SUBARU 新型フォレスター 優れた乗り心地と使い勝手の良さが際立つ【試乗記】

SUBARUの屋台骨の一台である新型フォレスターを公道で試乗することができたので、お伝えしよう。2025年4月にナンバーを取得する前のプロトタイプとしてサーキットで試乗しているが、公道は実際の使い勝手と同じ環境であるため、特徴もつかみやすい。

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試乗したのはパワートレインでハイブリッドと1.8Lターボの2タイプ。ハイブリッドはフルハイブリッドで、スバルでは「ストロング・ハイブリッド」と呼んでいるモデルだ。販売状況も好調のようで4月から5月の2ヶ月間で1万5000台の受注を受けている。

月販目標が2400台なので、目標の4倍以上の受注状況というわけで、納期については1.8Lターボは3〜4ヶ月、ハイブリッドは1年以上の納期となっている。最近、新車の納期が遅いという話を耳にするが、各社、それぞれの事情を抱えているにせよ、共通しているのは在庫を常に抱えるスタイルを止める方向にシフトしていることだ。

つまり、洋服の吊るしじゃないが、常に在庫があり、ユーザーが選択できるということではなく、受注を受けて生産に入る方式に徐々に変わっているのだ。プレタポルテからオートクチュールへと変わったというと余計ややこしくなるので、セミカスタムメイドになってきたという感じか。

それはリスク回避のひとつであり、常に在庫を抱えればユーザーの本当の欲しい仕様やカラー、組み合わせとは違ったものになることも起こる。またメーカーやディーラーは在庫処分という手法が必要になり、価格における不公平が生じることもある。そうしたネガ要素はリスクと捉え、各社在庫を大きく抱えることを控えているために納期がかかるという状況に変わってきているわけだ。

フォレスターで言えば、また別な事情があり、生産する矢島工場には2つのラインがあり、クロストレックやインプレッサも生産する混流生産であり、片方のラインを現在EV生産ラインに改装中で1ラインしか稼働していない事情がある。ただ、北米向けフォレスターを国内へ仕向ける調整をしており、1年以上の納期は少し緩和される可能性が高くなっている状況だ。

さて、話をフォレスターに戻すと、公道走行では、それぞれのパワートレインを試乗し、ラフロード試乗では新旧ハイブリッドの比較試乗を行なうことができた。


まずはラフロードでの走行だが、まさにラフな路面でかなり荒れた環境だった。速度も40km/hは厳しく15km/hから30km/h程度で走行するのがクルマを壊さないレベルの路面だった。さらにアップダウンがありXmodeを試すこともできた。

新型はストロング・ハイブリッドのS-HEVで旧タイプはマイルドハイブリッドのe-BOXERだ。そのパワートレインの違いは、急斜面の登りでアクセルを少し開けた時のレスポンスの違いを感じた。これはモーター出力の違いが影響し、新型のほうが力強く感じられる。また荒れた路面走行でのボディでのゆさぶりの違いでは新型のインナーフレーム構造のボディは、しっかりとした剛性を感じることができる。

X modeはどちらも良く制御されており、大きな違いを感じる場面はなかったが、操作性では旧型がダイヤル式だったのに対し、新型がタッチパネルの中での操作になり、操作性では旧型のほうが扱いやすかった。ただ、車体が激しく揺られるような路面でのX mode操作だったために、そう感じたわけだが、実際に自分のクルマでそうした場所を走行するかと言えば、躊躇すると思うし、操作するとしても停止時に操作するだろうと想像できるので、新型の操作性が悪いとは断言しにくい。

さて、公道では乗り心地の良さとスポーティドライブの気持ちよさが伝わってきた。とくに1.8LターボはCB18型ターボで最新の次世代環境エンジンを搭載し、「i-modeとS-mode」の切り替えによりS-modeの気持ちよさは印象に残る。

言ってみれば、ガソリンエンジンのターボ車なわけで、慣れしたんだ感覚の中で、反応良く走れるため、気持ち良いと感じる。サーキットで顔を出した不感帯も顔を出さず、どの速度域でもターボラグを感じることなく走れたのだ。

ハイブリッドはターボ車と比較すれば、全体にどっしりとした重量を感じられるが、その重さは高級なしっとりとした方向に感じるわけで、フォレスターがひとクラス格上げされた印象になった。

ターボもハイブリッドもオールシーズンタイヤを標準装備としていて、18インチがファルケン、19インチがブリヂストンブランドのタイヤを装着している。どちらも静粛性が高くサマータイヤとの違いを感じることはない。言われなければ気づかないほど静かなタイヤだ。

