スーパーGT富士公式テスト スバル BRZ GT300

スーパーGT 2019
スバル STIの先端技術 決定版 vol.32

2019年シーズンのスバルBRZ GT300はウインターシーズンに多くのテストを重ね、空力性能、メカニカルグリップ、燃費、タイヤなどさまざまな項目でのレベルアップを狙って開発が続けられている。3月中旬の岡山国際サーキット、3月末の富士スピードウェイと公式テストをこなし、スーパーGT2019の開幕に向けて準備を整えている。

スーパーGT富士公式テスト スバル BRZ GT300

岡山の公式テストは極寒で

その公式テストでの手応えを渋谷総監督に聞いてみると、オフ・シーズンのテストは昨年、一昨年に比べると走り込むことができているという。もちろん、その都度課題は出てくるものの、そうした課題や問題点をテストの中で吐き出し、本番に向けて準備を進めている最中といったところだ。

新しいフェンダー形状になった19年仕様のBRZ GT300
新しいフェンダー形状になった19年仕様のBRZ GT300

岡山では気温が低く路温もかなり低かったようだ。路面温度で7度くらいから高くても19度がせいぜい。走行時でも13、14度程度だったため、今季の狙いであるロングライフタイプのタイヤのテストはこなせなかったという。

渋谷総監督によれば、今季の300kmレースではタイヤ無交換チームが多数ある、と予測し、チームとダンロップは、グリップを落とさず、走りきれるタイヤを開発するとの目標を共有化し進めているという。そのため、この岡山でのテストでは、そうした性能要求に見合うタイヤかどうか?テストを重ねたいところだったが、なかなか思うようにいかないということだ。

ただ、ドライバーの山内英樹選手からは「一発の速さは昨年より速く走れるようになったので、その強みは今季あります」という話があった。したがって、マシン全体のレベルアップはできていることは間違いないだろう。だが、レースは300km以上の耐久レースなので、ロングランテストが重要なポイントになるわけだ。

2018年の岡山の開幕戦は、準備不足があり交換予定のパーツが間に合わないなど苦しい開幕戦になったが、今季はそうしたことにならないように取り組んでいる。また、サーキット自体が路面のμが低いこともあり、いかにグリップさせるかがポイントになると言う。「BRZGT300にとって、決して苦手なコースではないですし、ウエイトハンデもない状況からのスタートですから、ぜひとも今年はポイントを獲得したいですね」と渋谷総監督。

19年仕様の変更点

スーパーGT2019の開幕を2週間後に控え、3月30日、31日の2日間、富士スピードウェイで公式テストが行なわれ、チームは狙いのひとつ、ロングランをメインにテストに臨んだ。

FSWでの公式テスト。テストでもこれだけのファンが駆けつける
FSWでの公式テスト。テストでもこれだけのファンが駆けつける

マシンの変更点はこれまでもお伝えしてきているが、見た目で異なる点はフロントカウルの形状変更だ。低ドラッグ、高ダウンフォースが狙いのエアロで、フロントフェンダー前部にバルジを設けボディサイドとフェンダー上部を流れる空気の動きを制御している。

前面に当たった風はボディサイドに這うようにながれ、上部はダイレクトにウイングにあたる流れをつくった
前面に当たった風はボディサイドに這うようにながれ、上部はダイレクトにウイングにあたる流れをつくった

前面にあたる風がボディサイドから剥離していたのを、ボディに沿うような流れに変え、タイヤハウス内の空気を引っ張り出せるような空力設計にした。またフェンダー上部に流れる風はそのままダイレクトにリヤウイングへ流れるので、ダウンフォースが稼ぎやすくなり、その分、リヤウイングを寝かせることが可能になった。そのためドラッグを減らしながらダウンフォースを得ることができる形状になったという。

スーパーGT富士公式テスト スバル BRZ GT300

また、昨シーズンの後半に投入したサードダンパーだが、こちらはブレーキング時にピッチングを抑える効果があるので、有効だがコーナリングにスタビの動きを邪魔してしまうため、使いにくいコースもあったという。そのため、リンクを増やし、コーナリング中のブレーキングにも影響しないようにする2リンクタイプ形状へと変更している。

