日産 雪上試乗 ひとつのECUで統合制御するe-4ORCEで快適雪上走行

日産が雪上試乗会をオールラインアップ・モデルで実施し、その中でe-4ORCE、e-POWERでの走行安定性、そして安心感を体験してきたのでお伝えしよう。

試乗車はアリア、X-トレイル、セレナの3車種。アリアとX-トレイルがe-4ORCEでセレナはe-POWERのFFモデルというラインアップだ。

試乗当日は日中でも-11度と、極寒の長野県女神湖周辺のワインディング。前夜に降った雪が積もり道路は圧雪路という状況で、テストには最高のコンディションだった。そうした中、試乗した3タイプのどのモデルも、快適な乗り心地で、安心感があり、どんな路面状況でも走行できることを体験している。

なぜ、そうした安心感が得られるのか、技術の進化とともに少し紐解くと、日産の最新四駆制御技術が「e-4ORCE」という制御技術がある。かつてはエンジン、機械式4WDの時代はブレーキとの協調制御で、空転するタイヤをブレーキで摘み駆動輪にトルクをかけるという制御で、エンジンとブレーキは別々のECUで制御され「インテリジェント4×4」の名前が付いている。

四駆制御の進化。どれだけの信号をひとつのECUにまとめるかがポイントになる

つぎに登場したのが「e-POWER AWD」で、駆動輪がモーター駆動になったため、前後モーターを直接制御して前後トルク配分をし、VDC制御によって四駆性能を高めている。制御ロジックとしてはそれぞれのECUが制御を行なうため、機械式と同じになるが、エンジンやトランスファーなどの機械に対して電動モーター駆動になるため、その滑りへの反応は飛躍的に早くなっている。このe-POWERにはFFと四駆があるが、今回はFFのセレナで試乗してみた。

e-4ORCEの構成イメージ

そして現在の最新制御が「e-4ORCE」で前後にモーターを搭載し、ひとつのECUで司令を出せる頭脳に進化している。これはドライバーのステアリング操作、ブレーキ操作、アクセル操作を信号で受け取り、それをひとつのECUで司令を出している。タイヤへは前進力、曲がる力、合力といったグリップ限界を特定し、タイヤにかかる力を1万分の1秒というスピードで反応させているのだ。簡単に言えば、パワートレインのECUとVDCのECUは、ひとつのECUですべての情報を制御しているということだ。

このように機械式4WDからパワートレインを電動化することによって、ECUは統合され、単に滑らない安心の走行というだけでなく、車両姿勢を作ったり、より滑らかに走行する制御も可能になってきているのだ。

制御ロジックの概念を理解したところで、実際の雪道を走行してみた。アリアはEVであり、機械式の部分はなく、電動アクチュエータで機械を動かすという電動化モデル。そのため、滑りの感知は素早くまた、ブレーキを掛けた際の姿勢変化も小さい。通常はノーズダイブしていくがe-4ORCEは車両全体が沈み込むような制動姿勢で安定して減速できる。

これは前述のようにタイヤにかかる力をひとつのECUで制御しているため、4輪ブレーキ+回生ブレーキの制動配分をコントロールすることで減速姿勢をフラットに保つことができるというわけだ。だから、舗装路を走行してもミューの低い雪道を走行しても常に安定した制動姿勢で止まるので、ドライバーは大きな安心感を持つことができるというわけ。前のめり姿勢になれば、自然と滑りへの恐怖が生まれてくるが、そうした心配がないのは大きい。

具体的には、e-4ORCEの制御ECUへの情報には、車両の前後G、左右G、車輪速、ヨーレートといった情報も信号として送られており、そうした情報から車両姿勢姿勢を作り、安定した減速が可能になっているのだ。

X-トレイルは最新のE/Eアーキテクチャーでe-4ORCEにアップデートされている

X-トレイルはe-POWERの四駆なのだが、同様にe-4ORCE制御されている。ややこしいが同じe-POWERのNOTEやKICKSはe-4ORCE制御ではなく、パワートレインとVDCがそれぞれのECUで制御されている「e-POWER AWD」だ。これはE/Eアーキテクチャーと言われるプラットフォームの世代の違いによるもので、次のモデルチェンジでe-4ORCEになるのは間違いないだろう。

しかしながら、モーターとVDCは別のECUで制御されているe-POWER AWDでも、e-4ORCEとの違いを明確に感じ取ることは難しい。それほどe-4ORCEと同様に安定して雪道走行をし、常にグリップ感をドライバーに感じさせてくれるのだ。

セレナe-POWERのFFも安定して走りやすい。モーター駆動ならではの安心感がある

もう一台はセレナでe-POWERのFF。四駆ではないもののFFで十分という感覚になる。それはモーターだからできる制御スピードと緻密な制御が可能になるからだ。さらにe-Pedalを使うと下り坂も安心して走れる。e-Pedalはワンペダル・ドライブができる仕組みで、通常より強い回生ブレーキがかかるため、アクセルペダルを離すだけでフットブレーキをかけたときと似たような減速度を発生させることができる。

そのため下り坂でブレーキコントロールしなけらばならない状況下でも、アクセルペダルを緩めるだけで減速できるので安心なのだ。滑りやすい路面でブレーキを踏む時ほど緊張することはないが、その緊張からは解放され、アクセルを緩める操作で減速するのは大きな安心感になる。この時ドライブモードで「SNOW」を選択すればより安定した減速ができるのでおすすめだ。

ちなみに、e-Pedalはドライブモードが「SPORT」でも「NORMAL」でも有効で、ドリフトコントロールに自信があればスポーツモードでe-Pedalという組み合わせも楽しい。ハイスピードで旋回を始めた瞬間に急激にアクセルオフしてリヤを出すということもできる。アクセルペダルで、減速Gをコントロールできる人なら楽しめるのだ。

このように電動化したメリットを実体験することができた。これまでできなかったことが可能になり、より安心、安全な方向に、さらに快適な走行もできるようになることも体験できた。この先はスポーツドライブのように、だれが運転しても安心。安全というベクトルとは別に、ドライバーの嗜好に合わせたプログラムも可能になるだろう。そうなれば、EVはつまらないという声も小さくなるだろうし、技術の進歩を実体験した試乗印象だ。

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