【スバル】アイサイトとフットワークに進化が感じられたレガシィの年次改良

マニアック評価vol61
富士重工業は震災の影響もあり、毎年5月に行っていた看板車種レガシィの年次改良を2011年は6月14日に実施した。内容については既報の通りだが、その後行われた試乗会の模様をお届けしたいと思う。

↑アイサイトも強化され、追従性や衝突回避など、より安全性も向上している新型B4

年次改良といえども足まわりは入念に

2011年度の改良は現行モデルとなってからは2回目の変更となり、よりユーザーからの反応を反映した変更が行われている。目立つところではラインアップの見直しがあり、アイサイトを搭載している特別仕様車であったモデルが、新たに「アイサイト・スポーツパッケージ」として加わっている。

当初、アイサイトの装着率は30%程度と予測していたが、実際には80%近い装着率で、他の装備品とあわせて、組み合わせの自由度を上げる必要があったためだ。そのため、サンルーフとの共着が可能となり、そしてリヤのエンターテイメントであるディスプレイ装着車にもアイサイトが装着できるようになった。

↑リヤサスまわりに改良が加わり、リヤの接地性が高くなっている

そして足まわりの変更や、アイサイトそのものの精度や、制御の変更なども行われている。

まずB4とツーリングワゴンでは、リヤサスペンションのアッパーアームの軽量化が行われ、約2kg軽量化されている。またレガシィ全車でリヤのラテラルリンク取り付け部のラバーブッシュをピロボールとすることで、微小な外乱が入ったときのバタつきを抑えるようにしている。横力やブレーキ力が加わった時は常にトーイン方向に姿勢を保つことで安定性を高めて、リヤのグリップや接地感を向上させている。

一方、フロントではスタビの取り付けブッシュの硬度を上げ、より初期からスタビ効果を引き出す狙いがある。これらの改良により、コーナリング時のリヤの追従性が高まり、安心感の高いコーナリングが可能になったわけだ。またスポーツパッケージに装着されるダンパーはビルシュタイン製だが、減衰力の見直しが行われた。具体的には縮み側をやや緩め、伸び側を強めたイメージに変更している。

 

↑一部グレードにはチタンドレープ調パネルを採用している

 

アウトバックの魅力を引き上げる新装備

そして、アウトバックには新たに2.5LのCVT車をベースにしたアイサイト・スポーツパッケージがラインアップに加わった。これはビルシュタイン製のダンパーと18インチのタイヤを装着して、200mmのグランドクリアランスはそのままに、スポーティな走りをアウトバックでも楽しめるモデルとした。

 

↑アウトバックに追加された新グレードのスポーツパッケージ
↑ロービームはHIDを装備する

スポーツパッケージには専用のフロントグリル、リヤガーニッシュ、HIDヘッドランプ(ロービーム)、専用フォグランプカバーなどが装備され、通常は黒で塗られるフロント及びリヤバンパー、サイドシルもすべてボディカラーと同色で塗られ、厚み感や若々しさ、スポーティさを出している。

実際にステアリングを握ってみると、全体的にはしっとりしたフィールで、プレミアム感も感じられて好印象だ。走り出しや初期の入力でもしっかり減衰するので、フラットライドなフィーリングが得られる。また微低速でも、“アシ”が良く動いているのがわかる。そして、中速域でも高速域でも突き上げが強くなったりすることはなく、乗り心地は良好だ。

↑カーボン調加飾パネルやアルミペダルも装備する

ハンドリングにおいても初期応答はゆっくり目の反応だが、切り増ししても遅れることなく反応するので、安心してコーナーに進入していける。高速域でも直進安定性は高く、レーンチェンジでふらつくことはなく、ゆれ戻しもなくて収まりがいい。

今回のアウトバック・スポーツパッケージはサスペンション、ハンドリング、パワーユニット、ブレーキなどの性能バランスがよく、なにかどこかの機能・性能が突出していない、あるいは劣っていないので、ドライバーの中に浸透しやすかった印象がある。クルマとドライバーの意思疎通が取りやすく、細胞同士の親和性のようなものを感じたモデルであった。

 

↑18インチタイヤと新デザインのアルミホイール
↑ビルシュタイン製のショックアブソーバー

 

 

より自然で滑らかな作動に進化したアイサイト

アイサイトの強化も大きなポイントとなる。制御システムのソフトの成熟により、より運転者の感覚に近い加減速が可能になっている。旧タイプは前走車が急激な減速をすると、一瞬「ヒヤッ」として思わずブレーキを踏んでしまうようなことや、勢いよく発進されるとちょっと遅れて付いていくというようなことがあったが、制御が変更されてより自然な加減速ができている。そして単独クルーズ走行した場合、60km/hで走行中、下り勾配ではスピードが上がってしまったが、元々ブレーキ機能を持っているので、設定車速を保てるようにリセットした。

また自動ブレーキが働く時にVDC(車両安定装置)の油圧が作動するが、その際のプレッシャーを1.5倍に上げているという。旧モデルではフル乗車、フル積載で下り坂という条件の時に、自動ブレーキが作動した場合、その許容量が限界に近かったため、今回の改良で余裕を持たせるためにハード面での改良を行っているわけだ。

試乗会場では前モデルのアイサイトと今回進化したアイサイトの乗り比べができたのだが、前モデルでは自動ブレーキが作動した時に、やや緩めのブレーキがかかり、次に衝突回避のために強めのブレーキがかかっていたが、進化バージョンでは最初の段階でブレーキの制動力はマックスに立ち上がり、衝突回避を行うという違いは感じられた。

また前走車への追従やクルーズコントロールの改善などでは、坂道での設定速度も実際ブレーキがかかり、設定速度を維持する動きをしていたので、より日常で使いやすくなっている。追従機能でもドライバーが不安になるまでブレーキがかからない、あるいはアクセルが開かない…といったことが改善されており、積極的にクルーズコントロールを使うことができた。まさに、人間の感覚に近い加減速ができているわけだ。

 

↑ターンランプの点滅が確認できるインジケーターを全車に装備

文:編集部 髙橋明

 

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