スバル 今も中島飛行機のDNAを受け継ぐスバル・ブランドの核心「航空宇宙カンパニー」

雑誌に載らない話vol212

スバル テックツアー 第7弾

2017年はスバルにとって、ひとつの節目の年にあたる。最も大きなトピックは4月1日に従来からの「富士重工業」から「スバル」に社名を変更したこと、それと同時に産業機器部門を自動車部門に統合を行なうなど、事業の集中を進めていることがある。そしてもう一つの節目となるのが、スバルの起源となる中島飛行機が設立された1907年(大正6年)から数えて2017年は100周年になるということだ。

■航空機メーカーとしてのDNA

中島飛行機は1907年に飛行機研究所から日本飛行機製作所を設立し、その後中島飛行機へ社名変更。太平洋戦争時まで陸海軍の需要に応え、軍用機、航空用エンジンの製造を行なう日本最大の航空機製造会社として1945年まで存続した。

スバル 群馬製作所 技術本館 空撮イメージ
現在のスバル群馬製作所・技術本館は中島飛行機時代からの建物で、上空から見るとエントランス、本館、後方建屋が飛行機の形になっている

敗戦により富士産業に改称したが、占領軍により解体が命じられ企業分割されていった。その後、1950年から53年にかけて、分割されていた企業が改めて合同し、富士重工業が発足し現在のスバルに至っている。

そして注目すべきは、富士重工として再建してすぐに航空機生産が開始したことで、1945年から1953年まで一貫して航空機の生産事業に関わっていることだ。

1958年にスバル360が発売され、富士重工は自動車メーカーとして大きな成長を遂げたが、その自動車を設計・開発したのも中島飛行機のエンジニア達であったことも有名だ。

そして企業としてのもう一つの柱が航空機製造で、現在の航空機部門は「航空宇宙カンパニー」と呼称している。つまり現在のスバル・ブランドは自動車メーカーと、航空機メーカーという2つの顔を持ち、特に100周年を迎える航空機ビジネスは、スバルのDNAを象徴する存在なのだ。

スバル 半田工場
ボーイング787の中央翼を製造する半田工場

現在の「航空宇宙カンパニー」は、宇都宮製作所と半田工場(愛知県)を本拠とし、防衛省向けの小型機、ヘリコプター、無人機の納入と大型機を含めた複数の機体の生産分担を行なっている。また、民間機向けではボーイング社、エアバス社の旅客機の分担生産を行なっている。

■ボーイング787の中央翼を製造

スバルの航空宇宙カンパニーが製造するボーイング社の旅客機では747、767、777の機体の一部を分担製造した歴史を持ち、現在では最新の旅客機、ボーイング787の中央翼(ウイング・ボックス:翼を支持する構造体)の製造が主力事業となっている。

ボーイング787−8 スバル製中央翼
スバル中央翼体感フライトを行なった日本航空のボーイング787-8

ボーイング787は、ボーイング社の方針により国際的な製造分担を行なっており、前部胴体は川崎重工、中央胴体はイタリア、主翼は三菱重工など多くの航空機関連企業が製造の分担を行なっている。中でもスバルは大荷重を受ける中央翼の製造を半田工場で行なっているのだ。

スバル ボーイング787 中央翼の役割

ボーイング787は新世代の中型旅客機として開発され、高出力・低燃費エンジンと、機体の約50%におよぶカーボンファイバーを採用したことが特長だ。スバルは中央翼、主脚収納部の製造を行なっているが、特に中央翼は500トンの荷重に耐え、内部は燃料タンクとなっているため液密構造で、さらに耐避雷性能も備えている。

ボーイング787 スバル製中央翼の位置
主脚の間の内部のフロア下部が中央翼に相当する

この部分はカーボンファイバーとアルミ合金、チタン合金の複合構造で、精密な製造公差も要求されている。部品の厚さは0.3mm以下、ボルト径は0.1mm以下、穴とボルトの隙間は1/100mm以下の公差精度だという。

中央翼に使われている材料のCFRP、アルミ、チタンなどの材料を適材適所で使い分け、構造同士を結合するボルトも787の中央翼では2万本以上を使用ししているという。一本一本が強度計算され、求められる性能が十分であることを確認しているわけだ。

ボーイング787 スバル製中央翼の構造
ボーイング787の中央翼の構造

中央翼では一番厚い高負荷の部材はCFRPのシートを100枚以上も積層し、飛行機が一生のうちに使用する最も厳しい飛行条件のさらに4倍程度の力が作用しても壊れないように設計しているという。

スバルの民間旅客機製造実績
民間旅客機の機体の製造実績

品質を保証するため、中央翼の製造工場では、製造の各作業工程ごとの検査、確認、そして誰が作業したかなどのトレーサビリティなどにより完璧ともいえる品質保証を行なっているのが特長だ。これが航空機品質なのである。

もちろんこうした航空機製造での技術や思想、ノウハウは自動車部門の設計や製造にもフィードバックされ、スバル全体でのモノ作りのフィロソフィーとなって確立されている。

スバルはボーイング787の中央翼を2008年から納入を開始しており、787は2011年から就航を開始している。ちなみに787の最初の納品は全日空で、全日空における就航は2011年11月から。日本航空は2012年4月からで、世界の航空会社に比べ、全日空がトップ、日本航空が2番手と早い時期から787を積極導入している。

スバル ボーイング787 中央翼体感フライト

スバル ボーイング787 中央翼体感フライト

スバルは、こうした航空宇宙カンパニーの存在を広く知ってもらおうと、メディアと「スバルWEBコミュニティ」に参加しているスバル・ファンに向け、10月下旬に「スバル中央翼体感フライト」を行なった。このフライトは日本航空のチャーター便で国際線仕様の787-8により行なわれた。チャーター便は成田-旭川を往復。日本航空の協力により、BRZの空輸などのデモも行なわれた。

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