ルノー・日産・三菱の3社連合が世界ナンバーワンに!?

雑誌に載らない話vol202
2017年7月27日、ルノー、日産、三菱の3社連合の2017年上期(1月〜6月)のグローバル販売台数は526万8079台になると発表した。すでに発表済みのフォルクスワーゲン・グループは515万5600台、トヨタ・グループは512万9000台で、ルノー、日産、三菱がグルーバル販売台数ナンバーワンとなった。

ルノー・日産・三菱アライアンス カルロス・ゴーン 益子修
三菱と日産が資本提携し、早くも半期で世界ナンバーワンの結果が

■ルノー・日産・三菱3社連合が世界販売トップ

2016年5月12日、日産と三菱は電撃的に業務提携に加え、資本提携することを発表した。つまり従来のルノー・日産アライアンスに三菱が加わり、3社で世界3位の自動車メーカーグループとなることは十分予測できたが、その成果は予想を上回るものになった。

世界販売で常にトップ争いを繰り返してきたGMは、ヨーロッパ市場からの撤退に加え、インド市場からの撤退も決め、アメリカ市場と中国市場に集中するための戦略の練り直しを行なっている最中のため、もはやグローバル販売でのトップ争いには加わっていない。

ルノー 日産 三菱自動車 それぞれの主要市場

3社連合による直接的なメリットは、部品の共同購入、世界各地でのローンやリースなど金融事業の共同運用、物流の統合などにより各社の利益率向上に寄与しているが、販売台数の面でも予想以上に3社が好調であることが明らかになった。

ルノーはヨーロッパ市場でクリオ(ルーテシア)を投入し、激戦のBセグメントでトップを奪い、さらにキャプチャー、メガーヌ、さらにルーマニアのダチア・ブランドも好調で経営は一気に好調に転じた。かつては日産におんぶに抱っこされていると揶揄されたが、ここ最近はルノーの経営は驚くほど好調だ。

ルノー・日産・三菱アライアンス 2017年度第1四半期販売実績グラフ

日産はヨーロッパにおけるジューク、アメリカ、ヨーロッパでのローグ/キャッシュカイ(エクストレール)、アメリカでのアルティマが屋台骨を支えるベストセラーで、三菱はアウトランダーPHEV、ミラージュ、パジェロ・スポーツなどがグローバル市場で手堅く、結果的に2017年上半期で早くもグローバル販売台数ナンバーワンとなったのだ。

ルノー・日産・三菱アライアンス 三菱パジェロスポーツ
三菱 パジェロ・スポーツ(日本未導入)

3社連合の2017年上期(1月〜6月)のグローバル販売台数の内訳は日産が289.4万台、ルノーが187.9万台、三菱自が49.4万台。一時は完全に危機に陥った三菱は、3社連合の中でアジア地域での強さ、EV、PHEVの開発で獲得した技術、ノウハウはルノー、日産にとっても大きな価値があることが再認識された。

しかし、ルノー・日産アライアンスに三菱が新たに参加したため、クルマ造りの根幹部分、プラットフォームの共通化、パワートレーンの共通化などの着手はまだこれからで、これらが本格的に機能し始めれば、3社連合の強みはより大きくなる。

■3社連合が電気自動車の主導権を握る

2017年9月15日、ルノー、日産、三菱の3社連合、三菱が加わって3企業となった新アライアンスとして初めて、2022年までの中期経営計画を発表した。アライアンスの会長であるカルロス・ゴーン氏はこれまでルノー、日産で取り組んできたEVイニシアティブ戦略が正しかったことに加え、新たに12車種のEVを投入すること、3社協業で複数の車種に展開可能な専用の共通プラットホームを開発し、EV化を一気に加速させる。

ルノー・日産・三菱アライアンス ルノー・ゾエ
ルノー ゾエ。BセグメントのEVで、航続距離400kmを実現

日産は、新型リーフを投入したが、初代リーフのグローバル販売台数は28万台を記録。当初の見込みよりは台数が少ないとは言え、グローバルで見ればEVとして世界最高記録だ。2016年にアライアンスに加わった三菱は2009年に世界初の量産型EV「i-MiEV」を発売しており、一部はプジョーシトロエン・グループにも供給。

