【スーパーGT2022】第7戦オートポリス SUBARU BRZ GT300 2位死守でドラマの準備は整った

2022年スーパーGTシリーズも大詰め。残すところ2戦となった。SUBARU BRZ GT300はシリーズランキング4位。言わずもがなかディンフェンディングチャンピオンとして今シーズンを戦ってきている。ドライバーランキングでトップとは12.5点差で迎えた第7戦、BRZ GT300は2位、56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは5位という結果になった。ギャップは2.5ポイント差まで詰め寄り、いよいよ最終戦での勝負となった。

歓喜の余韻を分かち合う井口卓人と山内英輝

金曜日、チームは大分県日田市にあるオートポリスで日曜の決勝に向けて準備をしていく。いつもどおりの手順でいつもと同じことをミスなく準備する。シリーズチャンピオンを目指すとは言え、ランキング4位でこの第7戦の結果次第ではチャンピオン争いに残れない可能性もあった。

チームミーティングが始まる前の午後3時にドライバーの井口卓人、山内英輝が2人揃ってパドックに到着した。私服のままいつものようにメカニックやサポートスタッフたち全員に挨拶をしてまわる。「こんにちわ、今週もよろしくお願いします」とひとりひとりに笑顔で声をかけていく。

「ここは僕の地元ですし、地元の応援団が用意してくれた井口卓人ファンシート150席は瞬殺で完売したらしいです。応援してくれるファンがたくさん来るので、ここはBRZ GT300の速いところと強いところを魅せたいですね」と井口はいつも通りの満面の笑顔で話す。

「気合は入ってます。ここの結果次第ではチャンピオンシップに残れないかもしれないので、何がなんでも勝ちたいです。ウエイトも半減されているのでポールto ウィンで決めたいですね」と山内。スイッチの入っていない山内は穏やかな青年だ。

煮詰まらなかった公式練習

土曜日の午前はいつものように公式練習があり、持ち込んだタイヤのマッチングとマシン確認が行なわれる。マシンは1mm単位でのセットアップというのが今のBRZ GT300だ。例えば車高も1mm単位で変えている。あの大きなリヤウイングも0.5度単位で調整する。非常にデリケートな調整ができるように進化しているのが今季の強みと言える。

さらに、今夏から投入されたダンロップの新タイヤがいい仕事をしている。ダンロップによればGTA-GT300の車両規則で作られたマシンとFIA -GT3規則で作られたマシン用とでは作り分けているという。同じGT300クラスでも専用の領域が異なるわけだ。

だからこそセットアップが肝心になり、路面温度やコンディションにナーバスにならざるを得ないのかもしれない。

そうした背景を持ちながら公式練習は始まる。10月最初の週末、しかも標高が高いオートポリスなのに暑いと心配顔の小澤総監督は話す。

山内がいつもどりにセットアップを開始する。3〜4周の計測をしてセット変更という作業が繰り返される。無線ではマシンの状況が細かくピットに伝わってくる。コメントを元にR&D SPORTのトラックエンジニア井上徳(さとし)氏がセットを決めていく。

山内は合計13ラップしたところで井口に交代した。山内のタイムは1分45秒264で順位は8位前後だった。トップは65号車LEON PYRAMID AMGで1分44秒409とタイム差は大きい。

「ここはブリヂストンが相性いいみたいなんですよね、過去のデータを見ると。またGT-Rは意外と苦労していて、パワーがある分タイヤへの攻撃性が高くなってしまうのかもしれないですね。BRZ GT300は去年もフルウエイトで予選2位、決勝3位の結果を出しているので、相性はいいと思います。ただ、路面が難しいのでうまくマッチできるといいのですが」と穏やかに小澤総監督は言う。

SUBARU BRZ R&D SPORT 小澤総監督

井口も9ラップしたところで1分45秒419と山内と似たようなタイムで順位は12位付近まで下がっている。

うまく煮詰まらない様子で、公式練習は合計1時間45分の走行枠があるが、そのうち30分もピットに止まった状態が続いた。

「リヤがナーバスでアンダーステアの傾向が強いので、セットアップの大幅な変更をしました」と小澤総監督。

1mm単位での調整ができるとは言え対応の幅を超えたのかもしれない。ここにきて大幅な変更とはリスクがあるようにも思えた。

セットチェンジ成功でポール獲得

セットチェンジの結果は、公式練習の終了間際、そしてFCY訓練の20分間、さらにサーキットサファリの20分間も使って確認をする。そして予選はQ1予選B組で井口が走行する。井口はA組のタイムを見ながらQ1突破タイムを予測する。コースインして3周目に1分44秒100を計測。ポジションは3位だ。公式練習のタイムを大幅に更新している。セットアップの変更は見事に成功していた。

こうした技術力と判断力が今季のBRZ GT300の強さだと感じる。それに応えるドライバーの敏感センサーにも毎度驚かされるが、この後のQ2では路面にラバーのり、よりハイグリップとなるので山内への期待が高まる。

Q1終了後、井口はチームにセット変更を進言する。「もっとこうすれば山ちゃんならタイムが出る」と。それにともないサスペンションの変更をした。

Q2予選。すぐにピットアウトをせず遅れてコースインをする。山内はクリアラップを十分にとって3周目にアタックをした。タイムは1分42秒796をマーク。トップに立った。

