【スバル】新型インプレッサは“スポーツ”と“G4”のダブルエースで新顧客層にアピール!

新型インプレッサの画像

新型インプレッサの日本仕様モデルが2011年11月30日に発表され、年末の12月20日から発売されることになった。型式名は1.6LがGP2/3、2.0LがGP6/7となる。4世代目となる新型は、改めてグローバルCセグメントとしてのポジションを強力に訴求すると同時に、日本におけるインプレッサの位置付けを大きく変えようとするモデルであることに注目したい。

この新型インプレッサは2011年4月のニューヨークオートショーにおいて、初めてアメリカ仕様がベールを脱いでいる。また同じ4月に開催された上海モーターショーでは、インプレッサのバリエーションのひとつVXのコンセプトモデルも披露され、9月のフランクフルトショーで市販モデルとしてワールドプレミアを行っている。そして東京モーターショーで新型インプレッサのセダンと5ドアが日本初登場となり、9カ月かけて世界発信を行った末にデビューするという経過をたどってきた。

新型レガシィの画像
↑5ドアハッチバックモデルはSPORT(スポーツ)のサブネームが与えられた

グレードアップが必要な理由にレガシィの大型化も…

インプレッサは1992年に初代が登場して以来、世界に通用するグローバルCセグメントとして認知されることを狙っていることに変化はないが、派生モデルのWRXのフラッグシップ化、同じくショートワゴンから5ドアハッチバックへの変更など、さまざまな状況に翻弄されてきた。しかし、現行モデルにおいてインプレッサ・シリーズからWRXモデルを切り分け、セダンと5ドアボディの両シリーズの定着に取り組むことになった。

アッパーCセグメントとDセグメントの真ん中に移行した現行レガシィは、旧型レガシィのユーザー層との間にギャップを生じる結果となったため、新型インプレッサは2、3世代前のレガシィ・ユーザー層、国内でも有数の良質な顧客層の受け皿として期待されているのである。このため、新型インプレッサはさまざまな面で大幅なグレードアップを求められたわけだ。

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新型インプレッサの開発コンセプトは「New Value Class」。既存の価値観、車格感、クラスやセグメントの常識を破る価値や質感の実現を目標としている。これは言い換えれば、ベスト・イン・クラス(クラストップ)を狙うことを意味するが、同時に従来のインプレッサのイメージを打破するという意味も込められているはずだ。開発の柱としては、洗練されたデザインと質感の高いインテリア、広く快適な室内パッケージング、軽快で気持ちよい走りと安全性の高さ、高い環境性能、優れた燃費…といった要素が集約できる。

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↑セダンのG4のGは「Genuine(本物の、真の)」の略

セダンは“G4”、5ドアは“スポーツ”をサブネームに

車種展開は2.0Lと1.6Lの2種類のエンジン、セダンと5ドアボディで、セダンは「インプレッサG4」、5ドアは「インプレッサ スポーツ」というサブネームが与えられる。駆動方式はFFとAWDの2種類を設定している。もちろんFFモデルは価格競争力を強めるためだが、同時に燃費チャンピオンカーとしての位置付けにもなる。

トランスミッションは、これまでの4ATが姿を消し、リニアトロニック(CVT)を全面展開し、1.6L車にのみに5MTを設定している。

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↑回り込んだリヤコンビランプもデザイン上の特徴のひとつだ

新型インプレッサのデザインはソリッドで張りのある面構成により、洗練された存在感を生み出している。ボディフォルムのトピックのひとつはスバルでは初のAピラー位置の前進が行われたことだ。これによりキャビンのボリューム感を増大させるとともに、ノーズからキャビンに繋がる一体感を向上させて、スポーティさとキャビンの存在感を両立させたと言える。

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スバルは従来、運転席からの斜め前方視界がAピラーの前進によって阻害されることを嫌って、キャビンフォワード…つまりAピラーの前進を採用してこなかった。しかし今回の新型インプレッサではAピラーの下端部を200mm前進させている。ただし下端部のみの前進にとどめ、Aピラーの角度を強めているが、モノフォルムデザインのようにAピラー全体を前進させるキャビンフォワードとは少し意味が異なる。しかし、いずれにせよこのデザイン変更により、斜め前方視界を確保するため三角窓を初採用している。

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↑カーブしつつも後方まで伸ばしたルーフがポイントだ

コの字型のポジションランプは新しいアイコンか?

