スバル インプレッサ/XV試乗記 格段に向上した質感、走り

マニアック評価vol337

アイサイトver3の採用を始め、大幅改良されたXV(Dタイプ)
アイサイトver3の採用を始め、大幅改良されたXV(Dタイプ)

2011年に登場したスバル・インプレッサG4/スポーツスバルXVは、2014年11月に3度目の年次改良を受けDタイプになっている。このほどそのDタイプに試乗する機会が巡ってきた。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>

スバルにとってインプレッサは、新しいプラットフォームを開発すると真っ先にそれを採用する車種になっており、その後にフォレスターレガシィに展開される。そういう意味では、現行のインプレッサは、その後のフォレスター、レヴォーグ、WRXなどの先駆けとなるモデルだ。

またこのモデルは、グローバルCセグメントのど真ん中を狙うモデルだが、新たなクロスオーバーモデルのXVのベース車ともなっている。従来は同じインプレッサの名を冠していたWRXは、今は完全に独立したブランドとなっており、インプレッサのポジショニングが明確化されている。

さて、Dタイプは通常の年次改良より大幅な改良が加えられた。2.0Lエンジン各部のフリクション低減などにより燃費性能を向上(2WD:17.6km/L、AWD:16.2 km/L)させ、2.0L車にSI-DRIVE、アイサイトver3が採用されるなど、その変更点は広範囲にわたり、ビッグマイナーチェンジといえるものだ。

Dタイプ・インプレッサ、XV共通のシャシーの改良ポイント
Dタイプ・インプレッサ、XV共通のシャシーの改良ポイント

特に注目したいのは、シャシーの改良だ。もともとインプレッサはクラストップレベルの高剛性ボディを備えていたが、Dタイプからはこのボディと組み合わせるシャシーの向上を図った。ダンパー、スプリングのチューニングだけではなく、フロントクロスメンバーの補強、リヤではサスペンションリンクの剛性向上とコンプライアンスステアの改良により、サスペンション剛性、リヤの応答性を向上させていてる。さらにステアリングギヤ比は従来の16.0:1から14.5:1にクイック化されている。このクラスでは16~17.0:1のギヤ比が一般的だが、このクイックなギヤ比で果たしてどうなるのか…試乗でそれを確かめてみた。

■インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style
まず試乗したのは2014年11月に追加された特別仕様車のインプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Styleだ。ベースモデルに対してルーフレール、ガラスサンルーフ、ルーフエンドスポイラー、専用ホイールなどを装備しているのが特徴だ。

インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style
インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style

走り出してまず気付くのは、静粛さが格段に向上したことだ。初期型で気になったCVTの特に減速時のチェーンノイズも抑えられ、ロードノイズなども含め、キャビン内の静粛性は1クラス上のレベルになっていた。

スバル インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Styleインプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style

インプレッサではもうひとつ気に入ったのが乗り心地で、やはり初期モデルで気になったサスペンションのツッパリ感、動きの渋さがなくなり、素直でしっかりした乗り心地になっている。固すぎず柔らかすぎずで、路面を選ばず気持ちよく走ることができた。

インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Styleインプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style

今回のビッグマイナーチェンジでは、ボディは全く手を付けていないとのことだが、サスペンション系に大幅な改良を加え、クルマ全体の動きがしっかりした乗り心地なのだ。路面からの尖った入力や振動感を抑え、路面に凹凸があっても穏やかで、フラットな乗り心地になっている。こうした点が、クラスを超えた上質なフィーリングとして感じられる。

試乗車に装着されているタイヤ、ダンロップ SPスポーツ2050(OEM専用:205/50R17)は、ハイパフォーマンス系で、乗り心地とグリップ力のバランスもインプレッサにぴったり。スポーティな走りにも市街地の巡航でもよくマッチしていた。

インプレッサ SPORT 2.0i EyeSight Active Style
アイサイトver3の装備の他、インテリアのトリムの質感も向上している

欲を言えば、大幅に減ったとはいえエンジンの透過音や、エンジンの排気サウンドなどに気持ちよさが加われば言うことなしだと思った。これは今後の課題の一つだろう。

ステアリングギヤがクイック化されたハンドリングについてだが、ギヤ比を知らなければ、素直で爽快感のあるという印象だ。それはリヤタイヤのグリップと応答性を高めた結果、安定感が大幅に高まり、速い操舵でもきちんとクルマが反応する。その一方で、過敏な動きは一切ないので、高速走行での直進安定性と安心感のある気持ちよいハンドリングが両立している。

