SUBARUは2024年4月19日、アメリカの半導体メーカー「AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)」とアイサイト用に、ステレオカメラの認識処理とAI推論処理を融合させ最適化したたSoC(システム on チップ)に関する協業を開始することを発表した。
アイサイトなど先進ADASの開発を担当する柴田英司執行役員によれば、スバルはアイサイトの画像認識のAI化を目指し、各種の先進半導体メーカーと模索を続けてきたという。最終的にAMD社が開発した「Versal AI Edge Series Gen 2」という名称の最新SoCを採用することになった。
この最新のチップは最先端のAI推論性能と高速の演算処理を低コストで実現し、しかもスバルが独自に開発・設計しているアイサイトの画像認識プログラムを組み込むFPGA(Field Programmable Gate Array:カスタマーの独自プログラムの組み込み)構造となっている。
2020年に登場した新世代アイサイトからはヴィオニア社製の広角ステレオカメラにザイリンクス社製のFPGA型SoCを採用しているが、そのザイリンクス社は2022年にAMD社に吸収合併されているため、奇しくも次世代のアイサイトはAMDのAI機能を備えたSoCを採用することになったのだ。
AI推論処理を備えた高性能半導体は、AMD以外にも各種存在しているが、スバルとしては全モデルへの標準搭載を前提としているため低コストであること、スバルが蓄積してきたステレオカメラによる画像認識技術をSoCに組み込むことができるFPGAにこだわるという条件から選択肢はそう多くはなく、AMDのAI推論処理ができる最新SoC「Versal AI Edge Series Gen 2」が選ばれたのは必然であった。 スバルはより低コストを目指し、不必要な半導体回路は削減するなどし、SUBARU用に特化させているという。
AMDのラミン・ローン副社長は、最新の「Versal AI Edge Series Gen 2」を使用すれば自動運転レベル2+からレベル3までをカバーできると語っている。
しかし、従来からスバルはレベル3の自動運転技術に関してはそれほど積極的ではなく、2030年にSUBARU車での交通死亡事故ゼロを目指し、よりハイレベルな高度運転支援システム(レベル2+)を追求することにしている。
しかもアイサイトは200万円台の車両にも標準装備するシステムであるため、高コストなLiDARの採用には否定的で、あくまでもステレオカメラ+広角単眼カメラ+側方ミリ波レーダーという現在のセンサー類で対応しようとしている。
ではAIを活用する次世代のアイサイトはどのような機能となるのだろうか。
それは従来の画像認識技術では検知できない障害物をAI技術でより正確に検知できること、あるいは道路の車線がない地方道路でもAIにより進路を推測し、レーンキープ機能を作動させるなど従来のアイサイトでは難しかった領域にまで運転支援を拡大することであろう。
柴田英司執行役員は、AMDのSoCを前提に次世代アイサイトの開発を開始し、2020年代後半には量産化を実現したいと語っている。