5ドアのボディはロングルーフと後席サイドウインドウのキックアップ処理により、スポーティさや軽やかさを表現している。セダンはCピラーを前側に倒し、湾曲したルーフと組み合わせることでキャビン全体をクーペ風にまとめているのが特徴だ。

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フロントグリルはヘキサゴン型で、中央にスプレッドウイングのアイコンを配置。ヘッドライトはスバルがアイデンティティとしているホークアイ・デザインを取り入れ、なおかつ新しいアイコンとしてコの字型のポジションランプを組み込んでいる。このコの字形のポジションランプはBRZでも採用されていることから、今後は他車種にも展開されると考えられる。

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新型インプレッサのボディサイズは、ホイールベースを従来より25mm延長し、その一方でボディ全長はセダン、5ドアとも従来通りとしている。全幅1740mmも従来通り。つまりボディフォルムは意図的に変更せず、ホイールベースだけを延長し、さらにドア厚を減らすことで室内の拡大を図っているのだ。さらにホイールベース延長の効果により、リヤの足元スペースの余裕を拡大し、後席に十分な居住性を与えている。

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フロントドアは乗降のしやすさを重視。またヒンジ角度を変更してリヤドアは75度の大角度まで開口するようにしたほか、ドア面積を大きくして乗降性を高めている。そして、フロントシートは上下リフト幅を60mmと増大させ、日本はもちろんアメリカ市場でも十分な調整量としている。インテリアはこれまでのインプレッサより質感を高めることを目指し、ファブリックやレザー、メタル風合いの質感や触感を高め、ダッシュボード表皮もソフト素材にしている。

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プラットフォームも新設計。45%が高張力鋼板に

プラットフォームは今回新設計され、ホワイトボディで10kgをマイナス。その他に電動パワステの採用や燃料タンクの小型化を行うなど、軽量化は徹底されている。ボディ全体では新採用の980MPa級の鋼板が5%、590MPa級が35%、全体ボディ重量の45%が高張力鋼板としている。

これにより軽量化と衝突安全性能を両立させている。もちろん、衝突時には床下に滑り込むという優れた資質を備える水平対向式エンジンとの組み合わせで、世界各国の衝突安全評価で従来通り最高得点を得ることを狙っている。なおCd値はセダンが0.306、5ドアが0.329で、これは標準的なレベルである。

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↑ディスプレイでは燃費や航続可能距離、VDCの作動状況なども確認できる

ダッシュボードの装備では、1.6iL以上のグレードには新開発のマルチファンクションディスプレイが標準装備される。カラー液晶画面でVDC(ESP)の作動や、アイドルストップの時間や燃費向上率、アイサイト装備車ではクルーズコントロールの作動状況なども表示。

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↑FB20型エンジンはフォレスターに搭載されたものをリファイン

エンジンは2.0Lと新登場の1.6Lを搭載

エンジンは新世代の水平対向4気筒で、自然吸気2.0LのFB20型(110ps)と、1.6LのFB16型(85ps)を搭載している。FB20型はすでにフォレスターに搭載されているが、FB16型は今回が新登場となる。そのボア×ストロークは78.8×82.0mmで、FB20型の84.0×90.0mmと同様のコンセプトに基づくモジュラー設計で、圧縮比も同じ10.5(レギュラーガソリン仕様)となっている。

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またFB20型も初登場時からさらに細部のフリクションを低減させている。これらFBシリーズのコンセプトはスモールボア、狭いバルブはさみ角によるコンパクト・ペントルーフ型燃焼室を形成し、急速燃焼を行うことと、冷却損失を減少させることで燃焼効率を高めるというものだ。

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吸排気カムシャフトには可変バルブタイミング機構を装備。可変バルブタイミング機構は最大限の可変角度を備えている。この機構を使用してアトキンソンサイクル運転も部分的に行い、さらにクーラー付きEGRを大量吸入させることでポンピング損失を低減させている。また、低負荷時に吸気流速を高めるためのTGV(渦流発生バルブ)も備えている。

