スバル・インプレッサWRX-STIに待望の4ドアボディ追加を考察 松田秀士動画レポート付

 

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7月1日、インプレッサWRX-STIシリーズがマイナーチェンジされ、ついに4ドアセダン・モデルが追加された。年改記号は「C」となる。

テスト&インプレッション by 松田秀士

年改というレベルのマイナーチェンジの内容は、フロントデザインの変更、インテリアの質感向上、ボディカラーに新色(プラズマブルー・シリカ)の追加などだ。またシャシー細部の改良を行い、意のままに操る愉しさを高める方向にチューニングした。

その結果、従来からの5ドアハッチバックのWRX-STIと、WRX-STI・A-Line、4ドアセダンのWRX-STI、WRX-STI・A-Lineという4車種となった。マーケットではWRX-STIとWRX-STI・A-Lineはほぼ50:50の販売比率であるが、セダンの追加により、5ドアハッチバックと4ドアセダンの比率も50:50になれば、という希望のようだが、やはり市場はセダンに傾くと思われる。

現行GRB系インプレッサ・シリーズは2007年7月にデビューしたが、それに先立ってアメリカでの発表は、5ドアハッチバックと4ドアセダンの両方がラインアップされていた。しかし日本では5ドアハッチバックのみのラインアップとであった。

主力となる1.5Lモデルは、永らくスポーツワゴンという名称のショートワゴンがメインになっており、ヨーロッパでの展開を考えると、やはりこのクラスは5ドアハッチバックが本流ということでの路線転換であった。また、遅れて10月に登場したWRX-STIも、同様に5ドアハッチバックをベースにしたワイドボディであった。

これは、世界ラリー選手権ではより全長の短い、特にリヤのオーバーハングの短いハッチバックボディが最適という理由からであった。ただ、従来からのWRX-STIの流れからいえば、セダンボディの設定が無いことは買い替えオーナーを失望させたことは確かだ。その後、日本でのインプレッサに4ドアセダンが導入され、ついに今回からWRX-STIにも4ドアセダンが設定された。

マニア垂涎のSTIモデル

 

インプレッサWRX-STIは、三菱のランサーエボリューションとともに世界有数のカルトカー(少数の熱狂的な支持者を持つクルマ)として認識されている。本質的にはどちらのクルマも世界ラリー選手権に参戦するためのホモロゲーションモデルとしてスタートし、実際にWRCに参戦するベース車になっている。

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また同時に、2.0Lのハイパワーターボエンジン、フルタイム4WDシステムを採用することで、圧倒的に高い動力性能、スポーツ性能を発揮し、路上でも独自のポジションを作り出した。市販モデルでもこうした高性能モデルが販売され続ける例は世界的に見ても少なく、日本だけではなくヨーロッパ、地中海、南米、豪州、東南アジア、アメリカなどほぼ世界中で熱狂的な支持者に支えられたカルトカーとなった。

カルトカーの宿命として、より高出力、より高価なブレーキやエアロ装備が常に求められていくことになる。インプレッサは、この路線をいくらか修正するために市場へ送り出したのがWRX-STI・A-Lineだ。2009年から5速AT、2.5Lターボエンジンという組み合わせで、高い動力性能やスポーツ性能、そしてロードカーとしてのプレミアム性を盛り込んだグレードとして新設定した。

実は、日本以外、主としてアメリカやヨーロッパでは、2007年から2.5LターボのWRXモデルは設定されていたが、それを国内にも設定したといえる。今回のWRX-STI・A-Lineは、スポーツ性と高級感を融合させた、プレミアムタンインテリア・パッケージをオプション設定し、より方向性を鮮明にしている。

5ドアハッチバックボディ(型式名WRX-STI=GRB/WRX-STI・A-Line=GRF)と、4ドアセダンボディ(型式名WRX-STI=GVB/WRX-STI・A-Line=GVF)の相違点は、全長が4415mm(GRB)、4580mm(GVB)と違うが、ホイールベースやトレッドは共通で室内スペースの寸法も同じだ。車両重量も1490kg(GRBは1480kg)と同等レベルで、オプションの18インチBBSホイールを選ぶと-10kgとなる。 なお、10・15モード燃費も10.4km/L、5速AT/2.5LのA-Lineは10.0km/Lで共通だ。

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ピロボールを使ったチューニング

 

今回のマイナーチェンジで行われたシャシーの変更点は、まずフロント・ロアアームの後ろ側のブッシュにピロボールを内蔵したこと。この部分は大径のすぐり入りブッシュであったが、常時入力が大きく、ゴムのブッシュ部に亀裂が入るのが常だった。ちなみにスバル・技術本部、車両研究実験1部主査の渋谷氏によれば、この亀裂は一定以上の成長はしない、とのことだが目に見える亀裂はあまり気持ちのよいものではない。

車両実験部 主査 渋谷氏

この入力が大きいブッシュの内部をピロボールとすることで、左右方向のトー、トレッドの剛性が向上している。もちろん気になっていた亀裂発生も低減されるだろう。

またリヤのメンバーと取り付けブッシュにもテーパー状の金属インターリングを採用し、トレッド及びトー剛性を高めている。当然ながら、リヤメンバーの取り付け剛性が高まれば、車両の落ち着き、安定性が向上すると同時に、ステアリング応答性も向上する。

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車高は5mmダウンされた。もちろんこれは低重心化と空力性能向上に効果がある。ただ、このためバンプストロークはぎりぎりの所になっているという。ダンパーとスプリングのチューニングは数%高め、スタビライザー径も太くしている。

この狙いとしては、よりダイレクト感を高める方向であり、イメージ的にはよりハード方向に振ったともいえるが、実際の乗り心地は特に変化はない。

空力性能の向上のため、フロア下面の両側にも大型の樹脂カバーか採用され、ほぼフラットなフロア形状になっている。なお、5ドアハッチバックのマフラーはボディ後端に横置きされ、セダンは左右独立式(レガシィタイプ)という違いはあるが、床面にほぼ埋め込まれるので空力特性は同等と思われる。

空力性能を示すcd値は公表していないが、セダンは大型のリヤスポイラーを装備しているにもかかわらず、ハッチバックより約5%(cd値で0.05)向上しており、最高速は5km/h高いという。

文:松本晴比古(編集部)

サスペンション解説&インプレッション by 松田秀士

 

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