スーパー耐久2022「SUBARU BRZ CFN Concept」富士24時間レースを走り切る

ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースが静岡県小山町の富士スピードウェイで延べ3万8100人という大観客を入れ開催された。

日本で唯一の24時間レースに多くのファンが集まった

今季のスーパー耐久にはカーメーカーの開発車両が参戦できるST-Qクラスに、トヨタだけでなく、SUBARU、マツダ、日産などが参戦し次世代燃料を使用したマシンで参戦している。

トヨタの水素カローラは水素そのものを燃料として走行するマシンで、2021年シーズンから参戦している。トヨタの豊田章男社長がモリゾウの名前でドライバーとして参戦していることでも有名で、今年も参戦している。

技術的なハイライトとしては水素はガソリンと比較しエネルギー密度が低いため、出力が出しにくいという特徴がある。が、水素カローラはガソリンエンジンレベルにまでパワーは上がり、実用へ一歩近づきつつあるのだ。

水素カローラはモリゾウ、全日本ラリーの勝田範彦らがドライブ

水素カローラは今回の24hで478周を走り完走している。とは言え課題はまだまだあり、さらなる改良が必要とされている。例えば、燃料噴射用インジェクターはレース中に交換が必要で、つまり、ガソリンや軽油用のインジェクターは一般的に存在はしているものの、水素用は存在しないので、そうした専用パーツの開発も必要になってくるわけだ。またシリンダー壁面への付着物もあるという説もあり、まだまだ実用にはハードルが高いことになる。だが、未来を見据えた挑戦は継続するという。

Zがカーボンニュートラル燃料で初参戦

そして今季最大の注目はカーボンニュートラル燃料を使ったマシンでの参戦だ。これはトヨタがGRヤリスの3気筒エンジンG16E型を排気量ダウンさせてGR86に搭載して参戦。またSUBARUはBRZにノーマルのFA24型エンジンにCNFを使用して参戦している。そしてもう一台が日産のZだ。新型ZのV型6気筒ツインターボエンジンにCN燃料を使用して参戦したのだ。

カーボンニュートラル燃料を使用する230号車の新型Z(左)

そのZは、初参戦ということもありレース途中でエンジン交換作業を行なっている。詳細は不明だがCNFは過給器付きエンジンには少し課題があるようだ。CNFはガソリンのJIS規格に適合しているものの、ハード部品への攻撃性などは未知。こうした過酷なレース環境で使用してみてデータを集めているというわけだ。

一説ではシリンダー筒内圧力の高いターボ車だと、課題がありNAエンジには比較的攻撃性は低いという話だ。そのため、SUBARUのBRZはエンジンに関してこれまで一度もトラブルがなく、今回の24時間レースでもミッショントラブルが発生したものの、エンジンは問題なかったという。

またトヨタのG16E型もターボ搭載しているが、Zほどの出力は出していないためか、特にトラブルは発生していない。しかしながら熱の課題はあるということで、CNF用対策は必要なようだ。そしてGR86のレース内容ではBRZと同様ミッショントラブルが起きてしまい、2時間ほどのピットストップを余儀なくされていた。

GRヤリスのエンジンに換装して参戦するGR86もカーボンニュートラル燃料を使用

マツダは別タイプの燃料でバイオディーゼル燃料をマツダ・デミオの1.5Lエンジンに使用して参戦した。が、やはりパワーが欲しくなるのだろう、今回1.8Lに排気量を上げ、マツダ2に変更して参戦したが増大したトルクに対応するトランスミッションがなく、ミッションケースが破損するトラブルなどがあり、24時間の完走は達成できなかった。

だが、こちらのバイオディーゼルはすでに実用域にあるようで、性能課題というより、生産量や生産速度の課題と価格という別のフェーズに入っている。精製ノウハウが広くエネルギー会社に共有されることになれば、製造量や価格の課題も解決に向かうことになると思う。

