「XV」は、もともとインプレッサの先代モデルに2010年からハッチバックをベースとしたながらSUV的なデザインを持つグレードとして設定されており、今回のインプレッサXVは2代目となる。そして今回のフルモデルチェンジを期に、より本格的なクロスオーバーSUVへと変貌させて誕生したモデルなのだ。
タイヤは225/55R17と大径サイズで、シャシーを底上げして最低地上高200mmを確保し、前後ホイールアーチ部にはオーバーフェンダー処理を加えなど、どこから見てもクロスオーバーSUVらしさを感じることができるようになった。ベースのインプレッサはバランスのよいロングルーフのハッチバックフォルムを持つが、面のつなぎ部分でエッジを立て、強めのボディ表現をしているため、車高を高くし大径タイヤを装備したことで、デザイン的にもコンパクトなクロスオーバーSUVらしいまとまりを見せている。
開発コンセプトは「アーバン・アドベンチャー」で、まさにそのキーワード通り、都会型のクロスオーバーSUVを指向したモデルだ。コンパクトクラスの都市型クロスオーバーSUVはこれまで、VWクロス・ポロ、日産ジュークなどが代表的なモデルで、全長4.2m前後の乗用車派生SUVとして定着している。インプレッサXVもまさにそのカテゴリーに相当するモデルだ。その一方で、スバルとしてはアッパークラスにレガシィ・アウトバック、本格的SUVのフォレスター、そして今回登場したXVという3車種のSUVファミリーのラインアップが完成し、オールラウンドSUVに発展したフォレスターより、都市型のコンパクトサイズのクルマとしてXVがポジショニングされることになったわけだ。
そのため200mmの最低地上高でありながら、全高はオプションのルーフレールなしで1550mmとされ、都市部の立体駐車場にも適合するサイズになっている。その一方で、全グレードがアクティブトルクスプリット式AWD、地上高200mmといった設定で、不整路での走破性も確保し、デザインだけのクロスオーバーSUVではないことも主張している。また細部では、見切りのよい視界、取り回しのしやすさ、アイサイト装備モデルの設定などもXVならではのアピールポイントになっている。
2.0LのFB20型エンジン、6.3の変速比幅を持つリニアトロニックCVTを始め、ハードウエアはほぼインプレッサと共通だ。低速から滑らかにトルクが立ち上がるエンジン特性、「I」モードでは100km/h巡航が1900rpmという低回転になるギヤリングなど、パワートレインの設定も余裕があり、市街地から高速道路までストレスなく走ることができる。なお運転モード切替の「S」モードと「I」モードは、CVTの制御の違いで、「S」モードでは100km/hで2300rpmとなり、加減速でのレスポンスが重視される設定だ。
しかし、インプレッサと同様にエンジンを始動するとデフォルトで「I」モードになり、運転中は視認しにくいサイドブレーキ左側側面にある「S」スイッチの操作性は好ましくない。また始動時には「I」モードに戻ってしまうのも日常使用ではわずらわしい気がする。エンジン出力制御は行われずCVTの制御のみの違いということであれば、運転状態をモニターすることで自動的にアダプティブ制御してくれれば切り替えスイッチも不要になると思う。
走り出すとすぐに体感できるボディ全体のしっかり感、安心感はもちろんインプレッサと同様だ。ステアリングの正確さや操舵フィーリングも一級品だ。ただ惜しむべきはインプレッサと同様にステアリングホイールの重量が過大でイナーシャの大きさがフィーリングをちょっとスポイルしている。
タイヤサイズが大きいだけに路面との当たりが低速時は少し固めに感じるが、コーナリングでのロール感はしっかりとしたフィーリングで、しなやかさがうまくバランスし気持ちよい乗り心地といえる。実はXVはベースのインプレッサより車高が高いため、スタビライザーの径をワンサイズ太い2mmアップとし、リヤサスペンションの対地キャンバー変化量を少なくするため、ハブキャリアの形状によりジオメトリーを小さくするなどXV専用チューニングが加えられているのだ。したがって、車高の高さを感じさせない軽快なハンドリングを味わうことができるわけだ。
4輪ディスクのブレーキのがっちりしたフィーリング、ブレーキ時のピッチングの抑制具合などもよい感じで、長時間乗っても疲れは少ないはずだ。その一方、最も気になるのがエンジンルームから進入するエンジンのざらざらとした感じのメカニカルノズだ。このノイズだけは何とかして欲しいものだ。
インプレッサXVは、日本でも予想以上に好評で、やはりアイサイト付きのモデル、専用色のタンジェリンオレンジ、デザートカーキが好評だという。また、アメリカやヨーロッパでも販売は延びている。クルマ全体のバランスのよさ、扱いやすさ、実用燃費の良さといった点で評価できる個性派モデルということができる。