【フリースケール・セミコンダクタ】スーパーGTレースで次世代ドライバーアシストシステムの実験プロジェクトを開始

「IWASAKI OGT Racing GT-R」のドライバー、ユーゼ社長、小山aprレーシング社長

2013年7月12日、半導体メーカーのフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは、車載用の次世代ドライバー・アシスト・システム(ADAS)の実践的な実験を、スーパーGTレースの場で開始すると発表した。リースケール社はモトローラの半導体部門が独立して誕生した企業だが、そのベースは1952年のトランジスター開発から始まり、1975年には自動車用マイクロプロセッサーを実現するなど実績により、現在では自動車用の多分野にわたるマイコンやプロセッサー、自動車用カメラ、77GHzレーダー用半導体と通信分野の半導体で高いシェアを占めている。

フリースケール社は、本社のあるアメリカでもモータースポーツを積極的にサポートしているが、日本法人のフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンでも2012年からポルシェカレラカップで車両データを取得・解析する試みを行ってきたが、今回発表されたようにスーパーGTレースの場で、時間軸に同期させた車両データ、ドライバーの生体情報、レース中の車両周辺情報をデータとして蓄積し、車両やドライバーの解析を行い、自動車を含めた他分野でデータを活用することを目的としている。なお現状では、各種センサーから得られた情報はロガー内のSSDハードディスクに蓄積されるが、技術的には新世代通信LTEによりリアルタイムでクラウド・コンピューターにアップロードでき、クラウド・コンピューターから各種の端末機器に配信が可能だ。

フリースケール・セミコンダクター・ジャパンのユーゼ社長
aprレーシングの小山伸彦社長

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今回のプロジェクト、ADAS実装実験を行ために協力するレーシングチーム、GT300クラスに参戦している「aprレーシング」の新体制も発表された。今回のプロジェクトは7月27日?28日に開催されるスーパーGT選手権・第4戦 「SUGO GT 300kmレース」から始動するが、そのために「aprレーシング」は従来からのプリウスGT以外に日産 GT-R ニスモ GT3を導入。そのGT-Rにフリースケール社が開発したADASシステムが搭載され、レースに出場する。

モータースポーツ活動を通した車載市場における戦略について、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン社長のディビット.M.ユーゼ氏は、「自動車の分野ではトラクションコントロール、アクティブサスなどのテクノロジーがモータースポーツに採用されているが、今回のADASも将来の標準技術の一つになると考え、当社だけではなく、東大や他のパートナー企業とも連携し開発を進めていきます」と語っている。

また「昨年のポルシェカレラカップでの活動が本社で評価され、それが今回の発展的なプロジェクトにつながっている。またSUPER GTのオフィシャルスポンサーにもなり、GTアソシエーションとも連携を取り、今回の実験的なプロジェクトが可能になった」と語った。

このプロジェクトを担当するフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン・第三事業部長の村井西伊氏がADAS実装実験の内容を説明した。なおドライバーアシストシステム(ADAS)は、一般的なドライバーをアシストする車両側の支援システムの意味ではなく、ドライバーを支援するための車両および車両周辺情報、ドライバーの状況を把握する情報などをの総称として使用されている。

生体センサーを装着したスシュコ選手(左)と第三事業本部長・村井西伊氏

今回のプロジェクトは、車両情報(モーテックによる車両データロガーの情報を流用)、車両周辺情報(車両に4個装着したカメラによる映像情報)、ドライバーの生体情報(ドライバーの身体に装着したバイオセンサーにより心拍、呼吸、発汗などの情報)を時間軸で同期させデータを蓄積し、そのデータ解析という4フェーズになっている。蓄積されたデータはテレメトリーでクラウド・コンピューターにアップロードされるのが本来の姿だが、現状ではLTE回線のスループットが厳しいと予想されるため、SSDに蓄積されたデータは事後にアップロードする予定だ。

なお、村井氏はこのADASプロジェクトは、将来的にはドライバーの高齢化や運転中の医療対応システムとして展開できると構想している。

スーパーGTレース第4戦から参戦するaprチームの車両はGT300クラスの車番30「IWASAKI OGT Racing GT-R」で、車両の前後左右にカメラが装着されカメラから得られた映像データと、データロガーシステムのモーテックから得られる車両データはドライバーシートの後方に装着された重量約8kgのデータ格納+発信システムに蓄積される。ドライバーは岩崎裕人、イゴール・スシュコ、小林賢二だ。

スーパーGT選手権第4戦から出場する(30)「IWASAKI OGT Racing GT-R」

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フロント・エアインテーク部にある前方カメラ
後方カメラ((画面右側)

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左右のリヤクォーター部に設置されたサイドカメラ
360度の車両周囲の映像が記録される(デモ用ディスプレイ)

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GT300クラスの「IWASAKI OGT Racing GT-R」とユーゼ社長
ドライバーシート後方に搭載されるデータ格納・通信ユニット

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フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは9月20日?22日に富士スピードウェイで「フリースケール・エキスペリエンス」を開催する。富士スピードウェイではアジアン・ルマン・シリーズ第5戦が開催され、FIA規格のGT3とGT300クラスの車両が参戦するレースで、もちろんフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンがサポートする「IWASAKI OGT Racing GT-R」も出場する。この「フリースケール・エキスペリエンス」は、イベントエリアで行われ、半導体ユーザーのためのテクノロジーラボ、テクノロジー講習会の他に、同乗走行、パレードラン、ドリフト大会、カート走行体験など大人から子供まで誰でも楽しめるイベント内容となっている。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン公式サイト
aprレーシング公式サイト

COTY
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