている。
もちろん安全装備も充実でスバルの2030年死亡事故ゼロを目指すスバルとしては、アイサイトXの標準装備化、3つのカメラで視界を広く、そして15km/h以下になると自動でフロントビューの画面が切り替わるオートモードを設定している。
これらの充実した機能と高級装備を持ちながら価格帯は330万円から380万円程度までで提供され、かなりお値打ちの価格になっているのだ。
ワインディング以外はまだ走行していないが、見た目のスタイリッシュさや乗ってみての上質さ、静かさなど満足度は高く、装備類の充実にも目を見張るものがある。スバルはアイサイトなども含め先進装備の手の内化にも力を入れていることが、こうした車両価格に反映できるのではないかと感じた。唯一の懸念はパワートレインがガソリン以外選択できないことになるが、新社長の中期経営計画からも電動化が期待できるモデルなのではないだろうか。