新設計のパーツで挑むSUBARU BRZ CFN Concept

オートプルーブが注目しているSUBARU BRZ CFN Conceptマシンは、本社の技術本部が開発をしており、しかも若手社員が中心となって人材育成を踏まえた参戦をしている。そのためレースマシンではあり得ないことも多々あり興味深い。

例えば、サイドミラー。こちらは純正のままで側方からの接近ではミラー内にアラートの点滅機能まで残しているのだ。こうした量産技術がモータースポーツでも使えるのでないかという実験も兼ねているので、常識を覆すような試みにも期待が膨らむ。

BRZ CNF Conceptは最後尾からのスタートとなった

今回の24時間レースではCNFに合わせたエンジンのリファインを行なっており、わずかながら出力もあがっているという。また開幕戦の鈴鹿では苦労したサスペンションを含むジオメトリーも刷新され、ドライバーからも楽に運転できると好評だった。

本井監督に聞くと、これまではダイナミック性能を見る運動性能実験部を中心に開発を進めていたそうだが、鈴鹿を終えてからは、設計部も参加しているという。理想の走りを求めるためには、ノーマルのままでは対応の限界があり、新規に設計の仕直しも必要ということだ。

そのため、今回のマシンには新設計したパーツもあり、ジオメトリーの見直しにより最適化されたというわけだ。ドライバーの井口卓人も鈴鹿からの進化を認めており、かなり楽に走れると高い評価をしていた。

最後尾から井口が怒涛の追い上げ

そうした経緯もありマシンは高いレベルに仕上がっていたものの、予選のAドライバーの時にエンジン制御の不具合が生じ、ほぼ計測できない状態になってしまった。そのため、決勝レースは最後尾からのスタートという重荷を背負ってのレースとなった。

しかしながら、制御は書き換えられ通常の性能が確保できたため、決勝では怒涛の追い上げがレース序盤に、井口卓人によって魅せられたのだ。56位から数周で中段グループに復帰しBRZ CNF Conceptの戦いが始まった。

その後は順調に周回を重ね、レギュラードライバーの井口卓人、山内英輝、SUBARUの実験部に所属する廣田光一さんに加え、全日本ラリーにWRXで参戦している鎌田卓麻とプローバの社長、SUBARU車で数々のレースに参戦してきた吉田寿博さんが加わり5名での24時間レースに挑んだ。

SUBARUチーム。左から井口卓人、山内英輝、廣田光一、鎌田卓麻、吉田寿博の5選手で24hを戦う

明け方のミッショントラブル

マシンも好調で乗りやすく、我慢しないで走れるマシンは順調に周回を重ね、レース開始14時間まではノートラブルで走行していた。そのため総合でも20位付近まで上昇したが、明け方にミッショントラブルが発生してしまった。

ドライバーの鎌田卓麻によれば、6速にシフトした状態からシフトが戻せなくなったということで、緊急ピットインした。チェックの結果、ミッション交換をする。だが、そこでスペアのミッションもシフトがスティックする状況が発生したのだ。そのため原因究明の時間が必要となり、結果的に1時間20分ほどのピットストップでレースに復帰した。

ノートラブル完走を目標としたBRZ CNF Conceptだが・・・

GR86はBRZよりも先にミッショントラブルを深夜2時ごろに起こし、2時間ほどピットストップしている。そのため、明け方、BRZがレースに復帰したときにはGR86に18周のリードを持っていた。

レースはBRZが624周しGR86が609周で15周の差でBRZに軍配が上がって終了した。ST-Qクラスは各社の開発マシンということで、車両規則を含め規制範囲は広く大幅な変更が可能になっている。さらに、排気量や出力などの規制もないため順位をつけるには平等制に欠けるため、順位表彰は行っていない。

次戦は7月9日、10日のSUGOで3時間レースのWヘッダーになるが、両チームともトラブルが出ており、また「いいクルマ」になるまでにはまだまだ開発の余地がたくさんあるということで、次回までに何が変更されてくるのか楽しみに待ちたい。


The Mortor Weekly

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