日産「サクラ」公道試乗記 軽カーの概念を変える驚きの連発

日産から発売された軽自動車サイズの電気自動車「サクラ」を公道で試乗してきた。そこにはこれまでKカーに対する概念を覆す事実が数多くあり、リアルな世界感での驚きの連続だった。

四季の彩りを感じられるシーズンカラーを設定(試乗車はブロッサムピンク/ブラック )

Kカー・サクラは、日産の軽自動車デイズ、ルークスの延長線上にポジションし、日産の軽自動車のフラッグシップに位置付けられている。また日産がすすめるIntelligent Mobilityの電動化ではアリアをフラッグシップとし、リーフをパイオニア、そしてサクラをEVエントリー普及モデルに位置付けているモデルだ。

ボディサイズは軽自動車規格で全長3995mm、全幅1475mm、ホイールベース2495mmでデイズと同じ。全高は1655mmでデイズより+15mmとなっている。

自動車メーカーがモビリティ・カンパニーへと変わりつつある中で、まだまだ既存事業は中心事業であり、クルマの製造・販売で成り立っているのが現状。そうした中でも電動化を通じ時代の変化の大きな波に乗る必要もあり、製造されるプロダクトにも変化が出てきたと感じる一台だった。

具体的にはKカーの概念を超えるダイナミック性能、静粛性、質感といったことに驚かされた。以前、テストコースで試乗し、それらの性能はレポートしているものの公道で試乗してみると、よりそのレベルの違いを実感できるのだ。

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サクラはデイズ、ルークスとはエクステリア、インテリアデザインを変え別のラインアップにポジションしていることを示しているものの、使い勝手や乗り心地、ダイナミック性能といったリアルな世界観の中では、その軽自動車の延長線上にあるわけだ。

そしてインテリアも専用デザインにしており、インパネダッシュボードはデイズとは形状変更をし、より奥行き、広さが感じられるようなデザインになっている。スイッチ類やドアトリムなど操作系、手に触れる部分の質感は高く、見た目も含めて常識を超える出来栄えと言っていいだろう。

フラットなデザインが洗練された空間を生み出している

だから室内の広さやリヤシートスライド、ラゲッジスペース、足元の広さといったものはデイズと同等レベルに仕上げ、現実社会では実用性において不満のないように造られている。そして上質なプライベート空間を作るために先進的で美しい7インチのメーターパネルと9インチのセンターディスプレイを配し、フラットなダッシュ周りを生み出し開放的な空間を実現している。

軽自動車の概念を変える静粛性

またダイナミック性能では、基本構造として駆動モーターはフロントに搭載し前輪で走る。バッテリーパックは車両下部に敷き詰めユニットは車両後ろ寄りに集められている。そのため、ダイナミック性能は既存のFF車とは異なるヨーの出方になる。

このハンドリングの味付けにおいてもデイズの延長線にくるように仕上げており、ガソリン軽自動車から乗り換えたとしても違和感のないようにしている。しかし、感覚的にはその違いは感じられ、ヨーモーメントやピッチ&ロール剛性の違いはある。言い換えればスポーツカーのようにも味付けが可能な素材であるが、敢えて量産軽自動車のベクトルに乗せているわけだ。

ただ、モーター走行のメリットを存分に活かす工夫はあり、静粛性は上級乗用車レベルで、静かに走行し高速道路でもその静かさはキープされる。また乗り心地もしなやかで比較対象はAセグメントを飛び越えBセグメントと比べたくなるレベルで、軽自動車の概念を変えるものだと感じた。

電気自動車とすることでハード部品においてデイズからの主な変更点もお伝えしておこう。まずはモーターを搭載するボンネット内部では、ユニットメンバーを左右で繋ぎ、モーターはペンデュラム式に搭載している。その結果振動を抑え、ボディ剛性の補剛にもなっている。

最適な位置にモーターを設置することで静粛性も高めている

そして床下にバッテリーを搭載しているため、フロアに補剛プレートが3ヵ所に追加され、リヤサスペンションのラテラルリンク、トレーリングアームのボディ側取り付けブッシュが強化されている。この補剛プレートはリーフと同じ設計基準に基づく骨格構造ということで、常識を超える思想が注入されていることがわかる。

大トルクの恩恵

そしてなによりモーター駆動を活かした加速性能が楽しい。アクセルレスポンスの良さや195Nmの大トルクは市街地を走ると乗用車を運転している感覚になる。つまりパワフルでレスポンスがいいので、軽自動車であることを忘れてしまうのだ。重ねて静かさも加わるので、なおさら軽自動車感がなくなっていくというわけ。

日本の美意識を感じさせる水引デザインの15インチアルミホイール

ドライブモードもエコ、スタンダード、スポーツとあり、ワンペダル走行が可能なe-Pedalも装備されている。パドルシフトはないがシフトレバーにはBモードがあり、e-Pedalと合わせて減速度のコントロールをドライバーが任意にできるのも楽しい。

運転支援ではプロパイロットが搭載でき、軽自動車初の駐車支援(プロパイロット・パーキング)も可能だ。これはシフト操作、アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作が自動で行なわれ、その動きは素早くストレスのない実用レベルだ。それとドライバーの異常を検知すると緊急停止する緊急停止支援システムも軽自動車初の装備となっていた。

スイッチ操作のみで後ろ向き、前向き、並列駐車可能

実用性からみると搭載バッテリー容量は20kWhでWLTC複合モードは180kmの航続距離。リージョナルな使い方であれば、数日間充電なしで使える。日産の調査では1日の走行距離は30km程度が平均値ということで、平日5日間は充電しなくてもOKであり、週末の深夜に充電すれば翌朝には満充電になる使い方ができるとしていた。

また急速充電では出力30kWまでに対応でSOCによるが20%程度までなくなっている状態であれば30分充電で50%以上の充電が可能であり、長距離移動も可能としている。

この搭載するバッテリーは開発から設計、生産まで一貫して日産社内で行なわれており、リーフの発売から数えると1億セルは搭載してきているという。そのバッテリーに関し重大事故はゼロであり、安全性などの品質管理には絶大な自信を持っているという。

こうしてサクラを改めてみると、軽自動車のネガであった、加速性能、エンジンノイズ、安っぽさといった不満は解消され、軽規格だからこその取り回しの良さ、気軽さ、狭い道路への対応などのメリットは継続されていることがわかる。さらに実用性を兼ね備えつつ、EVらしいダイナミック性能と静粛性の高さも持たせ、既存事業のネクストステージプロダクトであることを実感することができた。

この先、社会インフラやデータ活用の基盤整備が進んでくると、さらなる利便性が注目され、クルマを所有するからこそ得られる満足感が上積みされていくのかもしれないと感じた。


The Mortor Weekly

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