【SUPER GT2025】第1戦 岡山国際サーキット300kmRace SUBARU BRZ GT300 何がどうした?最終ラップの最終コーナー インサイド


SUPER GT2025シーズンが岡山国際サーキットで開幕した。お伝えしているようにSUBARU BRZ GT300は、今季新車に切り替わり、空力性能を始めハードパーツ、電子制御なども一新され、さらにルール変更によりフロントタイヤも小径化。前年までのマシン性能を超えられるのか注目されている。

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チームは11日(金)にサーキットに入り準備を進める。ドライバーも到着し早速意気込みを聞いてみた。GT300クラスでポールポジション獲得回数1位の山内英輝は「テストでは、新車ゆえのトラブルがいくつか出て、ようやく開幕になるという印象で、テストではヨコハマタイヤを履く#56と#4が異常に速いという印象があるので、今回の開幕戦でどこまで戦えるか不安なのか、興味なのか、そんな気分です。でも気分はやる気満々です」と表情は明るかった。

一方、井口卓人も「テストは順調にできたとは言えないですが、長年一緒にやってきたメンバー達ですから、仲間を信じて走ります」とやはり、課題が山積してきた中での開幕戦と言えそうだ。

土曜日、晴れ時々曇り。午前の公式練習ではいつもの手順どおり、山内がセットアップを始める。気温18度、路温28度と快適な天候だ。最初にマシンバランスを見て、タイヤとのマッチングを探していく。煮詰まったところでロングランという走行計画だ。しかし、この日は走り出してすぐに、BRZ GT300に振動が出ていることが無線で伝えられた。

トラックエンジニアの井上徳(さとし)はすぐにマシンをピットに戻し、タイヤの内圧が上がっていないことや、今季切り替えたシーケンシャルシフトのモーター制御など確認事項があることなども伝える。また、ダンパーやスプリングなどのサスペンション系、車高やキャンバーといったジオメトリー系などのチェック項目からも情報を山内に伝えていく。

山内はそうした振動が出ている状況の中、計測4ラップを走行し、1分25秒208というタイムを開始早々の6周目にマークした。なんとこのタイムは1時間35分の公式練習で一度も破られることがなかったのだ。

新車となったBRZ GT300に、速さはあるようだ。ただ山内は、このあとの走行時間を振動対策に集中する。「このまま走り続けると、どこかにストレスがかかりマシンが壊れる」とまで無線で伝えていたのだ。

山内は振動への対策を施しながらピットインとピットアウトを繰り返した。BRZ GT300はタイムを出せたとはいえ、振動が出ている状況でジオメトリーやタイヤのマッチングを見ることはできず、16周したうちピットインを6回もすることとなった。次に井口と交代をしてみる。井口も同様に振動が出ていることを無線で伝え、コース上のどこで振動がでるのか、つぶさに伝える。

結局公式練習は21周したが、9回のピットインという異例の事態が起きていた。しかも振動問題は解決できず午後は予選がある。予選までのインターバルで解決できるのか。時間との戦いがあった。チームはフロントのリップスポイラーが振動源と判断し、取り付け補強を行なうことにした。

予選が始まる前に15分間のFCY訓練がある。チームはその短い時間を使って、確認作業を行なっている。応急処置的な作業になったが、メカニックが素早くフロントリップスポイラーを引き上げるような形の補強を入れた。そして井口は中古タイヤを使いながら、状況を確認し計測も試みている。

手応えはいい。振動は出ていない。これならニュータイヤを履けばアタックができると井口は確信した。

Q1予選が始まった。ドライバーの井口は午前の練習で計測できたのは、わずか1ラップ。それもアタック周回ではなく確認走行しかしておらず、圧倒的に乗っている時間は短い。そんな中での予選となった。今季からQ1通過は9位までと1台多くなっているが、果たしてどうなるのか。

井口は公式練習で山内が出したトップタイムより0.54秒落ちるタイムをマークし8位でQ1を突破した。BRZ GT300は振動対策に追われセットアップはできておらず、過去のテストデータで予選にむけてセットアップをしていたのだ。それにもかかわらず、好タイムとなったのは、オフシーズンのテストデータが正しかったことを意味している。

