日産自動車は2025年3月26日、今後の各市場に投入する新型車とマイナーチェンジ・モデル、2025年度から2026年度にかけて投入予定の新技術を発表した。
経営の危機的な状況からの脱却を目指す日産は、これらの新商品を通じて、業績の向上、顧客ロイヤリティの向上、新規顧客の獲得、収益性の向上と持続可能な成長を目指すとしている。

まず、今後の商品ラインアップでは、パワートレインに対するニーズの多様化に応えるため、車種毎にハイブリッド技術(e-POWER、プラグインハイブリッド)や、次世代電気自動車(EV)、先進的なガソリンエンジンを設定するとしている。
このうち、プラグインハイブリッドは三菱製モデルのOEM供給を受ける。また、e-POWERに関しては、発電用エンジンの熱効率向上、つまり燃費の改良によることで、従来は苦手としてきた高速走行時の燃費を大幅に向上させ、アメリカ市場へ導入する計画だ。
次世代EVは、アリアの技術をベースに展開する一方で、ヨーロッパ市場ではルノーの「5 E-Tech」のOEMモデルもラインアップする。
チーフパフォーマンスオフィサーのギョーム・カルティエ氏は、「日産は市場戦略を見直し、よりお客さまのニーズにお応えし、売上を成長させるため、市場毎に最適な商品戦略を導入します。パワートレインの多様化と新型車を通じて、お客さまの多様な嗜好を満たす幅広い選択肢を提供し、日産とインフィニティの両ブランドをさらに差別化していきます」と述べた。

4月からCEOに就任するイヴァン・エスピノーサ(現チーフプランニングオフィサー)氏は、「今後2年間で、新型リーフや新型マイクラEVを含む、魅力あふれる商品ラインアップを構築します。さらに、SUVのラインアップを刷新し、運転体験を向上させます。
また、次世代e-POWERは新次元の洗練された高効率な走りを実現します。私たちは最高の日産を体現する商品に投資し、世界中の熱いファンの皆様と日産を支えてくださっているお客さまにワクワクする体験をお届けすることをお約束します」と語っている。
新型リーフ
今年(2025年)の夏頃に発表される新型リーフは、洗練されたデザインと広々とした室内空間を併せ持つクロスオーバーSUVとして生まれ変わる。プラットフォームはアリアから採用されている「CMF EV」を採用する。

空力性能を大幅に向上させ、新世代のEVアーキテクチャーを搭載。19インチのアルミホイールとパノラミックガラスルーフも初採用する。北米仕様車にはNACS(テスラ式)規格の充電ポートを搭載し、日産のEVとして初めて、テスラ・スーパーチャージャーネットワークへのアクセスを可能とする。
e-アクスルは3-in-1タイプとし、より効率的なエネルギーマネージメントと、優れたパッケージング、走行性能の向上を図る。また、航続距離は現行車比で大幅な改善を見込んでいる。
第3世代e-POWER
第3世代となる日産のハイブリットシステム「e-POWER」は、これまで弱点とされてきた高速走行時の燃費改善がメインテーマになっている。
第3世代のe-POWERシステムは、発電用エンジンの熱効率の大幅な改善により、現在の第2世代システムに比べて高速走行時の燃費を最大15%向上させることを目指している。
発電用エンジンの熱効率を高めるために、エンジン本体は従来の1.5Lエンジンをベースとしながら、吸気ポートを改良し、より強いタンブル流をより長く発生させること。そしてタンブル流に最適に点火を行なうことで、発電で使用する回転域の燃焼速度を向上させるとしている。
つまり一定範囲の回転数を使用する発電用エンジンに特化した熱効率の向上を図ることで、高速走行時の燃費は従来より15%向上させるという。
またe-アクスルは、EVパワートレインと主要部品を共有し、5-in-1システムとすることで軽量化、コンパクト化を図る。この第3世代e-POWERシステムは、2025年度後半にヨーロッパ市場の「キャシュカイ」から搭載され、2026年度には北米の次世代「ローグ」、日本市場向けの大型ミニバンに搭載される予定だ。
アメリカ/カナダ市場
次世代EV、ハイブリッド技術を搭載した10車種以上の新型車およびマイナーチェンジ車を投入(インフィニティモデルを含む)。

2025年度には、アメリカとカナダで新型「リーフ」が最初に発売される。さらに、北米で販売しているSUV「ローグ」に、ブランド初となるPHEVモデル(三菱OEM)を追加する。
日産のベストセラーであるコンパクトセダン「セントラ」の次世代モデルを2025年後半に発表。また、ミドルサイズSUV「パスファインダー」をマイナーチェンジする。
インフィニティでは、3列シートのラグジュアリーSUV「QX60」のマイナーチェンジモデルを投入するほか、フルサイズSUV「QX80」に新しいスポーツパッケージを追加する。

