2018年3月29日、ニューヨーク国際モーターショーでワールド・プレミアされた北米仕様の新型フォレスターが日本でもメディア向けに公開され、間もなく登場する日本仕様のフォレスターのディテールもかなり明確になってきた。
※参考:スバル 5代目「新型フォレスター」マイルドHV、PHV搭載か? ニューヨークショーで世界初公開
北米仕様の新型フォレスターは、アメリカ、カナダなどで3列シートのミッドサイズSUV「アセント」に続き、9月以降に2019年型モデルとして発売される。
※参考:スバル 3列シートの新型SUV「アセント」をロサンゼルスで世界初公開
4月下旬~5月上旬のゴールデンウィーク期間中に群馬県矢島工場のラインが新型フォレスター用に更新され、5月中旬にはロールアウトしている。正式発表は6月中旬と予想される。そして発売は8月下旬から9月頃になると予想されている。
グレード展開は、北米ではベースモデル、プレミアム、スポーツ、リミテッド、ツーリングという5種類だが、日本仕様はこれより絞られ、ベースモデル、スポーツ系、ツーリング系、そしてマイルドハイブリッド・グレードという展開となるようだ。なおマイルドハイブリッドは、トップグレードと位置付けられ、ターボの代わりにモーターによるブースト・モードが採用されると予想されている。
■コンセプトとデザイン、パッケージング
新型フォレスターの開発コンセプトは「世代を超えて元気で若々しく活動的な気持ちを駆り立てるクルマ」とされ、コンフォートな性能の追求とSUVとしての魅力の追求を両立させることであった。
つまり現行フォレスターの価値を守りながら進化させるという、いわばキープコンセプトのモデルチェンジである。なぜならフォレスターは現在のスバル車の中でグローバル販売台数ナンバーワンであり、アメリカ市場でもアウトバックと同レベルの売れ行きを記録しており、世界中で支持されているSUVであること。それと、アメリカ市場では、より大型となるミッドサイズSUVのアセントを新たに販売するため、ボディサイズは大きくさせず、より快適で高機能のC+セグメントのSUVであることを守る必要があるからだ。
デザイン的には、2015年の東京モーターショーに出展された「VIZIV フューチャーコンセプト」のイメージ、つまりダイナミック・ソリッドのデザイン・コンセプトと、ニューモデルのアセントと共通化したフォルムというふたつの要素を盛り込んだ「モダン・キュービックフォルム」だ。
全体のフォルムは、現行フォレスターと大きく変わっているわけではなく、キャビンのスペースを最大限に追求した上で、角型キャビンにならないように立体感、ソリッド感を強調したデザインになっている。
パッケージングは、新世代プラットフォームを採用し、ホイールベースが30mm延長されたことを活かし、前後シート間隔を33mm延長し、その分だけリヤシートの居住性が向上している。また左右席の間隔も20mm広げられ、さらにリヤのラゲッジ開口幅を134mm拡大し、クラス最大級の開口幅とラゲッジ容量を確保している。
一方で、ボディサイズは全長+19mm、全幅+21mmという微増にとどめ、前後のオーバーハングはわずかに短縮。ボディサイズはC+セグメントのサイズを守りながらキャビン、ラゲッジのパッケージサイズを最大限に追求している。
もうひとつ地味ながら一貫して追求されているのが視界の良さで、特に斜め前方、斜め後方の視界はクラストップとし、運転のしやすさ、取り回しの良さを実現している。
■エンジン、トランスミッション
搭載されるエンジンは新開発の直噴化されたFB25型で、2.5Lエンジンで最高出力は184ps/5800rpm、最大トルク239Nm/4400rpm(レギュラーガソリン仕様)だ。北米ではこれまで、2.0Lターボ(FA20F型:253ps/280ps)も搭載していたが、今回のモデルでは消滅した。従来の北米用のFB25型は172ps/236Nmであったが、今回は直噴化や改良により185psまでパワーアップしている。
アメリカ市場では、ターボより自然吸気エンジンの方が売れ行きはよく、エンジン回転の伸びの良さも評価されることも理由で、自然吸気エンジンに一本化したという。ただしマニア層からはターボエンジンの消滅を嘆く声もあるようだ。
エンジン本体は、従来の吸気可変バルブタイミングから吸排気可変バルブタイミングに変更し、直噴化に伴い圧縮比は12.0と高めている。またスバルとしては初となる冷却水の電子制御を採用し、ウォームアップの早期化を実現。
さらに、エンジンのクランクシャフト支持剛性を高め、エンジンの振動を一段と抑え込んで滑らかな回転フィーリングを実現している。
トランスミッションは、従来通りのリニアトロニックCVTだが、プラットフォームの刷新に合わせ、インプレッサ系から採用している新世代のCVTに進化した。よりピッチの短いCVTチェーンを採用し、変速比幅を6.3から7.0に広げている。また加速時のオートステップ制御の採用、マニュアルモードは従来の6速ステップから7速ステップに改良している。
またCVTやフロントデフの軽量化、CVTバッフルプレートの改良などにより機械損失を低減し、燃費性能向上を図っている。
エンジン、トランスミッションの統合制御のSIドライブは、Iモード、Sモード(スポーツ・グレードはS#モード)という2モードとし、加速特性を選択できるようにしている。
