2017年9月6日に現在のリーフ(ZE1型)が発表された時、「電気自動車におけるドライビングの楽しさを求めるお客さまに向けて、バッテリー容量とモーター出力を向上させたハイパフォーマンスモデルの発売を2018年に予定しています」と予告されていた。その予告通り、より大容量のバッテリーを搭載した「リーフ e+」が2019年1月9日に発表された。
バッテリー容量は標準リーフの1.5倍
日産リーフは容量40kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載しているが、リーフ e+では容量を55%アップした容量62kWhのバッテリーを搭載した。この結果、航続距離はJC08モードで570kmを実現。最大出力は45%アップの160kW(218ps)、最大トルクは6%アップの340Nmを実現している。
より現実に近いWLTCモードでの航続距離は458km。これを前提にしてもほとんどのドライバーの1日あたりの走行距離を超えており、電気自動車特有の航続距離に関する不安は解消されている。
リチウムイオン・バッテリーの内部構成は、これまで8セルを1モジュールとした構成で192セルをパッケージにしていた。このリーフ e+では、バッテリーをつなぐための配線ケーブルを使用せず、各モジュールを基板で接続する、新モジュール構造を採用している。こうすることでセル数の制約がなくなり、モジュールを任意に構成することができるようになった。そのため、従来からのバッテリーパッケージのモジュール2列配置から3列配置を可能とし、さらに上下方向に厚みを増大させることで288セルの搭載を実現している。
バッテリーパッケージの面積は従来通りだが、上下方向の厚みが20mm増大したため、バッテリーパッケージが車体下側への突き出し、15mmだけ最低地上高が下がった。また全高を5mmアップしている。リーフe+は、車両のパッケージ、バッテリー・パッケージの搭載位置を変更することなく、大容量のバッテリーを搭載している。当然ながらバッテリー容量増大したぶん車両重量は160kgほど重くなっている。
モーターのパワーアップ
バッテリーの容量が大きくなったことは、航続距離が伸びただけではない。標準リーフのバッテリーセル配列は、2列の各直列接続(2×96セル)というレイアウトだが、リーフe+は、セルが3列の直列接続(3×96セル)となっており、従来より大きな電流をバッテリーから引き出すことができるようになったのだ。このバッテリーから引き出される大電流化に応じて、モーターの出力、トルクがアップされ、動力性能が向上しているというわけだ。
もちろんモーターに流れる電流の増大に合わせ、インバーター内のキャパシタの容量アップ、制御ソフトを変更することで最大出力160kW(218ps)、最大トルクが340Nmに出力向上している。なおモーターは標準のリーフと共通でこの出力向上に対応。しかし減速ギヤは強化され、このモーターの限界に近い出力になっている。
こうした出力向上により、リーフe+は標準リーフに比べ、0-100km/h加速が1秒以上速くなり、最高速も145km/hから155km/hに向上。ドイツのアウトバーンでも堂々と走ることができる性能になっているのだ。全開加速では、標準リーフは50km/hまで最大加速Gが維持されるがリーフe+は70km/hまで継続される。もちろんこうした全開加速の性能は実用域では体験できないが、最も体感しやすいのは高速での中間加速での力強さだろう。
一方で、搭載されるバッテリー容量が大きくなると、それに応じて充電時間も長くなるのは当然だが、標準リーフの充電状態が50%、リーフe+の充電状態が50%のとき、30分間の充電を比較すると、標準リーフよりリーフe+の方が、充電量は40%多いという実用上のメリットがある。これは電池容量が小さいほど充電時間の経過とともに充電量が絞られるという電池特性によるものだ。
またリーフe+は、急速充電器の高出力タイプ(70kW)にも対応し、普通充電でも6kW充電に対応している。ちなみに、50kWの急速充電ではバッテリー残量警告灯の点灯から80%充電まで60分、70kWの急速充電は同じ条件で50分だ。普通充電の場合は、3kWでの充電では、満充電まで24.5時間、6kWの充電では12.5時間と公表されている。
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試乗インプレッション
リーフe+はまだナンバー取得前のため、クローズドコースでの短時間の試乗会となった。目の前に登場したリーフe+は、意外にもこれまでの見慣れた標準リーフと同じように見えた。特別なエンブレムなどの識別点はない。詳しく見るとフロント・リップスポイラーの色がダークブルーになっているのが唯一の違いだ。もともとリヤのディフューザー部がダークブルーに着色されているが、これで前後が統一されたカラーデザインになったわけだ。
さらにリーフe+を側面からよく見ると、フロア下側にバッテリーの下端部が少し突き出しているのがわかる。つまり標準リーフと違う点はほんのわずかだ。
走り出すと、加速の力強さは歴然としている。出足の鋭さは2.0Lターボもそこのけだ。巡航状態からの追い越し加速といったシーンでもアクセルの踏みこみにダイレクトに応答し、気持ちよく加速する。
イメージとしては、ゴー・ストップの多い市街地での加速など多くの場面で、エンジン車を上回る走りが可能だ。また高速道路の合流などでの加速も意のままで、爽快な加速性能といえる。
シャシーに関しては、バッテリー重量の増大の結果、重心高は10mmダウンしており、旋回時のロール角も少し小さくなっている。また大容量バッテリー搭載でバッテリーパックの上下高さが増大し、結果的に車体のねじり剛性がアップしている他、サスペンションの仕様変更、電動パワーステアリングのアシスト特性のチューニングなどを行なっている。
市街地走行では問題はないはずだが、さすがに車両重量が160kg増大していることもあって、高速走行では操舵に対して車体の動きは大き目で、ステアリングに対する応答の遅れも感じられた。タイヤも標準リーフと同じサイズのエコタイヤで、タイヤのパフォーマンスもこの動力性能に対してやっぱり力不足という感じもした。
新たに登場したリーフe+は、1回の充電で458km(WLTCモード)の航続距離を備えるまでになり、これまで電気自動車リーフの航続距離に不安を感じている人々の抵抗感もこのモデルなら払拭されるだろう。そういう意味で、リーフe+は電気自動車の存在感をより強める役割を担っている。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>