とくにハイブリッドは走行中にEV走行に切り替わる瞬間があるので、余計にタイヤからのノイズや走行音は気になるものだが、EV走行でもノイズは少ないと感じる好印象だった。

使い勝手では、リヤゲートの開口部の広さとフラットな掃き出しの構造で重量物でも積み下ろしが容易だと感じた。ゴルフのキャディバッグ4本が横積みできる広さがあり、積み込む際に斜めから入れて積み込む必要がないほど広い開口部を持っている。そして重量物を荷室奥から引き出し、下ろす時にも掃き出し部分に段差がないため、使いやすく、よく研究されている荷室だった。

また後席の背もたれも荷室からワンタッチで倒せるスイッチが左右にあり、利便性は高い。さらにリヤゲートも電動式でハンズフリーのキックセンサーが装備されているのも好感度は上がる。

運転席と助手席のそれぞれの内側の形状が緩やかにカットされており、後席への振り向きに対してショルダー部分が気にならないような工夫、気遣いのシートが装備されている。

スピードメーターとセンターモニターは情報が溢れるスバル式表示で、アクセル開度や車両の傾きなども表示できるオタク向け情報は満載されている。ただ、電動化されていく中で、できることが増え続けていくことに対し、どこまで表示するのかは研究が必要で、ややもすると古臭く感じてしまうかもしれない。

ひとつ残念なのはシフトレバーが新旧フォレスターで共通だったことだ。ここはデザインや材質の変更はして欲しい部分で、フォレスターからフォレスターへの乗り換えユーザーには、新鮮味がない部分に映ってしまうだろう。

新型フォレスターはファミリーをターゲットとしているが、車両のオプションも含め、アウトドアやオフロードのイメージをはっきりさせている点はわかりやすいモデルだ。エクステリアのアドベンチャースタイルパッケージは新車時だけでなく、後付け可能なオプションというのは嬉しい装備のひとつだ。

装備類は多彩なパッケージが用意されており、STIエアロや部分的に色をつけるアクセントカラーパッケージなどもあり、選ぶ楽しさがあるのは嬉しい。

グレード構成もシンプルで、ハイブリッドは「プレミアムS-HEV」と「X-ブレイクS-HEV」の2タイプで、それぞれにアイサイトXの有無しで末尾にEXが付くかどうかの違いだ。ターボモデルはモノグレードでSPORTのみで同じくEXの有無しの選択になっているのはわかりやすい。

最後にパワーユニットについての情報をお伝えいしたい。フルハイブリッドはクロストレックから始まっているユニットで、このフォレスターにも同じユニットが搭載されている。車重の違いなどがあるので、適合の領域で制御を変更し、搭載している。詳細は下記の関連記事を参照いただきたい。

関連記事:スバル クロストレックに待望のストロングハイブリッド搭載【試乗レポートあり】

一方ガソリンターボのCB18型もアップデートしているので、説明を加えておくと、2022年に施行された排ガス規制にPN規制が加わっている。Particle Numberつまり微粒子だが、エンジン燃焼から排出される中の微粒子に規制がかかり、新型CB18は対応をしている。

その対応はデバイスを使わず、燃焼制御だけで対応している。ターンブル流を多く、インジェクターの噴射圧を上げ、マルチ噴射、マルチ噴口のソレノイド式で高速燃焼をさせている。もともとリーンバーン燃焼エンジンであり、過給機はエアを多く取り入れるために使用し、EGRも循環させる環境エンジンだったが、さらにPN規制にも対応するエンジンへと進化している。ちなみにWLTCの燃費は13.6km/Lで、ハイブリッドは18.8km/Lとなっている。

新型フォレスターは本格SUVというポジショニングで登場し、ファミリーをはじめ、アクティブなひとをターゲットにしたSUV。デザインもアメリカンな匂いを感じさせ、大らかさもどことなく感じるものの、走りは応答遅れのないスバルらしい走りがある。さらにアイサイトXの搭載や環境への配慮といった新技術も搭載しており、スバリストだけでなく、より多くの人の目に魅力的に映るに違いない。

価格

グレードユニット価格
Premium EX2.5L SUBARU BOXER×ハイブリッドシステム459万8000円
Premium2.5L SUBARU BOXER×ハイブリッドシステム448万8000円
X-BREAK EX2.5L SUBARU BOXER×ハイブリッドシステム447万7000円
X-BREAK2.5L SUBARU BOXER×ハイブリッドシステム420万2000円
SPORT EX1.8L BOXER直噴ターボ“DIT”419万1000円
SPORT1.8L BOXER直噴ターボ“DIT”404万8000円
※価格は税込

諸元

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SUBARU公式サイト

PHOTO:佐藤亮太&SUBARU

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