新型リーフ テクノロジー詳細解説と魅力探訪 Vol.1
この時期、毎年恒例となっている長野県・女神湖で開催される日産の氷上・雪上試乗会。今年の試乗車両にEV(電気自動車)の日産リーフが用意されていた。気温の低い地域でバッテリーの心配がないのか? これまで寒冷地とEVは無縁のものだと勝手に決め込んでいたきらいがある。寒いと室内を温めるために熱源を持たないEVの場合、暖房に多くの電力を使ってしまうために航続距離が短くなる。寒いと、ただでさえバッテリーの性能が劣化してしまううえに、暖房でも電力を消費するのだ。<レポート:松田秀士/Hideshi Matsuda>
ところが、新型リーフはバッテリー容量が40kWhとなったことでかなり余裕ができた。バッテリーの性能はマイナスの気温を下回っても性能に大きな変化はないという。また、暖房はPTC素子ヒーター(5kW)とヒートポンプ式エアコンの組み合わせ。
今回の試乗会場のように0℃を下回るような場合は、まずPTC素子ヒーターが作動して車内を暖める。ガソリン(ディーゼル含む)車やハイブリッド車の場合はエンジンが温まるまでヒーターは役に立たない。特に今回のような寒冷地ではエンジンが温まるまでに時間がかかる。
しかしリーフの場合PTC素子ヒーターのレスポンスが良く、すぐに車内を暖め始めていた。また、ステアリングヒーターとシートヒーターが標準(後席はセットオプション)で付いているので、体感的にはそれほど辛いという印象はなかった。

■試乗インプレッション
では新型リーフの氷上・雪上試乗へ行ってみよう。まずは、女神湖の氷上だ。湖が凍っているので基本的に路面のベースは氷。ところどころ雪が残っているが、当日は完璧な晴れ。リーフだけに限らずたくさんの試乗車が走行するので雪は蹴散らされ、超滑る氷の上を走ることが80%。残りの20%は、雪が凍り付いている路面などだ。
しかし、これがなかなか厄介なもので、雪が凍り付いたといっても表面はザラザラしていて、おまけに凸凹。その場所だけ急にグリップが上がり、凸凹に足もハンドルも取られるのだ。つまり、予期せぬ挙動を起こすのである。
一般道の走行で例えるならば轍が一番わかりやすい。雪が柔らかいうちはまだよいが、一度凍った場合、トラックなどトレッド幅の異なるクルマが残した轍から車線を変更する場合などは足が取られる。現在のクルマのほとんどにスタビリティコントロール装置が付いているので、4輪の個別にブレーキをかけるなどしてクルマを安定させてくれる、はず。
今回の試乗会ではGT-Rも用意されていて、ガソリン車にも多数試乗する。実際に女神湖を走り始めると、ステアリング操作をするたびに、そこらじゅうでこのスタビリティコントロールが作動する。ABSに似たブレーキの音とショックを感じるのだ。
では、スタビリティコントロールが効くことで問題なく曲がれるのかというと、全くそうではない。いくら性能の良いスタッドレスタイヤを履いていても、氷の上では限界は低く簡単に滑り出してしまう。ステアリングを切っても行きたい方向には曲がらず、時としてリヤが滑り出してしまう。
つまり、タイヤのグリップ性能がある程度発揮できるうちはスタビリティコントロールも意味を成すのだが、氷上のように極端に路面のμ(ミュー)が低いとあまり効果は期待できない。それよりも、クルマそのものが持つバランスや制御の緻密さがこのような極寒の地ではモノをいう。
女神湖氷上の試乗ステージは、定常円旋回、スラローム、ワインディング路の3パターン。定常円旋回は、丸いリンク状の氷上に1つのパイロンを置き、これを中心にグルグル回るもの。よくFRや四輪駆動車がリヤを滑らせて豪快にドリフトする、あれだ。
しかし、FFベースのリーフがドリフトするわけでもなく、普通に簡単に円旋回する。しかし、冷静に考えると、特にFRなどは普通に円旋回させるのが難しいくらいで、スピードを上げればフロントかリヤが滑り出す。ちゃんとグリップさせて曲がるには、恐ろしく低い速度で、ということになる。
ところがリーフの旋回スピードはこれらに比べて明らかに速い。理由は電動モーターゆえの制御の細かさにある。リーフは1万分の1秒単位で電動モーターを制御しているのだ。この円旋回には加速させることが重要で、アクセル操作がキモとなる。
リーフのトラクションコントロールはとても優秀で、タイヤからのフィードバックをリアルタイムで判断して前輪に制御を加える。リーフのステアリングを握って初めて気付かされる、内燃機関の制御の甘さがあったことを。


■価格(消費税込み)
グレード S:315万360円 X:351万3240円 G:399万600円 プロパイロットオプション 16万2000円 S:オプションなし X:あり G:標準装備 プロパイロットパーキング 21万6000円■ 日産雪上試乗会 関連記事
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