2026年度には、4代目新型「ローグ」の生産を開始します。このモデルは、第3世代e-POWER技術を搭載する。また「ローグ」にはパワフルで高効率なガソリンエンジンを搭載したモデルと、PHEVモデルを投入し、これまでに比べてパワートレインのラインアップを拡大する。
インフィニティは、新型クロスオーバークーペ「QX65」を発売する。コンセプトモデル「FX」からインスピレーションを受けたインフィニティ「QX65」は、ミドルサイズのクロスオーバーセグメントに向けた2列シートモデルだ。
2027年度の後半から、米国ミシシッピ州のキャントン工場で日産の新型EVの生産が開始される予定だ。この新型EVはSUVだ。さらに、2028年度には「QXeコンセプト」にインスパイアされ、最新のインフィニティデザインと技術を取り入れたインフィニティのSUV EVが加わる計画だ。
ラテンアメリカ
2025年度には、コンパクトセダン「ヴァーサ」を改良し、新型コンパクトSUVも投入する。インフィニティでは、マイナーチェンジした3列シートのラグジュアリーSUV「QX60」 を投入する。

2026年度には、進化したデザインとインフォテインメントシステム、そして先進的な運転支援技術を搭載したミドルサイズ・ピックアップトラック「フロンティア/ナバラ」を投入する。2026年度後半には、「エクストレイル」のe-POWERモデルをラテンアメリカ市場に投入。インフィニティも、ミドルサイズクロスオーバークーペの新型「QX65」を発売する。
日本
2025年度には、日本市場向けに新型「リーフ」や新型軽自動車を含め、多様な新型車とマイナーチェンジ車を投入する。2026年度には、第3世代のe-POWERを搭載した新型大型ミニバン(エルグランド)を投入する。詳細は2025年後半に発表するとしている。
ヨーロッパ
2025年度には、ヨーロッパで3車種を投入する。コンパクトEVの新型「マイクラ」、新型「リーフ」、第3世代のe-POWER技術を搭載したコンパクト・クロスオーバー「キャシュカイ」だ。

「マイクラ」EVは、ルノーとの協業により「5 E-Tech」をベースとしたスタイリッシュなコンパクトEVだ。ロンドンの「日産デザインヨーロッパ」でデザインされており、年内に販売開始する予定だ。

第3世代e-POWERシステムを搭載した「キャシュカイ」は、排出ガスの削減、燃費の向上、静粛性の向上を実現。e-POWER搭載モデルは、ヨーロッパで投入以来、これまでに約20万台販売された実績を持つが、その販売をさらに加速させる役割を持つ。
2026年度には、新型「ジューク」EVをラインアップに追加する。「ジューク」は日産のヨーロッパにおける4車種目の乗用車EVとなる。大胆なデザインと先進的なコネクティビティを備えたモデルと位置づけられる。
中東
2025年度には「Z NISMO」を投入。インフィニティ・ブランドでは、マイナーチェンジした3列シートのラグジュアリーSUV「QX60」を投入する。
2026年度には、スタイリッシュな2列シートのミドルサイズ・ラグジュアリー・クロスオーバーの新型「QX65」をインフィニティのラインアップに追加する。
インド
2025年度は多目的車(MPV)を投入し、2026年度には5人乗りコンパクト・スポーツユーティリティビークル(CSUV)を投入する。この2モデルはチェンナイ工場で生産される。インド国内の販売を強化し、さらに右ハンドルと左ハンドルの両仕様で世界への輸出を計画している。

オセアニア
2025年度には、クロスオーバーEV「アリア」の販売をオーストラリアで開始する。また、2026年度には、右ハンドル市場で初の投入となる新型「パトロール」、日産と三菱自動車のパートナーシップを活用した新型1トンピックアップ、新型「リーフ」、そして第3世代e-POWER技術を搭載したコンパクトクロスオーバー「キャシュカイ」などを投入。
アフリカ
2025年度中にアフリカの左ハンドル市場で、スタイリッシュなコンパクトSUV「マグナイト」の販売を開始。また、新型「パトロール」も2025年度にエジプト、2026年度に南アフリカに投入する予定だ。さらに、2026年度中に新しい5人乗りSUVも一部のアフリカ市場に投入する。
現在の日産は、モデルチェンジ・サイクルが長く、ニューモデルの投入が遅れていること、アメリカ地域での販売体制の立て直し、中国市場での事業の立て直し、販売台数に対して過剰な生産ライン/工場、などの問題が山積しており、今回公表されたニュー・モデルの投入とグローバルでのビジネスの再建を同時に行なうことが必要であり、まさに時間との戦いとなる。