マニアック評価vol600
2018年7月19日、電気自動車「リーフ」にNISMOバージョンが追加された。EVで初となるNISMOバージョン「リーフ NISMO」に早速試乗してみた。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
日産のカーラインアップの中でNISMOバージョンは、現在ではオーテック・ジャパン内にある新組織の「NISMOカーズ」で開発されることになり、今回のリーフ NISMOはそのNISMOカーズが本格的に開発に取り組んだ第1弾だ。
■リーフ NISMOはどんなクルマ
リーフNISMOのアピールポイントは、空力性能を徹底追求したスポーティなエアロ・デザインと、直進安定性を一段と高め、意のままのハンドリングを実現すること、そしてパワーコントロール・コンピューターを専用にチューニングし、胸のすく加速感を実現することだ。
そのため、前後のバンパー、フロントグリル、サイドスカートなどをNISMO専用デザインとし、18インチサイズの専用アルミホイールを装備している。またインテリアはアルカンターラ巻スポーツ・ステアリングホイール、ガンメタクローム加飾のシフトセレクター、専用のコンビネーションメーター、カーボン調のインスツルメントパネル仕上げなど、一味違ったスポーティで上質な仕上げになっている。
しかしながら、モーター出力、バッテリー出力や容量はノーマルのままだ。ただ、18インチサイズのコンチネンタル スポーツコンタクト5タイヤを装着しているため、JC08モードでの航続距離はノーマルモデルの400kmに対して350kmと少なくなっている。
性能面では、前後バンパーのエアロダイナミクス性能を向上させ、空気抵抗を悪化させることなくダウンフォースを増大。その結果、高速での直進安定性が向上している。
ハンドリングでは、電動パワーステアリングの専用チューニング、ハイパフォーマンスタイヤの18インチサイズのコンチ・スポーツコンタクト5、スポーツ・サスペンションとトルクベクタリングのチューニングにより操舵応答性を向上させ、最大旋回Gを高めている。
専用チューニングされたフロントのサスペンションは減衰力を約25%アップ、リヤは33%アップし、意のままのハンドリングと乗り心地を両立。またパワーステアリングはコーナリング中に適度な操舵反力を生み出すことで、スポーティでしっかりとした操舵力としている。
さらにシャシーでは、ブレーキをチューニングに、常用域でのブレーキ制御をよりリニアにし、制動力そのものも高めることでブレーキのコントロール性と制動力を高めてる。
■これが電動チューニングカー!試乗レポート
いよいよリーフ NISMOのステアリングを握り、前もって走行モードを確認しアクセルを踏み込む。
リーフ NISMOで最も強力な加速が得られるのが「B」にシフトし、eペダルはオフにした状態なので、まずはこれを試してみる。アクセルを踏み込むと、まさに瞬時に加速Gが体にかかり、グンと加速する。ノーマルと同じモーター出力とはとても思えない。
エンジニアの話では、ノーマルのリーフは加速の立ち上がりでギクシャク感がでにくいように、発進からの加速ではトルクの出方を滑らかになるように制御しているが、このNISMOモデルはその制御を取り除いているという。
そのため、アクセルの踏み方次第では段付きが生じ、ガクガクとトルクの変動により振動が発生することもある。まさに、積極的に自分で微妙なアクセルコントロールができるドライバー向けになっているのだ。100km/hあたりまでの加速はモーターによる振動感のない、しかもトルクがグイグイ湧き上がる、EV独特の爽快な加速である。
この「B」でeペダル・オフの次に強い加速感を得るのは、「D」でeペダル・オフの状態だ。この組み合わせでも十分に気持ち良い加速が感じられる。市街地などでのお勧めのモードは、「D」+eペダル・オンだ。この状態だと、気持ち良い加速に加え、減速時にはワンペダル・ドライブによる強めの減速回生ブレーキが掛かり、加減速を自在にコントロールすることができる。
ハンドリングはどうか。わずかに電動パワーステアリングらしい、ねっちりしたフィーリングは残っているものの、ダイレクト感、しっかりとした手応えのある操舵フィーリングで、S字カーブなども楽しく感じる。もちろんEVらしい低重心でどっしりとしたフィーリングもあり、ステアリングを切ったなりに安心してコーナリングが楽しめるといえる。
またジューク NISMO RS譲りの18インチのコンチ・スポーツコンタクト5は、接地感も優れており、ダンパーのチューニングも絶妙で、乗り心地のよさも特筆モノだ。今回はテストコース内での試乗だったが、市街地の多少荒れた舗装路面でも乗り心地の悪さは感じられないはずだ。
リーフ NISMOは、見た目の装備だけでなく、走りの質にまでこだわったコンプリート・チューニングカーで、その気持ち良い走りはリーフの新たな境地を切り開くといってよいだろう。