フォレスターは、すでに従来モデルから予兆はあったのだが、今回のモデルチェンジで大きく商品ポジションを変えた。新型フォレスターのポジションは「オールラウンドSUV」、開発コンセプトは「SUVとしての本質的な価値の実現」で、いわばグローバルに通用する本格的SUVを目指すことになった。
初代、2代目のフォレスターは、ターボモデルをメインにしたクロスオーバーSUVで、ボディサイズはインプレッサとほぼ同等の全高1550mm前後、地上高を200mmとしていたが、3代目からはボディを拡幅して全幅1780mm、全高を1670mmへとサイズアップしている。今回登場した新型は、全幅が1795mm、全高1695mm、最低地上高220mmとなり、グローバルSUVのカテゴリーの中におけるコンパクトクラスにちょうど納まるサイズになった。それが可能になったのも、インプレッサ・サイズの「XV」がラインアップされ、スバルは日本でも海外市場でもSUVのクラス分けがきちんとできるようになったからだ。
新型フォレスターはプラットフォームも刷新され、センタートンネル径を拡大できたためトランスミッションも4速AT/5速MTからようやくワイドなギヤ比のCVT/6速MTにアップグレードすることができた。また、新世代の水平対向エンジン、自然吸気の2.0L(FB20型)と直噴+ツインスクロールターボの2.0L(FA20型)DITがラインアップされ、パワーユニット、パワートレインがともに最新のスペックになったことも見逃せない。
特に新たなフラッグシップ用となるFA20型は280ps、350Nmと、このクラスでも突出したパワー、動力性能を実現し、プレミアムセグメントのBMW X3 28iやアウディQ3 2.0を凌ぐ出力を得ている。なおこの2.0Lターボはダウンサイジング・コンセプトではなく、あくまでも2.0Lの高出力版という位置付けになる。
また新型フォレスターは、新たにプリクラッシュ&ドライバー支援システムの「アイサイト」を採用したこと、駆動方式はAWDのみといった点もユニークな特徴といえる。なおフォレスターのシンメトリカルAWDは高出力のDITエンジンも含み、これまで通りアクティブトルクスプリット式だ。ただし従来の駆動トルク、車速以外に舵角、ヨーレート、横Gも制御に追加することで新世代化され、大舵角時のタイトコーナーブレーキング現象が抑制され、車両の挙動安定化制御もできるようになっている。
パワートレーンの担当エンジニアは、「レガシィなどに採用されるVTD(遊星ギヤ式)AWDはよりスポーツ性能重視のコンセプトで、今回のアクティブトルクスプリット式はよりベーシックなタイプ」ということで、使い分けているようだ。
デザインは従来型が保守的なテイストだったが、新型はヘキサゴン+スプレッドウイング・グリルの採用、ホークアイ・ヘッドランプ、Aピラーを前進させたスタイリングなどはスバルのフォーマットを明確にしたといえる。
ターボ・モデルはフロントバンパーを専用にしてアグレッシブさを強調しているが、これは従来のボンネット上のエアインテークを廃止したためだ。エアインテークは視界、空力性能を考慮して廃止し、インタークーラー用のエアダクトがボンネット下側に仕込まれている。とはいえ、フロントバンパー形状はいかにもという印象がある。またデザイン的にはボディ側面の前後フェンダーのボリューム感が乏しく感じられた。
シートに座ってみると、着座位置が高めになっていることに気付く。従来型より36mmアップしているという。従来まではセダンよりは高めだが乗用車ライクなドライビングポジションが取れるぎりぎりの位置にしてきたが、新型は一般的なSUVのコマンドポジションとなり、見晴らしが良くなる点とリヤの居住スペースの拡大につながることになる。また室内の広さ感もこれまでより強調されている。
新型フォレスターは、サイドシルを奥に引っ込め、外側部分はドアで完全にカバーされる点が新しい。この利点は、乗り降りする時の足さばきが楽な点と、泥はねなどによりサイドシルが汚されることがないということだ。実はこれ、プレミアムSUVクラスが採用している手法なのだ。