「公式練習からいきなり3秒も速くなりましたね。何なんだ?という感じです」と予選後の山内は自身のタイムに驚いた様子だ。

その後もタイムは破られずポールポジションが確定した。これで今季4回目のポールを取ったことになる。7戦中4回のポール。また1回は予選2位もあるのでフロントローに並ぶのはこれで5回目という速さを魅せた。

予選の結果は2位に52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GTでブリヂストンユーザーだ。3位は2号車muta Racing GR86 GTでやはりBSを履く。そしてシリーズトップの56号車は予選8位でヨコハマタイヤを装着している。小澤総監督が言うようにBSユーザーが調子良さそうだった。

「ヤバい!」FCYに翻弄された決勝

スタンドには700名近いファンシートが設けられ多くのファンが応援している

日曜日も快晴だ。秋とは思えない気温で29度もある。レース観戦には絶好の好天なのだが、チームには一抹の不安はある。路面温度だ。スタート前のウォームアップ走行時に路面温度が40度にもなっていた。そのためなのか、ここでもマシンのセットアップを変更している。

そして午後1時30分すぎに決勝レースが始まった。300km、65周のレースだ。GT300クラスは61周が周回数になると予想される。

GTAの坂東会長と共にSUBARUの中村社長がポールポジションの61号車を訪れ、応援に駆けつけた

スタートドライバーは井口。多くのファンの声援に後押しされながら綺麗にホールショットを決めた。1周目、背後に52号車を引き連れている。逃げるBRZ GT300、追うGRスープラがテール to ノーズで争う。このトップ2台が飛び抜けて速く3位以下を8秒以上離すスピードだ。ちなみに、レース中のファステストラップは、この時に井口が叩き出している。

10周目、GT500クラスのトップが追いついてくる。井口はインを開けGT500を先に行かせたが、この時52号車はGT500のテールに食いつき井口を交わした。井口はすぐさま抜き返しを狙うがあっという間に52号車は離れていく。

周回を重ねるごとにトップ52号車との差は1秒ずつ広がり、別次元のスピードで離れていった。その後FCYが入りポジション2位を確保したまま展開していたが、FCY解除後井口のペースが上がらない。

一度冷えたタイヤがグリップを戻せない状況にいるようだ。後ろ3位の88号車Weibo Primez ランボルギーニ GT3とは10秒以上のリードを持っていたが、FCY後は徐々に差を詰められている。

23周目の時、4秒3まで迫られていたため、チームはミニマムでのピットインを指示する。グリップの回復が見込めないと決断したのだろう。25周目にピットインし、スイッチが入った山内と交代。タイヤも4本ニュータイヤを装着しトップを追撃する体制にした。

ただGTA-GT300勢は給油リストリクターが絞られているため、他チームより給油時間が長い。約3秒ほどは必ずロスしてしまうのだ。それでも山内はトップを追いかけ全車がピットインを済ませた時の順位は2位をキープしていた。トップとのギャップは8秒ほどある。井口がピットインした時とほぼ同等のギャップであり、給油によるロスは取り戻していると考えていいだろう。

30周を終えた時点でトップ52号車とは8.3秒の差があり、56号車は6位を走行している。山内は追撃を試み44周目には3.4秒差までに迫った。アドレナリンが溢れる山内の追撃が激しい。「あともう少しでトップに追いつく!」となったところで再びFCYが導入された。

FCY解除後のギャップは再び8秒ほどに広がり、FCYに入るタイミングによって差が生じてしまい残念なことになった。さらなるアドレナリン山内の追撃を期待したものの、やはりグリップが薄くなっているのか、タイムは上がらない。

逆に摩耗が進んだのかタイムは落ち始め、終盤には52号車とは10秒離れた。一方で3位に上がってきた65号車BSユーザーのLEON AMG GT3が山内に近づきつつある。

ラスト5周に入ると52号車とは10秒、11秒と広がり59周目14秒、その翌周は17秒と差が広がった。逆に3位の65号車とはラスト5周で3秒、2秒と縮まり、59周目で1.5秒、60周目で0.45秒差となった。見るもの全てが「やばい!」と感じた瞬間だ。手に汗を握り天を仰ぐ。

しかし山内はギリギリで2位チェッカーを受けた。ピットに戻った山内はダンロップの担当エンジニアに、セーフのポーズをしておどけて見せた。小澤総監督は開口一番「悔しいですね、勝ちたかった」と笑顔はなかった。

しかしながらチームには大きなポイントが入り、56号車は5位フィニッシュ。得点差2.5点となり、シリーズランキングも2位に浮上した。

これで最終戦での決着という舞台は整った。シリーズチャンピオンの最有力は56号車GT-Rと61号車BRZ GT300の2台だ。

そして10号車GT-R、52号車GRスープラ、11号車GT-R、65号車AMG GT3あたりまでが可能性を残しているものの、その可能性は低い。

11月5日(土)、6日(日)栃木県茂木町のもてぎリゾートで300kmの最終戦が行なわれる。ここではノーハンデ戦となり、全車開幕戦と同じ条件になる。がしかし、コースの特性上、大パワー車が有利と言われている。果たしてGT300クラス史上初のシリーズ連覇は達成されるのか、最終決戦は必見のレースとなった。


The Mortor Weekly

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