国内の乗用車販売の40%を占める、最大のカテゴリーである軽自動車の競争は激しいが、ハイトワゴンの中で日産デイズは存在感を増すことは間違いない。実際、発売後の販売台数はハイトワゴン・クラスではトップになっている。そのデイズに試乗してみた。
気持ち良い加速と静粛性を両立
試乗したのは「デイズ・ハイウェイスター Gターボ プロパイロットエディション」と「デイズ・ハイウェイスター X プロパイロットエディション」の2台だ。つまりハイウェイスターのターボ・モデルと自然吸気エンジン・モデルで、いずれもFF仕様だ。
エンジンの比較では、当然ながらターボのトルクは強力で、市街地はもちろん、高速道路でも小型車クラスに引けを取らない走りができるが、ターボエンジンより12ps、40Nm出力が低い自然吸気エンジンでも思いの外、ストレスなく走ることができる。
その理由は、自然吸気エンジンの低中速トルクが強化されていることと、新開発のCVTとのマッチングが良いことだ。出足のレスポンスが良く、アクセルペダルの軽い踏み込みで意図通りの加速をするため、ストレスを感じないのだ。
日産/ルノーのアライアンスに本籍を持つこのターボと自然吸気エンジン・エンジンは、低中速で扱いやすい動力性能だけでなく、エンジンの回転の滑らかさ、耳障りとなる機械音をまろやかなサウンドにしている。しかも室内への侵入が抑えられ、静粛性が優れていることも軽自動車の常識を打ち破るレベルだ。
エンジン本体とCVTトランスミッションのと結合は、従来モデルは4本のボルトで締結されていたが、今回のモデルは結合断面が大きく、しかも7本のボルトで結合されので、加速時などのパワートレーンの振動音を大幅に抑制していることが奏効している。
滑らか乗り心地
デイズの操舵フィーリングは軽自動車レベルを超えるどころか小型車のレベルをも超えている。その理由は、ステアリング系の剛性の高さだけではなく、電動パワーステアリングのモーターが高性能・大容量のブラシレス・モーターを採用していること、そして巧みにチューニングされたパワーステアリングの戻し制御を採用していることなどによるものだ。
実はコストの高いブラシレスモーターを採用した理由には、プロパイロット稼働時、ステアリング・アシストを行なうことを見込んでいるからなのだ。
乗り心地も十分満足でき、市街地でも高速道路でも滑らかさがあり、安定感が感じられる。ターボエンジン・モデルも自然吸気エンジン・モデルもサスペンションの仕様は共通で、唯一4WDモデルだけがより減衰力を高めたスペックとなっている。サスペンションのダンパーもこれまでの軽自動車の常識を破る微低速特性を高めたタイプを採用していることで、優れた乗り心地を実現しているのだ。
高い質感と充実装備
インテリアの仕上げ、質感の高さもこれまでのレベルを遥かに超えている。シートも運転席は日産が提唱しているゼロ・グラビティシートを採用し、背面から腰部までを均一に支持する形状になっており、長時間のドライブでも疲労が軽減されるだろう。
リヤ席の膝周り、足元のスペースもトップレベルで、しかも中央部にセンタートンネルの凸部がない点も画期的だ。ただ、リヤシートの座面は低めになっている。子供が座るケースが多いということで低めにしたという。
運転席、リヤ席の周囲の物入れスペースも豊富で、フロントセンター部にはUSB充電口もある。ドリンクホルダーは紙パックサイズまで対応するなど、きめ細かい配慮がなされている。
運転支援システム「プロパイロット」
デイズは、ドライバー支援システムとしてプロパイロットが設定されている。非装備モデルとの価格差は9万7000円だが、プロパイロット・モデルを選ぶとアラウンドビューモニター、電動パーキングブレーキ/オートブレーキホールドなども装備されるため格安だ。
プロパイロットは毎年改良されており、デイズに装備されるプロパイロットは最新のスペックになっている。車線の認識も素早くなり、前車に追従して走行する時の加減速の滑らかさ、ステアリングアシストの自然さなど、ドライバーに違和感を感じさせないようにセッティングされていると実感できた。
またメーカーオプションで「SOSコール」(3万2400円)も装備できる。通信装置を搭載し、オペレーターと交信でき、緊急時には自動通報するシステムで、日産車の中でデイズに初搭載された。また、渋滞時や信号などでの完全停止・再発進までカバーし、操舵アシストも行なうプロパイロットと、SOSコールを装備できる点は、当分の間は軽自動車の中で唯一、最大のセーリングポイントだろう。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>