悪路を走破するためのXモードは、従来のon/off式スイッチからダイヤル式に変更している。従来のXモードでは深い泥濘路などではVDCスイッチオフを別途操作しなければならなかったが、今回から採用のダイヤル式スイッチでは、スノー/ダート、ディープ・スノー/マッドを選択でき、ディープ・スノー/マッドを選ぶと自動的にVDCもオフになるという設定になって、操作がシンプルになっている。
フルタイムAWDは、より進化したXモードと、大径タイヤ、最高地上高220mmなどによりSUV性能も本格的SUVといえる性能を備えていることも新型フォレスターのアピールポイントだ。
■ボディ、シャシー
衝突安全性に関しては、高剛性のSGPを採用したことに加え、日本より厳しいアメリカのIIHS、USNCAPで最高得点が獲得できるように、一段と高剛性のボディを採用。そのため、1.47GPa級のホットスタンプ材は従来の1%から6%に拡大採用し、440MPa級以上の高張力鋼版は49%から56%へと拡大採用されている。
さらにボディ全体の剛性バランスの最適化、結合部などの局部剛性を高めた結果、フロントのボディ曲げ剛性は従来型の2倍に、車体ねじり剛性は40%アップと、大幅に高められている。
また衝突安全性を高めるために、スプライン圧縮式の衝突対応プロペラシャフト、荷重低減ベルト・ロッキングタング、フロント助手席はエアバッグ連動式アダプティブベルトなど、細部にも新しいアイテムを新採用している。
走行中の車内の快適性を向上させるために、キャビンの静粛性能も大幅に向上している。そのためボディ要所の剛性向上、構造用接着剤の採用、さらに吸遮音材を十分に配置。その結果、前席、後席ともにクラストップとなる静粛性を実現している。
ダイナミック性能では、操舵応答性や安定性、さらに危険回避性能でもクラストップを実現。ロールは少なく、操舵遅れの少ない気持ち良いハンドリング性能となっている。また同時に、乗り心地も大幅に向上させ、優れたダイナミックスと快適な居住性能を両立している。
ステアリングは新たに13.5~15という可変ギヤレシオを採用。ニュートラル付近は穏やかに、大舵角ではクイックに切れるようにしている。
またSGPの採用によりリヤ・スタビライザーはボディに取り付けることでロール角を低減し、さらにリヤのサブフレーム・ブッシュの弾性中心とロールセンターを一致させることで、ブッシュ回りの動きを抑制することで、ブッシュの硬度を下げることが可能になり、振動騒音の抑制と乗り心地や操縦安定性の向上を両立させている。
■先進装備
新型フォレスターは、アイサイトが搭載されていることは言うまでもないが、北米仕様には操舵アシストが装備されていない。もちろん日本仕様は最新のアイサイト・ツーリングアシストが装備される見込みだ。
今回注目されるのは、ドライバーモニタリングが上級グレードに搭載されたことだろう。スバルと三菱電気が共同開発した、この赤外線カメラを使用した、ドライバーの顔認識技術による、居眠りや脇見検知は、将来的にはレベル3以上の高度運転支援システム、自動運転にも必須とされる技術だ。
ドアを開けてドライバーが運転席に乗り込むと、自動的にカメラはドライバーの顔の目の周辺を認知し、目の動きをメインに運転状況をモニターする。もしドライバーが居眠りや脇見運転を続けると警報を出し、アイサイトの作動をスタンバイさせるというものだ。
現段階では、システムの作動は警報のみで、減速したりするわけではないが、次に繋がるテクノロジーであることは間違いない。なおこのドライバーモニタリング・システムは一部の高級車にはすでに搭載されているが、スバルはこのドライバーモニタリング技術によりドライバーの顔の特徴、特に目の周辺を検知、認識することを利用し、各種の設定を記憶させるようにしており、これは世界初の技術となる。
これはドライバーの顔の特徴を記憶し、ドライバー・プロファイルを生成する。記憶されるのはシート位置、サイドミラー角度、空調設定などで、ドライバーごとにこれらの項目を記憶できるようにしている。この個人設定は最大5名分のメモリーが可能だ。
もうひとつの新技術として、新型フォレスターの北米仕様には通信モジュール(SIMカード)が装備されており、常時インターネット接続が可能なコネクテッドカーになっている。そのため、車内には無線ルーターも装備され、走行中でもタブレット、スマートフォン、PCなどをWiFi接続することができる。
またインターネット常時接続により、多様な情報を任意に入手でき、コールセンターに電話を掛け、オペレータとの会話を通じて行きたい場所(目的地)を選択し、ナビの目的地設定を行なう機能、スバル・コンシェルジュを搭載する。運転中であっても自動で目的地をセットすることが可能になり、さらに緊急通報や、車載ソフトウェアの無線通信アップデート(OTA)もできるなど最新のコネクテッドカーの能力を備えている。
残念ながら日本仕様にはこうしたコネクテッド技術は搭載されず、Android Auto、Apple Car Playなどスマートフォン連携にとどまると予想される。アメリカ市場ではユーザーのコネクテッド技術に対する要求が強く、コネクテッドカーでなければ販売にも影響するが、日本ではまだコネクテッドカーに対する需要が少ないという判断だという。