さらに、トランスミッションでは、リダクションギヤを新規に設定したので、ギヤ比のバリエーションは増やせたのでより細かく設定できるようになっているということだ。

これらの変更もあり、18年モデルより戦闘力があがり、ラップタイム向上につながるはずだ。

苦手の富士でも好タイム

一方、今回の富士のテストでは、路温が低く、狙ったとおりのテストができない歯がゆさがあったようだ。午前中1回目のテストでは井口卓人選手がドライブし、39ラップを走行。全体を見渡すとラップ数的には多い方だった。ベストタイムはGT300クラス全体5位で、トップとの差は0.5秒程度だった。

ちなみに1回目は25号車HOPPY 86MCがトップタイムをマーク。続いて10号車ゲイナーTANAXGT-R、34号車Modulo KENWOOD NSX、2号車シンティアム。アップル・ロータスという順。

この富士スピードウェイは国内でもっとも高速のサーキットで、コーナリングマシンと言われるBRZGT300は、苦手の部類に入るコースだ。勝ちにいくには厳しく、少しでも多くのポイントを狙うということがこれまでは要求されていた。

そのため2018年のシーズンは、その直線スピードを追求し得意のコーナリングで思うように走れないという苦い経験もある。しかし、今季のマシンのトップスピードは、前年並みにキープしながら、コーナリングでも速さがあり、1回目のセッションを見る限り、苦手と言われていた富士でも上位が狙えそうなタイムを記録している。これも前述のエアロ、ギヤレシオ、姿勢制御の効果が出ている証拠だ。

はがゆいロングランテスト

2回目、午後のセッションは、路温が上がることを期待して、今季から新規投入となるロングライフタイプのタイヤを装着してのロングランテストだ。合計で61ラップをこなしたものの、やはり路面温度が低く実際のレースでどれだけのパフォーマンスとなるのか、という点では評価しにくい結果になってしまった。

周回数はGT300クラス全体で最も多く、それなりに手応えはあったように見えた。しかし、渋谷総監督によると、後半からエンジンに不調の兆しがあり、喜べる状況ではないということだ。

2日目。3回目のテストでは21ラップを周回。やはり路面温度が低く17度程度で思うようにテストは進まないが、午後に向けてメカニカルグリップをもう少し、あがるように調整して最後のセッションに臨むことになる。

しかし、エンジンの調子は改善されず、逆に悪化していく。午後の最終セッションが始まってもなかなかピットを出られず、調整、コースイン、再調整、コースインを繰り返すも不調は改善されない。

結局、セッション終了間際、エンジンは復調し山内選手は堰を切ったように猛ダッシュをするが、わずか2周しか走行できずセッションが終了してしまった。が、タイムは全体4位のタイムで、冒頭、山内選手が言うように一発の戦闘力は確実にレベルアップしていることがわかる。

テスト終了後に渋谷総監督に話を聞くと、エンジン不調について、すべての信号は正常に作動しているので原因特定に時間がかかってしまったという。燃料系や電装系を疑いつつ、燃費の悪さもBRZGT300は抱えているため、燃費改善の燃料マップを変更しトライもしていたという。そうしたことも特に問題としては浮かんでこなかったという。結果としては燃料系部品に原因があったようで、交換することで解決している。

前述のように富士は得意とは言い難い直線スピードに勝るマシンが有利で、トップスピードの低いBRZ GT300には辛いコースだ。だが、今季は直線スピードの追求ではなくラップタイムの追求によって、速さを向上させている。

大きな期待がかかる今季のBRZ GT300
大きな期待がかかる今季のBRZ GT300

山内選手が言う「一発の速さはある」という言葉どおり、まさか、その富士でもトップに迫るタイムが出せていることが証明していると言っていいだろう。予選で前にポジションし、レースを牽引する姿が想像できるが、残すはロングランでの信頼性だ。

開幕までもうテストのチャンスはない。あとは開幕戦の土曜日の朝のセッションで、どこまでロングランができるか?タイヤはどこまで持つのか?試すしかない。開幕戦には大いに期待してもいいだろう。

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