6年振りのモデルチェンジを受け、日産新型ティアナが登場した。全長4880mm、全幅1830mmと大柄なボディサイズのセダンだが、主要マーケットのアメリカ(車名はアルティマ)ではミッドサイズ・セダンに分類され、トヨタ・カムリ、シボレー・マリブ、フォード・フュージョン、ホンダ・アコードなどがいる激戦区で戦うクルマだ。 レポート:松本晴比古 2014年3月のニュース
もちろん、このサイズのセダンは日本ではちょっと影が薄いのも事実だが、アメリカ、中国という二つの巨大市場で存在感を示す必要があり、グローバルで60万台を販売するためにクルマ造りの手は緩められないのはいうまでもない。
日産新型ティアナの開発コンセプトは「心地よさとともに走りを楽しむ大人な移動空間」とされ、ユーザーのターゲット層は50~60歳の子離れしたシニア層だ。コンセプトとしては初代の「モダンリビング」、2代目の「おもてなし」を継承しつつ、スポーティさ、意のままの走りというダイナミックな要素を盛り込んでいる。これはアメリカや中国の市場で、これまでより走りのイメージが欲しいという要望に応えたものともいえる。
このため、日産新型ティアナの訴求点は、「気品とともに胸の高鳴りを感じさせるデザイン」、「乗る人全員の快適を追求した室内空間」に加え、「運転する楽しさを味わう余裕のある走り」とされる。デザインは「オーラを感じさせる」もので挑発的で魅惑的、未来的なイメージを追及したという。
エクステリアは、これまでより更に伸びやかでワイド&ローな印象を強めている。ただしプラットフォームは従来型を継承しており、日産の最新のプラットフォーム戦略であるCFM(コモン・モジュール・ファミリー)ではないが、各コンポーネンツにはCFMの要素が採用されているという。
インテリアでは、シートが新開発のスパイナルサポート(脊椎支持)式となり、ベースモデル以上の2グレードには助手席電動オットマン、XVグレードに装備される部分本革フロントシートにはエアコン機能が付くなど快適性の向上が図られている。
試乗車は最上級グレードのXVで、本革シート、プラズマクラスター付きオートエアコンなども装備されている。タイヤもXVだけは225/55R 17、それ以外のグレーは16インチ・60タイヤとなる。価格は304.5万円なので、コストバリューはけっこう高いと思う。
シートもゆったり感があり、その一方でシートバックもしっかりしている。またメーターパネルのファインビジョンメーターは立体感のあるデザインで、質感も高いし見やすい。
アクセルを軽く踏み込んで発進すると、想像した以上の加速感だ。これはスロットルの早開き特性とCVTの特性をうまく組み合わせた感じで、フィーリング的には173psの2.5Lの直4とは思えない。また早開き特性とはいえ、違和感を感じるわけではなく、このあたりのチューニングはうまくできていると感じた。この出足感はやはりアメリカや中国で好まれるフィーリングで、意図的にチューニングされているわけだ。
2.5L・直4エンジンは中低速のトルク感も十分あるし、スポーティ感のある吹け上がりのエンジン音も気持ちよい。ただし、スロットルが早開きの分だけ、80→100km/hの中間加速は低速時の加速感ほどではない。もちろんクルージングはエンジン回転数も低いし余裕か感じられることはいうまでもないだろう。なおCVTの変速特性は、ECOモード、ノーマルモード、スポーツモードの3種類が設定されている。
新型ティアナは、走りに関しても派手ではないが細かな技を駆使している。リヤのマルチリンク・サスペンションの2本のロアリンクを連結するプレートの前側のロアリンクと結合部に新たに2個のブッシュ(コネクトブッシュと呼ぶ)を採用した新型ロアリンクを採用している。これによりサスペンションの横剛性を高めると同時にコーナリング時の横力によるトーイン変化、ブレーキ時のトーイン変化をより大きくすることができるのだ。
このためステアリングを切った時に、リヤがしっかり踏ん張ってグリップするフィーリングが実感でき、大きめにステアリングを切っても遅れがない素直なフィーリングである。さらにコーナリング時の内輪に自動的にブレーキをかけるアクティブトレースコントロール(トルクベクタリング)が装備されており、日常域でのコーナリングから山間部のワインディング路まで、大柄なボディサイズとは思えないほどステアリングの操作通りの走りができるのは大きな特徴といえるだろう。
ステアリングのフィーリングは軽いが、クラスなりの重厚感やしっとりしたフィーリングは希薄であった。
乗り心地はやや硬めなフィーリングだと感じた。サスペンションが硬いフィーリングというよりダンパーのフリクション感、タイヤとのマッチングなのか路面の段差との当たりが少しきつめに感じられた。このクラスのクルマの乗り心地はもう少しラグジュアリー感が欲しい。
もうひとつ気になったのが、路面から入ってくるロードノイズだ。もちろん滑らかな舗装路を走っている分には快適なレベルだが、路面の舗装が変化するとそれを忠実に反映してロードノイズが急変するのが気になるところだ。
日産新型ティアナは、アラウンドビューモニター(移動物検知機能付き)、リヤカメラを使った車線逸脱警報と後方車両検知警報、クルーズコントロールなどがラインアップされているが、これらはナビシステムとのセットオプションで30万円強となり、いずれは採用となるであろう衝突回避・軽減自動ブレーキも現時点では未設定なのが残念だ。