FB20型エンジンも改良され、燃費は16.2㎞/Lに
FB20型エンジンも改良され、燃費は16.2㎞/Lに
ダンロップSPスポーツ2050(205/50R17)
ダンロップSPスポーツ2050(205/50R17)

これはどれだけリヤのグリップ力と剛性の高さが重要かを実感させてくれる。過去のクルマではハイレシオのステアリングギヤ比を採用したクルマでは、一般ドライバーでは直進時にすら微小な蛇行が発生しやすかったから、まさに隔世の感がある。

一言で言えば、大人のクルマという感じで、長距離でも疲れない、飽きない、上質な走りをインプレッサは手に入れたと感じた。

スバル インプレッサ諸元表

スバル インプレッサ・シリーズ 価格表

■XV 2.0i-L EyeSight
インプレッサから発展したCセグメントのクロスオーバー、XVは日本でも好評だがアメリカ市場では大ヒット作となっており、未だに納車待ちの状態が続いているという。やはりこのサイズでクロスオーバーであることを、わかりやすく打ち出したことが成功したわけだ。

XV 2.0i-L EyeSight
XV 2.0i-L EyeSight

ただしXVはクロスオーバーとはいえ完全にスタイルだけの都市型にシフトさせたわけではなく、全グレードが4WDで、標準装着タイヤはヨコハマのブルーアースE70で、外径は680㎜と大きく、最低地上高は200㎜と、SUV的な基本要素を守っていることもこのクルマの特長といえる。

XV 2.0i-L EyeSightXV 2.0i-L EyeSight

このXVもインプレッサと同様に2014年11月に改良が加えられ、Dタイプとなった。エクステアリア、インテリアともにアップグレードされ、エンジン、シャシーの改良も加えられ、アイサイトver3も搭載されている。

XV 2.0i-L EyeSight

外観も、運転席に座ってのインテリアの質感もともに高められている。走り出すと、インプレッサと同様に静粛性や乗り心地の改善が実感できた。

XVは2013年6月に追加され、ハイブリッド・モデルはベースモデルより静粛性が高められていたが、今回は同様の防音対策を加えたので、より静かになったのも当然といえる。

インテリアの質感、静粛性が向上
インテリアの質感、静粛性が向上

シャシーのしっかりしたフィーリングに加え、XVは14:1という並みのスポーツカー以上にクイックなステアリングギヤ比を実現しているが、実際に走ってみると操舵がクイックという印象はなく、安定感や意のままに応答するクルマの動きで爽快感がある。これも体に感じられるリヤの確かなグリップ感があっての走りのフィーリングだろうし、ステアリング系の剛性の高さや操舵フィーリングの気持ち良さなども貢献していると思う。

VX 2.0i-Lの燃費は16.2km/Lに向上
VX 2.0i-Lの燃費は16.2km/Lに向上
ヨコハマ・ブルーアースE70(225/55R17)
ヨコハマ・ブルーアースE70(225/55R17)

インプレッサと異なる点は、地上高が高く着座位置が高めで、それだけ重心位置が上がっていることと、SUV用のヨコハマ・ブルーアース E70を装着していることだ。ブルーアース E70は純正装着専用のタイヤで、低転がり抵抗、快適性の両立を狙ったタイヤだが、さすがにインプレッサ用のタイヤと比べると路面の追従はやや固めに感じる。

XV 2.0i-L EyeSight

しかし、コーナリングでも重心の高さを感じることはほとんどなく、わずかにロールが大きめに感じる程度だ。だから、コーナリングでのサスペンションのストローク感や、じわっと適度にロールするフィーリングは、ドライバーにとって気持ちよく、扱いやすいという感覚だ。キャラクターでいえば、インプレッサが優等生、XVは少しおっとりした感じといえばわかりやすいかもしれない。

こうした点がクロスオーバーらしいともいえるが、通常の走り、使い勝手ではスポーティな味のあるハッチバックとして扱うことができると思う。

Dタイプに進化したインプレッサ、XVはいずれもアイサイトver3という独自の運転支援システムが設定されている。3モードの切り替えができるISドライブに進化しており、パドルシフト付きのリニアトロニックCVTは、一般的なCVTのフィーリングとは違ってリニアで小気味よい変速ができることなど、スバル車らしい特長もオーナーの心に響くはずだ。総合的に見ると、見える部分と走りの質感が高められており、商品価値が一段と高められたといえる。

スバルXV諸元表

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