機能面では、電動リヤゲートが2.0i Sアイサイトに標準装備(ターボ車はオプション)される。これは跳ね上げ角度メモリー式で日本の使用状況を考慮した作りだ。リヤシートの足元スペースも従来型より広げられ、長距離ドライブでも快適といえる広さがある。
インテリアのデザインはシンプルで、デザイン的に凝ったところやエモーショナルな部分はないが、仕上げ、質感は従来モデルに比べかなり向上している。今では、このセグメントのインテリアにおける質感のレベルは相当に高くなっているので、必須の要件だろう。
ステアリング・スイッチで操作できる「SIドライブ」は、NAモデルは「S」と「I」の2モード、ターボ車は「Sシャープ」が加わって3モードという違いがある。「I」モードはエコモードなのだがかなりエンジンの応答性が抑えてあり、動き出してしまえば気にならないのだが、停止から発進の一瞬が、要するに最初のタイヤにひと転がりの動きが意志より少し遅れるような気がする。その一方で、「I」モードでは100km/h時で1900rpm程度なので低燃費に貢献する。
走りはNAエンジンでも低中速トルクの強さと滑らかさがあり、クルマの性格によくマッチしている。2.0LのDITエンジンは、レガシィ用より20ps低められているがSUVとしては圧倒的な動力性能を発揮し、スポーツカー顔負けの走りができる。また低速トルクが大きいのでSUVとしてのマッチングも良好だ。このターボ・モデルの動力性能、硬派の走りはSUVカテゴリーの中でダントルだ。ただNAもターボエンジンも残念なのは、サウンドとしての気持ち良さはないという点だ。
乗り心地は驚くほどフラットで、しっかり感があり、新プラットフォームになって剛性感が格段に向上しているのが実感できる。なおNAモデルでは2.0i Sは18インチ・タイヤ、2.0i L以下は17インチタイヤという違いがあるが、乗り心地に関しては17インチの方が優れ、18インチではちょっと路面とのアタリがきつくなる感じだ。ターボ車はNAエンジン車よりかなり足回りが締められており、18インチでベストマッチだと思う。なお走行中の室内の静粛性も期待以上のレベルに仕上がっている。
電動パワーステアリングは、日立オートモーティブ製のピニオンアシスト式で、日本車の多くがコラムアシスト式であるのに対し、路面インフォメーションや操舵に対する正確さはピニオンアシスト式に分がある、このあたりはスバルがこだわっている所だ。
コーナリングでの初期ロールを抑え込んだフラット感は、ちょっと違和感を覚えるほどのオンザレール感覚。フロント・スタビライザー径をアップするなどし、全高が高めのクルマ特有のコーナリング初期にぐらっとする横揺れを抑えたいという意図のようだが、あまりにフラットなフィーリングのためにステアリングの切り込みに対して車体の反応が把握しにくく感じた。
新型フォレスターは、これまでのクロスオーバーSUV的なイメージから、オンロードもオフロードもタフな走りができる本格的なSUVのイメージに変化させようとしている。実は従来のフォレスターでもオフロードでの走りの能力は、FFベースのSUVより相当に高く海外市場でも評価を受けていたが、一般的なイメージとしてはオンロード寄りと受け取られることが多かった。そのため、今回のモデルではそのイメージを変えようということだ。
そのシンボルが「X-MODE」(2.0i以外のグレード)の搭載だ。滑りやすい路面やオフロードで、センターコンソールにあるスイッチを押すとXモードがオンになる。Xモードは、アクティブトルクスプリットAWDのクラッチ圧着力を高めて前後輪の締結を強め、4輪独立ブレーキ制御機能を使用してタイヤの空転を抑えるLSD機能、ラフロードでの急坂を下る時の車速を自動的に一定に保つヒルディセント機能を一つのスイッチに集約したものだ。
このスイッチをオンにすることで、前後の片側輪が完全に空転するような状況でも発進でき、急な下り坂で20km/h以下であればアクセルやブレーキの微調整なしに下ることができるわけだ。AWD車であれば厳しい路面で同じように走ることができるわけではないので、AWDの性能をより強調できるXモードは、フォレスターの特徴をよく表している。
新型フォレスターは、パッケージング、走りの質感など多くの面で1クラス上にグレードアップし、アウディQ3やBMW X3にフォーカスした路線は間違っていないと思う。