一方、ルノーもBセグメントの量販EVモデルの「ゾエ」を販売しているのを始め、商用車にもEVを投入するなど、ヨーロッパにおけるEVでトップの座を獲得している。3社合計のEVの累計販売台数は50万台を超える。

ルノー・日産・三菱アライアンス 日産リーフ
日産リーフ。初代を大きく超える販売が期待されている

ゴーン氏は、初代リーフの発売時に、ルノーのEVと合わせ2016年度までに世界販売150万台を目指した。が、それは過大すぎたと言えるが、着実にEVのナンバーワン・グループ企業となっていることは間違いない。

ルノー・日産・三菱アライアンス 三菱アウトランダーPHEV
アウトランダーPHEV。今後は日産とも技術を共有

さらに2017年に入って、ドイツの自動車メーカーも電動化を推進する路線に転換し、フランス、イギリス、中国、インドも電気駆動化を後押しする方針を発表するなど、一気に風向きが変わり、2010年〜2011年に電気自動車に取り組んだ3社連合にとってはまたとない追い風が吹き始めている。

■新6ヵ年計画「「アライアンス2022」

2017年9月15日に発表された3社連合の新中期経営計画の内容は次の通りだ。
・4つの共通プラットフォームにより、900万台以上をカバー
・共通パワートレーンの比率を全販売台数の3分の1から4分の3に上昇
・電動化、自動運転、コネクテッド技術の共有により、さらなるシナジーを創出
・電気自動車(EV)用の共通プラットフォーム、共用部品を活用し、100%EVを新たに12車種投入
・自動運転(AD)技術を40車種に搭載
・無人運転車両による配車サービス事業への参画

そして、アライアンスが3社連合となったことで、同日から新たなアライアンスのロゴが制作され、同時にアライアンスカンパニーもオランダのアムステルダムに設立された。つまり、3社連合が本格的に始動を開始したのだ。

ルノー・日産・三菱アライアンス 新ロゴ

アライアンスがルノー・日産の2社から3社連合になったことで、共通化によるシナジー効果を従来の年間5500億円から1.3兆円へと倍増させるという。またゴーン氏は、計画終了時には、3社のグローバル販売台数は年間1400万台以上に、売上高は27兆円に達すると見込むと発表している。

ルノー・日産・三菱アライアンス 日産マイクラ
ルノーの工場で生産され、ヨーロッパで販売される日産マイクラ

もちろん、これからの自動運転システムやコネクテッド技術、モビリティサービスの開発や展開は、企業単独で行なうより3社連合でグローバルをカバーするのが合理的で、各車の開発費の負担も抑えることができる。

プラットフォーム戦略では、これまでルノーと日産により「CMF(コモンモジュール・ファミリー」と名付けられた共有化を行なってきたが、三菱が加わったことで、修正が加えられ、さらにこれとは別にEV、PHEV用の共通プラットフォームの開発が行なわれる。

また、エンジンやトランスミッションの共通化に向けたプラットフォームも新たに開発されるが、当然ながらプラットフォームだけではなくEVやPHEVでの鍵となるバッテリーの共通化も追求されるはずだ。

ルノー・日産・三菱アライアンス 日産自動運転車テスト風景
日産は日本の公道で自動運転車の累積走行距離ナンバーワンを誇り、データを蓄積中

3社連合での自動運転技術の推進もより具体化し、2018年には高速道路での運転支援システム(レベル2)、2020年には市街地での高度運転支援システム(レベル2)、高速道路での自動運転(レベル3)、2022年で初の自動運転車両(レベル4)と、6ヵ年計画の最終年度にあたる2022年には自動運転を実用化すると計画発表した。この自動運転の分野でも、他社を大きくリードする内容となっていることにも注目したい。

コネクテッドカーの分野でも、新たに「アライアンス・コネクテッドビークル・アンド・モビリティサービス(ACMS)」を構築し、2018年頃からユーザー向けのサービスを開始する計画だという。

ルノー・日産・三菱アライアンス カルロス・ゴーン

このように見ると、最高の追い風を受けてルノー、日産、三菱は電気自動車、PHEVの分野で世界的なリーダーになることはもちろん、グローバル販売台数の面でも、フォルクスワーゲン、トヨタを押しのけて、世界ナンバーワンの座を獲得するのは意外と近いと考えて良さそうだ。

ルノー/日産/三菱アライアンス 公式サイト

ページのトップに戻る