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↑デュアルAVCSでの作動角拡大に対応して機械式中間ロック機構を導入

動弁システムはローラーロッカーアーム式、薄厚ピストンリング、軽量なピストンやコンロッドなどによるフリクションの低減だけでなく、2系統冷却を採用するなどエンジン全体でのフリクションを徹底的に抑えている。これらの特徴のため、FB20型、FB16型ともに高出力型ではなく、低中速トルク重視した燃費指向のエンジンと言えるが、低速トルクの大きさと低フリクションの相互作用で、発進や中間加速での加速の力強さやレスポンスの良さを引き出すことができている。

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↑2系統での冷却の目的は燃費の改善だ

新開発のCVTやアイドリングストップが燃費にも貢献

またインプレッサ用に新たにCVTとの組み合わせでアイドリングストップ(1.6iを除く)を装備する。このアイドリングストップ用に、停止直後の再始動をすばやくするチェンジオブマインド制御を取り入れたスターターモーターを新採用。これはエンジンが完全停止しないと始動できない従来型とは異なり、エンジン停止の中間過程でもスターターピニオンをリングギヤと同期回転させることで、0.2秒という素早い再始動を可能にしているのだ。

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燃費はJC08モードで1.6LのFF車が17.6km/L(10・15モードで18.8km/L)、2.0LのAWD車が15.8km/L(10・15モードで17.0km /L)で、各カテゴリーにおいてトップレベルに仕上げられている。

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トランスミッションは、リニアトロニックCVTを新採用している。スバルはすでにレガシィ系にドイツのLUK社製のチェーンを採用したリニアトロニックCVTを搭載しているが、今回のインプレッサ用はより小型NAエンジンのトルク容量に合わせて新開発されている。ただし基本は従来と同じチェーン式で、変速比幅は6.3とCVTでトップレベルのワイドレシオになっている。

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一方、トルコンでは、ロックアップの拡大、これに合わせたダンパーの強化などを実施している。また、2.0L用はパドルシフト付きの6速マニュアルモードも採用している。もちろん、他のCVTのようにアクセルの踏み込みに対してエンジン回転の上昇が先行するという加速感ではなく、リニアに加速するリニアトロニックの特性も備えている。5MTは1.6LのAWD車のみ設定される。

AWDのシステムは油圧多板クラッチの圧着力を使用するをアクティブスプリット式を採用し、基本の前後配分である60:40から50:50までの駆動配分を自動的に変化させる。アクティブスプリット式は、以前からAT用に設定されていたタイプとまったく同じ。なお5MT車のみは、ビスカスLSD付きセンターデフタイプである。

速さよりも快適でしなやかなフットワークを追求

プラットフォームの手直しと連動し、シャシーも大幅に改良されており、進化型SIシャシーと名付けられている。特にサスペンションの構成部品は新設計されているのが注目される。ただしサスペンション形式そのものはこれまでと同じで、フロントがストラット式(左)、リヤがダブルウィッシュボーン式(右)だ。

新型インプレッサの画像新型インプレッサの画像

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このシャシーのコンセプトはクルマの速さを強調するのではなく、基本に忠実で、軽快で気持ちよい走りを実現しようとしている。それは、ドライバーの意のままのストレスのない走りを意味しており、開発ターゲットはゴルフとされている。具体的にはステアリング操作に対するすっきりとした操舵感と応答性の良さ、直進性の向上、さらにロールの抑えられた安定感のあると快適な乗り心地を目指しているのだ。

そのために、まずボディ側のサスペンション取り付け点やサブフレームの剛性が高められている。フロント・サスペンションでは、サブフレームの剛性の向上、アッパーマウントのゴム硬度のアップ、スタビライザー径の拡大、ロアアームの前側ブッシュ内への金属リングの採用などを実施。リヤはアッパーマウントのゴム硬度アップ、ラテラルリンク外側のピロボールブッシュの採用、トレーリングリンクのブッシュの硬度アップなどが行われた。これらは従来とは異なり、サスペンション全体を締める方向なのだ。

