スバルの新世代・水平対向4気筒エンジンはFB型 第3報

このほどスバルの新世代エンジンに関する技術説明が行われ、ほぼその全容が明らかになった。まずエンジン型式名は、FB型と発表。したがって、北米用の2.5LはFB25型、日本でメインになる2.0LはFB20型となる。

Funit

↑FB20型。オイルフィラー、レベルゲージ、オイルカートリッジの位置に注目

このFB20型のボア・ストロークは、84.0×90.0mm、FB25型は94.0×90.0mm。ボアピッチは98.4mmで、EZ系(6気筒)、EE系(ターボディーゼル)と同じ生産ラインで流されることが分かる。とはいえ、FB型のエンジンの骨格、部品は新設計である。

開発のコンセプトは、ストレスなく高回転域まで吹け上がるというボクサーエンジンの特徴はそのままに、燃焼効率を高めることで、環境性能の引き上げと扱いやすさの向上を狙ったという。「え? 今の時代に高回転まで狙っているの?」という気がしないでもないが、実際には6000rpm+アルファが最高許容回転数だろう。

具体的な開発の狙いは燃焼効率(燃焼速度)のアップと、平均有効圧力の向上=摩擦抵抗の低減をメインに、低中速トルクとレスポンスを高めることで扱いやすさ、ドライバビリティを高めることだ。そのため90mmというストロークを選定し、FB20型ではロングストロークに、FB25型はわずかにオーバースクエアとなっている。もちろんロングストローク化そのものが目的というより、燃焼室径をより小さくし、あわせてバルブ挟み角を狭めることで超コンパクトペントルーフ型燃焼室にし、燃焼速度を高めているわけだ。

バルブ挟み角はEJ20型(DOHC)との比較で41度→27度と大幅に縮小。吸排気のカム芯間距離は126mm→104mmと限界まで攻めている。なお構造的にはシリンダーヘッド部とカムキャリアは分離式とされ、生産性、整備性が高められている。

chamber camcarea

カム駆動はチェーン式となり、補機は1本ベルトで駆動されるサーペンタイン式だ。もっともチェーン駆動としたため、エンジンフロントカバーはアルミ鋳造製となっている。なおチェーン潤滑はオイルパン一体式である。

chain chead

FB20型はレギュラーガソリン仕様のため、圧縮比は10.5。ピストン頭部は浅皿形状になっている。動弁は、摩擦抵抗を減らすために、従来のダイレクト式からローラーロッカーアーム式に変更している。

なお、バルブ挟み角を狭めると燃焼室形状はコンパクトになり燃焼効率に優れた形になるが、その一方で吸気ポート形状が苦しくなる。レース用であればストレートポート、ストレート・インテークマニホールドも可能であるが、幅と高さに制限がある乗用車のエンジンルームではポートを含め大きな角度で曲げざるを得ない。

また高出力と低速トルクを両立させるためにはポートの形状、吸気をどのようにするか? が大きな問題であり、そのひとつの解決策が可変バルブリフト機構である。しかしFB型エンジンは従来から使用実績のあるTGVを選択した。

TGVは、、吸気量や流速をコントロールすることで、高効率な燃焼を得る仕組みだ。ポート図を見ていただくと、吸気ポート側にもTGV用の隔壁を設け、低速時にはTGVを閉じ、吸気を容積の狭い隔壁上部に流すことで吸気流速を高め、なおかつピストン頭部の形状に合わせてたて縦渦(タンブル)を生成し、均一な混合気を作ることができるようにしているのだ。

port

また、低負荷走行時には従来より大量のEGR(再循環排気ガス)を導入するため、着火性を高めるためにもTGVは採用される。大量EGRの導入は、低負荷走行時にスロットル開度を大きくし、ポンピング損失を低減させる狙いだ。

ユニークなことにEGRの体積効率を高めるために、ディーゼルエンジンのようなEGRクーラーを装備する。おそらくガソリンエンジンでは他に例を見ないと思う。ただディーゼル用のEGRクーラーは冷却コアを持つ本格的なインタークーラー方式が多いが、水平対向エンジンの場合はエンジン後部上面に左右のシリンダーブロックを接続する流水路を装備するため、FB型はここの内部パイプにEGRを流すことで冷却する水冷式EGRクーラーとしているのだ。

egr

吸排気カムにはそれぞれAVCS(可変バルブタイミング機構)を装備する。従来は吸気側だけであったが今回の新型FBエンジンから、吸排気の両方にAVCS装備したため、ある一定の条件ではミラーサイクル的な高膨張比運転も行うことができる。つまり、従来の油圧式の場合、エンジン停止時には片側ロックとなっていたが、吸気側のAVCSは初の中間点ロック式とした。そのため、中間ロック式ではエンジンを止めるとカムシャフトは中間位置で止まり、再始動時には状況に合わせて遅角側に作動させることも可能となり、早閉じ、遅閉じのいずれも可能になった。

avcsAVCS_thumb

排気マニホールドも新設計となり、等長エキゾーストマニホールドの集合部の体積を減らし、さらにその直下に触媒を配置し、始動時の熱損失を少なくして触媒活性化を早めている。なお燃焼改善により有害物質の発生量も少なくなっているため、触媒の貴金属容量は30%減、触媒コストは半減しているという。

冷却面では、燃焼室周囲を十分に冷却する一方で、シリンダーブロック部分は高温を維持する2系統冷却を採用。さらにボトムバイパス通路も新設して、暖気の促進をはかりシリンダー部の摩擦抵抗低減と冷却損失の低減の両立をはかっている。

摩擦抵抗を減らすために、ボアは真円加工、すなわちボアのボーリング時にはダミーヘッドを組み付け、軸力を加えた上で加工する。ピストン、コンロッドも従来レベルより約20%軽量化され、またバルブ駆動がローラーロッカーアーム式としたり、オイルポンプのリリーフ圧を低める2段リリーフなどによっても摩擦抵抗を低減している。エンジン重量は、アルミ鋳造フロントカバー、AVCSの4個装備などにより従来のEJ20型より少し重くなっている。

crowncrank2

conlod2conlod

これらの投入されたテクノロジーにより、FB型の性能は、燃費が約10%、加速性能は約3%、アクセル開度が少ない状態での加速、つまり実用域での加速でレスポンス、加速感の向上が実現しているという。

なお今回発表されたFB型は自然吸気に特化したチューニングが行われているが、シリンダーヘッド、ピストンやコンロッドなどを専用設計することでターボ化、直噴化が可能になると考えられる。

基本諸元

文:編集部 松本晴比古

関連記事

スバルの新世代・水平対向4気筒エンジン第2報

スバルの新2.5Lエンジン、フォレスター2011年モデルに搭載

スバル 公式Web

COTY
ページのトップに戻る