【将来のクルマづくりへ インテリジェントモビリティ】リーフニスモRC試乗 市販モーター2つ搭載で640Nmの大トルク

マニアック評価vol648
日産は、フォーミュラEの参戦で、俄然、次世代モビリティへの訴求が目立つようになってきたが、日産が掲げる次世代に向けてのキャッチフレーズは「インテリジェント モビリティ」だ。そこに紐づくものとしてフォーミュラEの参戦と、このリーフニスモRCの開発があり、このクルマはインテリジェントパワー、そしてドライブに位置付けられている。

2018年11月30日ニスモフェスティバルの開催される前日、このリーフニスモRCはお披露目され、富士スピードウェイで簡単な試乗もできた。

開発ドライバーは松田次生選手。開発は左から鈴木豊氏、進土守、松村基宏氏
開発ドライバーは松田次生選手。開発は左から鈴木豊氏、進土守氏、松村基宏氏

インテリジェントモビリティにはインテリジェントパワー、インテリジェントドライブ、インテリジェントインテグレートがぶら下がっているが、ピュアEVの市販車リーフを改造し、レースカーにしたのがこの「リーフニスモRC」。そしてこのマシンは第2世代となり、初代のリーフニスモRCの詳細は2011年9月にこちらでおつたえしている。
※関連記事:【日産】EVにドライビングプレジャーはあるのか? リーフRCの挑戦

EV車はエキサイティングで、とても興味深いものである、ということをアピールしていくためにフォーミュラEへ参戦し、技術を磨いていくという話は、こちらの記事で紹介した。日産のグローバルマーケティング常務執行役員ルードゥ・ブリース氏へのインタビューだが、よりインテリジェントモビリティのドライブとパワーを具現化したものとして、リーフニスモRCは開発されている。
※関連記事:【将来のクルマづくりへ インテリジェントモビリティ】インタビュー:フォーミュラE参戦体制から見る日産の将来のクルマづくり

ニスモで製作

マシンはすべてニスモで設計され、造られている。現在は6台を生産したということだ。車体設計はスーパーGTで23号車のニスモの監督、鈴木豊氏が設計し、パワートレーン開発は進土守氏、そして開発はRB型のエンジン設計をし、現在はニスモの代表取締役 兼 最高執行責任者である松村基宏氏が開発のとりまとめをしている。

マシンのディテールをみてみよう。

全長4546mmで初代より+100mm、全幅1942mm、全高1212mm、ホイールベースは2750mmで+150mm伸びている。ウエイトはシートなしの状態で1220kgという重量だ。

パワートレーンは市販リーフの日産内製EM57型モーターを前後に2基持つ4輪駆動になっている。バッテリー、インバーターなども市販車のものを流用し、いかにスムーズに、インテリジェントに使えるか?というのが開発テーマにもなっている。

出力は240kWで650Nmという大トルクだ。0-100km/h加速は3.4秒という俊足。最高速は220㎞/hで、先代が6.9秒だったので大幅な進化を果たしている。ちなみに市販タイヤを装着して千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイのラップタイムは1分10秒34で、スリックタイヤでは1分08秒18をマーク。袖ヶ浦のコースレコードを記録している。この時のドライバーはリーフニスモRCの開発ドライバーでもある松田次生選手だ。

また、スペックは2種類あり、VCM(ヴィークルコントロールモジュール)により前後モーターの出力配分が可能で、スペック1は加速重視型でモーター出力合計は240kW。出力配分は前後50:50(120kW+120kW)。スペック2はコーナリング重視型でモーター出力は220kWに抑え、前後の出力配分は45:55(100kW+120kW)という2スペックある。

ボディはカーボンモノコックで、CFRP補強したロールゲージを装備。また前後にカーボンサブフレームをもち、これは前後が共通という形式になっている。サスペンション形状はダブルウイッシュッボーンにプッシュロッド式のダンパーレイアウトを取っている。

ギヤボックスはモーターの回転が高いため、1速減速しているが、トランスミッションではない。レシオは6.028というスペックだ。

NEXT:試乗

試乗

さて試乗は富士スピードウェイ内にあるドリフトコースに、特設のパイロンコースを設置し、2周のみ試乗というチョイノリができた。

640Nmという大トルクをもつクルマと言えば、ハイパフォーマンスモデルの超高級車クラスになり、「金持ってんだぜい」的な印象のクルマになる。したがって、インテリアも超高級なレザーシートに手触りのよいスウェ-ドなどが使われていることが多い。そして乗り心地は引き締まってはいるものの一般道を走行するので、それなりに快適な乗り心地だったりする、といったクルマでは経験済みだが、ピュアレーシングカーとなると、その経験値はない。

編集長タカハシがドライブ
編集長タカハシがドライブ

フルバケットシートに身を沈め、4点式シートベルトとヘルメットをかぶってドライバーズシートに乗り込む。モーターを起動し、アクセルを踏めば動き出す。ゆっくりと動きだし、どの程度のパワーで走るのか探りながらコースイン。

思いのほか室内はやかましく、EV=静粛性が高いというのはうそだ。かなりやかましく、無線が聞こえるように耳にイヤホンを装着しているが、ほとんど聞き取れないほど。もっともドライビングに集中していて聞き取れなかったのかもしれないが。

パワーステアリングやマスターバックといったものはなく、すべてがダイレクトに操作する。初代リーフRCを追浜のテストコースで走らせたときには、ブレーキには強大な踏力が必要で「止まらない!」という焦りを感じたことを思い出し、恐る恐るブレーキペダルを踏んでみる。すると、大径ブレーキを装着しているためか、市販車に近いフィーリングで減速できるので、そこは一安心した。

そして短い直線部でアクセルを全開に踏みつける。するとシートバックにドカンと吹き飛ばされるかのような加速が始まり、一瞬で直線終わりを迎える。ゆっくりコーナーをまわり再び直線では、身構えてアクセルを全開。今度はある程度想定内になったので、次はコーナリングを試してみたい。

だが、タイヤのブリップを感じるにはあまりにもリスクが大きい。マシンのロールは僅かで旋回ヨーは俊敏に立ち上がる。そこでレスポンスのよいモータートルクを組み合わせているため、ラフな操作をすればすぐにコースアウト、もしくはスピンする可能性を感じる。

そんなことを考えて手探りで走行していたら、終了の合図が出ていた、という試乗だった。

さて、この6台製作したリーフニスモRCの運用だが、インテリジェントモビリティの象徴として、世界中で見てもらい、乗ってもらうという運用が検討されている。欧州に2台、アジアに2台、そして北米に2台おいて、レースイベントでのデモンストレーションやさまざまな催し物会場で展示、あるいは、著名人によるワンメイクレースなどの可能性もあるという。そうした運用しながら、日産が掲げるインテリジェントモビリティの世界への理解を深めていくツールとして考えているようだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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