また、2.0L車はフロントダンパーはリバウンドスプリング内蔵式を採用するほか、リヤにもスタビライザーを装備。リバウンドスプリング内蔵ダンパーはコーナリングや切り返しで内輪の浮き上がりを抑える役割を果たし、ロードホールディングを向上させるためだ。ダンパーは高応答バルブ付きで、しなやかさと初期減衰のレスポンスの良さを両立している。
細部では、フロントロアアームの後ろ側ブッシュ基部とサブフレームを結合するサポートフロントと称するパーツを追加し、ロアアームの落ち着きを向上させている。これ以外にリヤのアッパーアームは鋳鉄製から高張力鋼板を使用した板金製に変更し、大幅な軽量化を果たしている。
サスペンションのジオメトリーは、従来のインプレッサと同じだが、リヤの横力トーイン特性を弱め、より素直でコントロールしやすい操縦性に。

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VDCとブレーキアシストは全車に標準装備

ステアリング形式は、1.6iと1.6iLの5MT車は油圧パワーステアリング、それ以外は電動パワーステアリングを採用。これは日立オートモーティブ製のピニオンアシスト式の電動システムで、操舵感の良さも実現している。

ブレーキは全車種が初めて4輪ディスクとなり、1.6L車はフロント14インチ、2.0L車は15インチ・サイズを装備。ブレーキブースターは全車がタイロッドで、このクラスとしては異例だ。さらにVDC(ESP)、ブレーキアシストが全車に標準装備となリ、これは大いに評価できる。

またスバル独自のドライバー支援システムとして、2.0LのAWD車にはアイサイト装備モデルも設定された。全車速追従機能付きクルーズコントロール、プリクラッシュブレーキ、AT誤発信制御、ふらつき&車線逸脱警報を統合した最新の支援システムだ。なお非装着車とアイサイト装着車の価格差は10万5000円となっている。タイヤは、1.6L車が15インチ、2.0L車は16インチと17インチが設定されている。

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↑SPORT2.0i-Sのインストルメントパネル

新型インプレッサは、グローバルなCセグメントにおいてスバルらしい存在感と基本性能の高さをこれまで以上に強調し、その一方で日本の市場では新たな顧客層を吸引するために、デザイン/装備/質感/走り/燃費などにおいて大幅に洗練されて、わかりやすい魅力を巧みに表現したクルマと言える。

■インプレッサG4 1.6i-L主要諸元

●ディメンション:全長×全幅×全高=4580×1740×1465mm/ホイールベース=2645mm/車両重量=1260kg ●エンジン:FB16 型/対4DOHC16バルブ/排気量=1599cc/85kW(115ps)/5600rpm/148Nm(15.1kgm)/4000rpm ●燃費:JC08モード=17.6km/L/10・15モード=20.0km/L ●燃料&タンク容量:レギュラーガソリン&55L ●駆動方式:2WD(FF) ●トランスミッション:リニアトロニックCVT ●タイヤサイズ(前/後)=195/65R15 ●ブレーキ(前/後):Vディスク/ディスク ●サスペンション(前/後):ストラット/ダブルウィッシュボーン

 

■インプレッサSPORT 2.0i-S EyeSight主要諸元

●ディメンション:全長×全幅×全高=4415×1740×1465mm/ホイールベース=2645mm/車両重量=1350kg ●エンジン:FB20 型/対4DOHC16バルブ/排気量=1995cc/110kW(150ps)/6200rpm/196Nm(20.0kgm)/4200rpm ●燃費:JC08モード=15.8km/L/10・15モード=17.0km/L ●燃料&タンク容量:レギュラーガソリン&55L ●駆動方式:AWD ●トランスミッション:リニアトロニックCVT ●タイヤサイズ(前/後)=205/50R17 ●ブレーキ(前/後):Vディスク/ディスク ●サスペンション(前/後):ストラット/ダブルウィッシュボーン

 

新型インプレッサの価格表の画像

 

文:編集部 松本晴比古

 

スバル公式Web

http://www.subaru.jp/

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