マシンを降りた井口は「振動は全くありませんでした。バッチリ走れました。ただアンダーステアが強いのでセット変更をしたほうがいいと伝えました」という。

BRZ GT300は井口のアドバイスにより車高をわずかに変更しQ2の山内に託した。

山内はコースインをして4周目にアタックに入った。タイムは1分24秒579で朝のテストから0.629秒速いタイムをマークし、全体トップにたった。その後2台のマシンに抜かれBRZ GT300は予選3位となった。

「振動はまったくなく、不安なくアタックできたので、ポールは獲りたかった。悔しいです」と半分笑顔の山内だった。午前のトラブルを考えれば、予選3位は上出来という安堵感と、決勝ではイケるという自信があったのだろう。

【決勝】

決勝は一転して肌寒い雨となった。決勝前のウォームアップでは井口がステアリングを握り、ウェット用のセットアップを進めていく。タイヤの選択、車高調整、ダンパー、スプリング、スタビライザーなどなど、ドライとウェットではセットアップは変わっていく。ウォームアップ走行という短い時間で井口はセットアップし、雨の中全体トップとなるタイムをマークし、準備を整えることができた。

スタート時点でも雨は降り続き、セーフティカー(SC)先導でスタートが切られた。ドライバーは井口。予選3番手からトップを狙う。ところがオープニングラップでGT500クラスの複数台が絡むアクシデントが発生し、赤旗中断となった。約30分レースは中断し、そののち再開された。それでもコースから飛び出すマシンは続出し、FCYやSCが出る荒れた展開だった。

そうした中、井口は3位をしっかりキープしている。スタートから14周あたりの無線では「ブリヂストンやヨコハマと勝負できているので、タイヤは大丈夫。コンディションもドライパッチはないのでスリックはまだ無理」と状況をピットへ伝える。

20周目、トップを走る#777を2位の#4がプッシュし、#777がコースアウト。井口は2位に浮上した。しかしドライバー交代のミニマム周回数が近づく頃になると井口のタイヤが厳しい状況になっていた。井口は無線で「これ以上ペースは上げられない」と伝えてくる。

26周を過ぎたあたりからラップタイムが落ち始めポジションキープができなくなる。31周目5位に後退した井口はロングスティントになる山内と交代した。タイヤはレイン。各チームタイヤ選択の違いにより、その後の順位は大きく変化していく。山内はひたすら前を走るマシンに狙いを定め、猛追していく。

レース中盤、ドライアップした路面に対し各チームがスリックに交換するためピットインをする。山内も53周を終えたところでスリックに交換しコースに戻った。この時総合では24位だが、ピットインの回数が違うチームも多く正確なポジションは把握しにくい。周回するたびに16位、14位、12位、11位と順位が変わり、60周目では10位に浮上していた。

そして残りあと10ラップという場面でFCYとなり、その後SCに変更となった。トップとは大きく離されていただけに、このSCは滅多にないチャンスだった。それは全チームに言えることで、レース再開となったときには10周のスプリントレースの様相になったのだ。

山内は目の前の#87を捉え、何度となく前に出れそうになるが、その前に周回遅れになりそうな#5がいて、山内に蓋をするポジションにいた。そのため#87を完全に抜くことができず、この2台に手こずり最終ラップを迎えた。

そして山内は8位にポジションアップを果たし、最終コーナーを立ち上がったかに見えた。その時、目を疑うような光景がモニターに映し出された。#61がスピンをし逆側を向いて停止している。

無線「終わった。エンジンかからない」山内の虚しい声がピットに響いた。

山内は8位で最終コーナーを立ちあがろうとしたとき順位を争う#45が後ろから接触。山内はスピンを喫した。レース後#45は5秒のペナルティを課せられ、順位は12位。山内はその後再スタートができ、チェッカーを受けた。14位でのチェッカーだった。その後の再車検で#6が車両規定違反で失格となり、BRZ GT300は13位となった。

この結果に、釈然としない虚しい気持ちがチーム員の全身を覆っていた。

獲得ポイントは3点、次戦は6kgのサクセスウエイトを積んで5月3日(土)、4日(日)富士スピードウェイ3時間レースでリベンジを狙う。

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