スバル 高精度AIでエンジン部品研削加工の品質保証を実現

スバルは2022年2月9日、群馬製作所大泉工場で富士通と共同で開発してきたエンジン部品加工工程での研削加工品質を、高精度に判定するAIモデルの本格稼働を1月末~開始したと発表した。

スバルと富士通は、2019年12月から2020年12月まで、カムシャフトの研削加工工程の品質保証にAIモデルを活用する実証実験を実施している。さらに量産運用を想定した「COLMINA現場品質AI」の開発・実証を2020年8月から2021年12月まで実施し、点在する複数の設備に組み込まれたリアルタイムな稼働監視や、長期的な品質維持を実現しつつ、AIモデルで加工中の全カムシャフトの品質をリアルタイムに推測可能なことを確認し、本格稼働を開始した。

高い加工精度が求められるカムシャフト

富士通と共同開発してきた加工プロセス監視は、カムシャフトの表面粗さや表面形状などの加工品質を高精度に判断し保証するAIモデルを用いた実証実験では、1年間にわたる量産での研削加工工程で、AIモデルが高精度に加工品質が予測でき、実運用でも確実な品質保証が期待できる結果が得られている。

一方、AIモデルは設備の経年劣化や環境変化により予測精度が低下する懸念があり、製造現場でのAIモデルの本格運用にあたっては、精度維持のための定期的な確認と精度低下時のAIモデルの再学習、エッジデバイスへの再導入を繰り返し実施する仕組みや、これを担う人材が必要であった。また、AIモデルを効率良く運用、展開するためには、点在する各種設備の膨大なデータを一元管理し、リアルタイムに処理する仕組みも必要であった。

そこで両社は、これらの課題解決に向け、AIモデルの管理を支援する「COLMINA現場品質AI」を量産工程に適用した実証を2020年8月から2021年12月まで行ない、合わせてAIモデルの開発から運用までの業務推進手法を体系化することで、大泉工場でのAIモデル本格稼働開始に至ったのだ。

AIモデルの本格稼働により、大泉工場をはじめとしたスバル群馬製作所全体でのリアルタイムデータを活用した品質保証レベル向上に向けたAI活用基盤が確立したわけだ。

この新しいシステムでは、エンジンのカムシャフト研削工程で研削設備に接続したセンサーから、全カムシャフトの主軸動力値や振動のセンシングデータを、エッジデバイスを介して収集。収集したデータをベースにしたAIモデルで推測した品質状態が、品質基準値の範囲内かどうかを判定し、設備側へフィードバックするようになっている。

また「COLMINA 現場品質AI」をAIモデルと連携させて導入することで、複数の設備に組み込まれたAIモデルの一元管理を実現。予測精度が維持されているかどうかをAIモデルの推論結果と検査結果を照らし合わせて常に監視し、予測結果を蓄積・評価することで、AIモデルのチューニング時期が判断でき、必要に応じてAIモデルの再学習と展開が可能になっている。

これらの成果により、従来の抜き取り検査を主体とした製造品質検査と比較し、品質保証レベルの向上になっている。

同時に、専門性の高いAIの技術者でなくともAIモデルの現場適用を実施可能にするなど、生産工場のレベルアップを実現している。今後、スバルと富士通はこのAIシステムを群馬製作所全体に横展開する計画だ。

エンジン内部の運動部品は、高い精度が要求されるが、従来は量産の過程で一定数発生する規格外の部品を検査し、除外する作業が必要であったが、デジタル/AIシステムを導入することで、規格からはずれた部品の発生自体を解消することが可能になり、高精度部品の品質管理、より均一なエンジン性能の実現において大きなステップということができる。

富士通 公式サイト

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